コロナ蔓延地域で効果を示すも日陰者のイベルメクチン

インドではイベルメクチンの話題が沸騰中だ。インド弁護士会が5月25日、WHOのインド出身科学者ソミヤ・スワナミサン博士を訴えたのだ。博士は5月10日に「WHOは臨床試験以外でのCOVID-19に対するイベルメクチンの使用を推奨していない」とツイートしていた。

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弁護士会の法的通知には、博士は「自らの目的を果たすために、偽情報を広めてインドの人々を誤った方向に導いている」、「イベルメクチンが COVID-19 を予防し治療することを示すデータを提示するFLCCCアライアンスとBIRDの研究と臨床試験を無視した」などと書かれている。

FLCCC(Front Line COVID-19 Critical Care Alliance)は、COVID-19が流行し始めた20年3月に組織された医師と学者ら19名のグループ。イベルメクチンを使用した早期在宅外来治療プロトコル(臨床試験計画)をCOVID-19の世界的なパンデミックに対する潜在的なソリューションにしている。

BIRD(British Ivermectin Recommendation Development)は、英国を中心とする20名の医者や研究者らがFLCCCに触発され本年1月に立ち上げた。リーダー格のテス・ローリー博士は「死亡率と罹患率を低下させるイベルメクチンの有効性に衝撃を受け、これを英国保健局に知らしめることが自分の義務と考えた」と述べる。

インドでは6月10日一日の新規感染者が9万4千人、死者も6千人に上り、10日までの累計感染者は2920万人で死者は36万人となった。人口100万余のゴア州は5月9日、成人向COVID-19予防治療薬にイベルメクチンを承認したが、スミワナサンのツイートはその翌日だった(All India紙)。

前掲記事には、ゴア州のレイン保健相がイベルメクチンの承認は「英・伊・西・日の専門家委員会」が「COVID-19患者の死亡率、回復までの時間、ウイルスクリアランスの統計的に有意な減少」を見出したからと述べたとある。が、日本の専門家委員会の話は寡聞にして存じない。

同記事には「『American Journal of Therapeutics(AJT)』の 5月/6月号に掲載された入手可能なデータのレビューでは『イベルメクチン』がパンデミックの終息に役立つと主張している」と書かれている。査読付き医学ジャーナル「AJT」に当たるとFLCCCの責任者コリー博士の論文があった。

査読付き論文

論文はAI邦訳で2万1千字を超えるので「概要」部を要約すると次のようだ。

  • 最近、COVID-19に対して経口抗寄生虫剤イベルメクチンが多くの抗ウイルスおよび抗炎症メカニズムを示す証拠が明らかになり、試験結果は大きなメリットを報告している。イベルメクチンの定期的な使用により、感染が大幅に減少することが数多くの予防試験によって示されている。
  • 18件のRCT(ランダム化比較試験)に基づくメタ分析では、死亡率、臨床的回復までの時間、ウイルスクリアランスまでの時間が大幅に減少し、統計的に有意な減少が見られる。さらに、多数の予防管理試験の結果から、イベルメクチンを定期的に使用することで COVID-19 に感染するリスクが大幅に減少したことが報告されている。
  • 罹患率と死亡率の人口全体の急速な減少につながるイベルメクチン配布キャンペーンの多くの例は、COVID-19 のすべての段階で有効な経口剤が特定されたことを示している。

南米のペルー、ブラジル、パラグアイの保健当局が昨年5月から一部実施しているイベルメクチンの配布キャンペーンの記述がある。ペルーは20年5月8日、イベルメクチンをCOVID向けに承認した。

ブラジルでは昨年6月~8月、南部のイタジャイ(人口223千人)とシャペコ(224千人)、北部のマカパ(503千人)とアナニンデウア(504千人)、北東部のナタール(890千人)とジョアン・ペソア(617千人)という規模の似た近隣都市で比較試験を実施した。

