経済正常化と物価高

日本におけるコロナ感染者が目に見えて減ってきています。テレビニュースは統計データから「過去最高」を一生懸命探し出し、「こんなに悪くなっている」と日本の状況を叩いて叩いて叩きまくってきたのですが、ネタがなくなったと思ったら接種のエラー(原液、二度注射、カラを注射など)を報じ、とにかく荒探しに余念がありません。

あるテレビ番組で「この手術は90%の成功率です」というのと「この手術で10%の人は失敗します」というのではどれぐらい心理的違いがあるか、というのを報じていました。(この番組は私でも驚く右寄り思想の関西の生放送人気放送です)日本全般の報道はまさにこの例がぴったりくるわけで多くの報道局は「10%失敗説」を強調するわけです。

ただ、この10日ぐらいは世論から五輪開催バトルが消えつつあり、マスコミもその議論にあまり触れなくなりました。転機は朝日の社説あたりからでしょうか?朝日が五輪開催を真っ向から疑問視した社説は見方によれば「ということは五輪は開催されるのだ」という考え方と「朝日が支援する高校野球とはどう違うのだ」に対する論理的説明の失敗あたりでダメ押ししたように思えます。

読売の調査では五輪開催に賛成が50%、反対が48%となり、日増しにこの数字は好転していくはずです。コロナからの回復は政治の世界にも薄日が差しそうで、自民党では解散総選挙の行方が混とんとしています。10月の期間満了まで待つ、更には技術的に国会閉会日を10月ぎりぎりまで引き延ばすことで選挙を11月下旬まで延長させるという案すら出つつあります。コロナからの回復が日本を180度転換させるわけです。

Olivier Le Moal/iStock

それは話が出来過ぎているだろう、とおっしゃると思います。しかし、最悪の地獄を味わっている人達にとってこれ以上の下はないと考えれば回復すると考えるしかないのです。そしてもう一つ忘れてはならない日本人のメンタルの特徴、マインドの急変とお祭りムードへの変化であります。

いわゆる心理のボラティリティが非常に大きいのが日本人の特徴で、よいときには120%以上の力が出るのですが、悪いときにはドツボにはまって出られなくなるほどの痛々しさがあります。理由は基本的に日本人はネガティブシンキングで「10%の失敗確率、やばい!」と思い、周りも「そうよねぇ、やばいんじゃない」と同意し、ドツボに背中を押し込まれる傾向があるのです。

では日本人のマインドが180%転換するきっかけは何処にあるか、と言えば五輪での大量のメダル獲得などの活躍ぶりだと思っています。五輪は通常、開催国有利とされますが、今回は更にコロナシード権があるようなもので日本中が結局は五輪で沸くのだろうとみています。

ところでブルームバーグがアメリカ政府が配布した3度目の給付金の使い方が変わってきたと報じています。1度目と2度目は家に留まり、株式などに投じられましたが今回の給付金は実体経済に投じられていると報じています。アメリカでのインフレ懸念が今年の初めぐらいから話題に上がり始め、3月から4月にかけ各方面の素材、商品相場が暴騰しました。

ただ、FRBはこれは一時的なインフレで次第に収まるとしています。私も方向性としては正しいと思っています。コロナ禍ではモノに対する需要が爆発したのですが、正常化に向かい、飲食、旅行といったサービス産業への出費のシフトが起こるため、例えば木材のひっ迫はさほど続かないと私は何度か申し上げたと思います。事実、北米の木材先物相場は大きく下がってきています。

同じことは日本でも間違いなく起きるはずで今年の秋から暮れにかけて爆発的なサービス消費の伸びが期待できるとみています。北米ではその爆発需要が始まりかけており、本日発表のアメリカのCPIの内訳で航空券は7%上昇しています。その陰には企業側が絞り込んでいたスタッフの再雇用などが追い付かないことも大きく影響しています。日本はそれを教訓にして早めの対策を取ったところが勝ち組になるはずです。

また旅行消費は国内から再開するはずですが、やはり海外旅行の回復が最もインパクトがあるところかと思います。ハワイなど日本人に人気あるスポットを中心に価格は目を見張るほど高騰するはずです。年末年始は一人100万円などということもあり得るかもしれません。それでも需要は切れないと思います。言い換えれば1年半から2年分の「消費心理」インパクトが怒涛のように押し寄せるということです。(あくまでも「心理」なのでブームの沈静化も早いとみています。)

今日現在の日本国内のムードはもちろん、そこまで明るくはないでしょう。私はカナダにいて明らかな雰囲気の変化を感じ取っています。それはこの3-4週間でワクチン接種が一気に進んだことで人々の表情が明るくなり、電車やバスが込み合い、街に人や車が溢れるようになりました。

私は今年後半の日本経済の大きな回復を期待してよいと思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年6月11日の記事より転載させていただきました。