怪しい外国人に気をつけろ

コロナ前まで訪日外国人に日本中が沸き、日本人ですら行かないような場所を外国人は探索し、むしろ彼らから新たなる名所が発見されたりしていました。北海道のニセコは外国人主導による外国人のための街づくりのような状況で公示価格の上昇率で常に上位にランクされてきました。

しかし、皆が皆、善良でたくさんお金を落としてくれる外国人ではありません。コロナ前、外国人が溢れる日本で様々な悪行や日本人が後悔するようなこともありました。それを阻止するのに戦闘能力で示すことはできませんので、概ね情報収集活動とそれを阻止する法律、警察力などで対応します。

Михаил Руденко/iStock

産経らしい記事があります。「先端技術に触手の中国 公安庁、情報網広げ阻止 異例の76人増員」(6月1日付電子版)。公安庁は略称で正式には公安調査庁で法務省の外部局です。何をやっているのか、と言えば「オウム真理教への観察処分の実施、周辺諸国などの諸外国や、国内諸団体・国際テロ組織に対する情報の収集・分析を行う治安機関・情報機関」(ウィキ)とあります。あっていると思います。

私が知る限り、オウムに対する観察は今でもずっと続いていてその活動の柱の一つです。公安が昔の特高警察の流れを受けていることもあり、国内の治安を第一義に考えてきたという歴史を踏まえれば当然なのでしょう。

特高警察という言葉は今の若い人にはほとんど知られていないと思いますが、1910年の大逆事件を反省し、11年にできた「国家組織の根本を危うくする行為を除去するための警察作用」(ウィキ)とされます。特高警察は裁判所と分離していたためやり放題で特に治安維持法とリンクさせて思想犯に強権をふるっていました。

それら特高の実態を生々しく小説にしたものものあり、先日もプロレタリア作家、小林多喜二の「1928年3月15日」を電子版で読みましたが、その多喜二はその作品で捕まり、特高に殺されています。さすが、特高は終戦時に組織としてはなくなり、公安と名前を変えたのですが、多くの特高所属の警察官がそちらに移籍したのが歴史です。

さてその公安は国内治安だけではなく、海外からの不審な動き、特に「周辺国」の動きにも注目しており、具体的には中国、北朝鮮、韓国、台湾、ロシアあたりがその対象であります。

日本においてインテリジェンス組織、つまり諜報を行う組織があるのは内閣調査室、警察、外務省、防衛省、そして法務省公安局です。基本的には内調が情報を集約しており、警察、外務、防衛はそれに同調していますが、公安は割と独自な動きをします。ただ、公安は公的な強権力がなく、調査に留まるという弱点があり、内調が内容次第で警察、外務、防衛に協力を求めるという形になっているはずです。

産経の記事は日本企業や研究所の情報技術の流出を防ぐために力を入れているという趣旨です。私からすれば「今更、何を。遅きに失する」と申し上げたいところですが、それでも強化するならそれは評価するところであります。

時を同じくして国会では「土地取引規制法案」が今国会成立を目指しています。衆議院内閣委員会は通過しており、衆議院本会議、参議院と回されていく予定です。この法案は「自衛隊の基地や原子力発電所など重要インフラの周囲1キロメートル程度を『注視区域』に指定し、不正な土地利用を中止させる内容を含む。外国資本が基地周辺や国境離島などの土地を買収し、電波妨害や盗聴に使うのを防ぐ狙いがある」(日経)となっており、更に重要な土地、「特別注視区域」では土地売買の事前審査制を導入します。

これは北海道の山林、五島列島や壱岐といった「周辺国」が好みそうな不動産が不自然な形で取引されていることをようやく制限できる第一歩となります。特に山林などは最近は取引されることがなくなり、「あの山を買ってくれる人がいる」というだけで金に目がくらみ売却する地主が後を絶たないのです。また、非日本人の名前だと怪しいと思われるからか、ダミー取引や買い手が日本語の会社名だったりするのですが、実態は違ったということがしばしば発生しているのです。

日本は土地の売買規制が緩すぎです。ここカナダは世界第二位の国土を持っていますが、様々な制約があり、購入できる土地は一定の制限があります。そういう点からは例えば山林所有を諦める地主は国なりが引き取る仕組みを作るべきでしょう。北米には「Land Banking」という発想があり、国家や当局が主導で不動産を一旦所有する仕組みがあります。不要な山林はこのようなLand banking方式でどんどん当局が回収し、土地用途を改めて考え、利用していくべきだろうと思います。

日本はかつて、外国人アレルギーがあったのですが、お金を落としてくれる良い人たちというイメージで逆転現象すら起きました。私は外国に住んでいるわけですが、ごく一部の悪さする輩は後を絶たないわけである意味、共存していかねばならない点でもあります。国を閉じればよい、という意見があるのも知っていますが、それはいくら何でも現代社会の流れに逆行してしまいます。とすれば気を緩めない、という気持ちとそれをしっかり監視し、取り締まる術を作り出すことが国際化が進む日本の対応だろうと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年6月4日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。