片方にだけイベルメクチンを配布しての新規感染者の減少率比較だ。その結果、

南部▲53%vs▲20%
北部▲70%vs▲30%
北東部▲82%vs▲43%

と、都市の減少率に有意な差が出たのだ。同様に別の地域で死亡率の比較もしており、こちらは感染率以上の有意差が生じている。

予防・外来・入院でのRCTなどを行っている国を地域別に見ると、

  • 北アフリカ:エジプト(予540・入400)
  • ナイジェリア(予62)
  • 中近東:イラク(入227)
  • インド周辺:インド(予186、外115、入1134)
  • バングラディッシュ(予118、外641、入320)
  • パキスタン(入50)
  • 米州:ドミニカ(外3099)
  • アルゼンチン(予1658、外来167)
  • ブラジル(入1408)
  • メキシコ(外28)
  • 米国(予52、入280)
  • 欧州:スペイン(外24)
  • フランス(予69)

(※数字は被験者数)

これだけ多くの国で臨床試験や配布キャンペーンが行われている。一部にはヒドロキシクロロキンなどとの併用例も含まれるが、RCTなどの臨床研究で有意な結果が蓄積されていることが、査読付き論文に書かれている。

WHOなどの評価

だが、残念なのは、WHO、FDA、NIHなどのイベルメクチンに対する評価だ。WHOは冒頭に記した通り、治験にのみ使うことを推奨し、その理由を「利用可能な試験データのサイズが小さく、確実性が低い」とし、予防用途には「検討していない」としていてそっけない。

FDA(米食品医薬品局)も、イベルメクチンは「動物の寄生虫を治療または予防するために米国でよく使用され」、FDA は「ヒトの COVID-19 の治療または予防に使用することを承認してない」とする。

さらに「この薬を大量に服用することは危険であり、深刻な害を引き起こす可能性がある」とし、「動物用の薬を自分自身に使用しないでください。動物用のイベルメクチン製剤は、ヒト用に承認されているものとは大きく異なります」と、馬並みに使うことを戒める。

NIH(米国立衛生研究所)も、「COVID-19 の治療のためのイベルメクチンの使用を推奨または反対するにはデータが不十分であり、COVID-19 の治療におけるイベルメクチンの役割について、十分に機能し、適切に設計され、適切に実施された臨床試験の結果が必要」としている。

が、インドやバングラディッシュ、中南米などの蔓延地域では、事実上、イベルメクチンがCOVID治療薬として使われている。またこれらの地域の人々が欧米人と同様に、COVIDが重症化し易いとされるネアンデルタール人の遺伝子を持つらしいことは極めて興味深い。

FLCCCやBIRDは、そのサイトやAJT論文を読む限り、使命感に燃えて取り組んでいるように思える。筆者は陰謀論者ではないが、COVID入院者にFDAが唯一承認しているレムデシビルの治療が 3千ドルで、イベルメクチンのそれは1回3~12ドル(コリー博士)と聞けば、誰もムムッと思うだろう。

米共和党上院のロン・ジョンソン議員も、彼が依頼したコリー博士によるイベルメクチンに関する講演のYouTube画像が、検閲で削除されるまで800万回視聴され、口コミで拡散したと述べる。イベルメクチンが目障りな誰かがいるということか。

大村博士と共同で80年代にイベルメクチンを開発し、96 年まで特許を持っていたメルクも今年2月、「入手可能なデータは、FDA が承認した以上のイベルメクチンの有効性と安全性を支持していない」(Epoch Times)とし、後発品があるからかCOVIDへの適用に積極性を示していない。*追記・・・ジョンソンがイベルメクチンなどに触れたyoutube画像が11日午後4時(現地時間)、一週間配信停止になった。

イベルメクチンは WHO の必須医薬品リストに掲載されており、30年以上にわたって37億回以上投与された実績がある。BIRDのローリー博士によれば。その間に報告された有害事象は4,600件、死亡は16件だけという(前掲Epoch Times)。

こうして見て来ると、イベルメクチンはまさに日陰者の「貧者の一灯」ではないか。筆者はいつの日かこの薬が近所の薬局で買えるようになると信じたい。イベルメクチンよGood Luck!