メーガン妃は「リリベット」に拘った

ヘンリー王子とメーガン妃の間に長女が誕生した。その朗報はロンドンのエリザベス女王の元に届けられた。もちろん、孫夫婦の娘誕生を喜ばない祖母はいないだろう。それでは英王室関係者は皆、お喜びかというとそうとは言えないのだ。英王室が一般社会と異なっているからだ、というわけではない。ヘンリー王子とメーガン妃が長女につけた名前が明らかになった時、エリザベス女王だけではなく、多くの王室関係者は、「どうして、なぜ……」といった困惑だけではなく、「英王室をバカにしている」とメーガン妃の無神経な言動に驚きを禁じ得なくなったからだ。

バッキンガム宮殿(バッキンガム宮殿公式サイトから)

それではなぜ「リリベット・ダイアナ」(Lilibet Diana)という名前が英王室関係者に戸惑いばかりか、憤りさえもたらしたのか。英王室作家アンジェラ・レビン氏の説明によると、「リリベット」はエリザベス女王の愛称だ。それもごく限られた家族間、フィリップ殿下との夫婦間で使われる愛称という。その愛称をヘンリー王子とメーガン妃が長女の名前に付けたのだ。

当方は最初、「ヘンリー王子とメーガン妃には米移住後、英王室を批判してきたこともあって祖母エリザベス女王に対して申し訳ないという思いがあったはずだ。だから、同夫妻からの和解のシグナルではないか」と受け取っていたが、事実はどうやらそんな簡単なストーリーではないようだ。

ヘンリー王子夫妻は事前にエリザベス女王に子供の名前に祖母の名前を使う予定だと連絡していたという。その時、「エリザベス」という名前だろうと、女王を含む多くの王室関係者は考えていた。しかし、実際は「エリザベス」ではなく、「リリベット」だった。

ヘンリー王子の母親「ダイアナ」は当然理解できる。ウイリアム王子の娘(シャーロット王女)のミドルネームにも「ダイアナ」がつけられている。ところで、ヘンリー王子夫妻の場合、それだけではなく、女王自身の愛称を長女のファーストネームにつけたのだ。英王室関係者は、「ヘンリー王子夫妻はリリベットを自分の子供の名前につけることで、女王の愛称すら奪い取ることができることを誇示している」と、批判的に受け取っているほどだ。

冷静に判断すれば、「リリベット」の名前に拘ったのはヘンリー王子ではなく、メーガン妃だったはずだ。ヘンリー王子は「リリベット」が祖母の愛称であり、祖父フィリップ殿下が好んで使っていたプライベートなニックネームという事を知っていたはずだ。だから、自分の娘に祖母の愛称をつけるといった発想は生まれてこないはずだ。その愛称に拘ったのはメーガン妃だったはずだ。なぜか。答えは一つ、ロイヤルファミリーとの繋がりを失わないためだ。また、ヘンリー王子と離婚した場合、メーガン妃に残るものは娘の「リリベット」という名前が英王室との繋がりを保証することになるからだ。

少し深読みをする。エリザベス女王は英王室の代表であり、シンボルだ。その女王の愛称を付けた娘を「リリちゃん」と呼ぶ時、メーガン妃は英王室が自分のもとに跪くのを感じ、一種のカタルシスを覚えるのではないか。

メーガン妃はヘンリー王子と知り合った時、「彼が英国の王子だったと知らなかった」とインタビューの中で答えているが、嘘だ。ヘンリー王子であることを知っていたので近づいたのだ。その際、ヘンリー王子の亡き母親ダイアナ元妃が好きだった香水、服の色などを研究したはずだ。そして見事、ヘンリー王子のハートを掴むことができた、というのが事実だろう。キャサリン妃の場合、ウイリアム王子と同じ学校に通い、ウイリアム王子と結婚したいという願いが最初からあったことは良く知られている。キャサリン妃の両親が娘を何とかして英王室に入れようと腐心していたからだ。だから、多くの資金を投資しても娘をウイリアム王子が通う学校に通わせたのだ。

ここまでくると、別の憶測も紹介せざるを得ない。メーガン妃は本当に子供を自分で出産したのか、それとも代理母に依頼したのではないか、といった情報が流れているのだ。39歳のメーガン妃は、「自分はヨガをしてきたので、体力的に出産は問題ないわ」と説明しているが、ある人は、「妊娠中、メーガン妃のお腹は6カ月の時のほうが7カ月の時より大きかった」と証言している。もっと驚くのは、王室関係者が子供を出産した場合、「……toヘンリー王子・メーガン妃」というべきだが、実際は「……forヘンリー王子、メーガン妃」と宣布書に記述されていたというのだ。すなわち、「ヘンリー王子夫妻のために(誰かが代わりに出産した)娘」という意味にも解釈できるというのだ。上記のニュースはメーガン妃嫌いのフェイク情報の可能性があるが、完全には排除できない迫力があることも事実だ。

「リリベット」という女王の愛称を使用する一方、メーガン妃の母親系の名前は一切使われていない。メーガン妃は実の母親といい関係でないからではないかという。自分の子供の名前に女王の愛称を使い、ロイヤルファミリーとしての市場価格を高めることに腐心している。メーガン妃は自身の母親の名前を使えば、その価値が落ちることを誰よりもよく知っているはずだ。

ヘンリー王子夫妻が娘に「リリベット」というエリザベス女王の愛称を付けたというニュースが流れると、英国の国民には感動というより、批判が多かった。ヘンリー王子夫妻はこれでロンドンに戻れなくなったという声さえ聞かれる。興味深い点は、メーガン妃の言動に対する受け取り方で英国と米国では異なっていることだ。心の世界の全てを公開することを好む米国文化と、それらをオブラートで包みながら、ユーモアや時には皮肉を交えながら吐露する英国民のメンタリテイとの間には国民性の相違が顕著だ。米国でメーガン妃支持派が多い一方、英国ではメーガン妃批判が強いのは当然かもしれない。

女優業では米TV番組「スーツ」(Suits)でレイチェル・ゼイン役を演じた以外に、これといった作品に出演していないメーガン妃は今、自身が脚色した英王室ドラマでサセックス公爵夫人役を懸命に演じているのではないか。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年6月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。