日本経済新聞電子版に、クレディスイスが発表した世界各国の純資産10万ドル(約1090万円)の推計人口のグラフが掲載されていました(図表も同紙から)。
中国の人数がアメリカよりも多くなったことを大きく報じていますが、私がそれよりも注目したのは日本のデータです。このデータが正しいとすると、人口の約半分が、純資産10万ドル以上で、残りの半分が10万ドルに到達していないことになります。
資産10万ドルの価値は国によって随分差があります。中国では、海外旅行に出かけたり、高級ブランドを買ったりする「小金持ち」に該当するようですが、日本では純資産1000万円では「年金2000万円問題」で必要とされた金額の半分に過ぎませんから、充分とは言えません。
同じレポートを見ると、純資産100万ドル(1億900万円)以上の日本人は、2019年末で300万人強と推計されています。日本人全体の3%に過ぎないということです。
一方で、純資産が5000万ドル(54億円)を超えるような超富裕層(UHNW=ウルトラハイネットワース)は、世界的に増加傾向です。日本ではその数が減少しているようですが、2019年末で約3000人と推計されています。
資産格差は、ここ1年でこのデータよりも更に大きくなったと推定されますが、その大きな要因は言うまでもなく新型コロナウイルスの感染拡大による市場環境の激変です。
日本は世界で最も成功した社会主義国と揶揄されるような、経済的に比較的平等な社会が続いてきました。しかし、これからは世界的な経済格差拡大の流れに影響されていくことになります。
一部の超富裕層と多くの充分な資産を持たない人たちという構図が、世界に広がり格差に対する不満が治安の悪化や政治の不安定といった資本主義の悪い面を加速していくことが、これからのグローバル経済全体の懸念材料です。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年6月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。