選択的夫婦別姓を実現するための一私案

夫婦同姓しか認めていない現在の法律を「合憲」とした最高裁判例に対し、各方面から多くの批判がなされている。

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しかし、以下に書いたように、(間接的であれ)新たな立法や法改正を裁判所が国会に命じるのは、三権分立や民主主義という憲法の大原則に反すると私は考える。

司法権は決してオールマイティーじゃない。

夫婦別姓「合憲」判決、最高裁は時代遅れなのか?

今回の夫婦別姓問題を考えている時、犯罪被害救済制度が創設された一つのきっかけとなった事実が頭に浮かんだ。

息子を通り魔殺人で失った故市瀬朝一氏が「犯罪被害者補償制度を促進する会」を立ち上げ、大変な苦労をして日本中の犯罪被害者の遺族を訪ね歩いたという事実だ。

市瀬氏の行動が直接現在の犯罪被害救済制度に結びついた訳ではないが、三菱重工ビル爆破事件が多数の被害者を出したことなどがきっかけとなり「犯罪被害者等給付金支給法」(改正前)が成立した。

市瀬氏をモデルにした木下恵介監督作品「衝動殺人 息子よ!」という映画も当時の社会に大きなインパクトを与え、犯罪被害救済制度はその後も拡充されていった。

選択的夫婦別姓制度はあくまで「選択的」なもので、同姓を希望する人たち何ら迷惑をかけるものではない。

平成8年の法制審議会民法部会も選択的夫婦別姓案を承認している。

ネット環境が整備された現代では、かつての市瀬氏のような苦労をしなくとも多くの意見を集約して発表することができる。

「モラルハラスメント」という言葉も、一人の被害者が作った「モラルハラスメント被害者同盟」というサイトがきっかけで今日のように広く認知されるようになった。

ネットで選択的夫婦別姓制度を求める運動を活性化させて世論を喚起し、国会での法改正を促してはいかがだろうか?

今秋には衆議院議員選挙が行われると予想されているし、都議会議員選挙も始まった。
各候補者には、是非とも「選択的夫婦別姓に賛成か反対か」を表明していただきたい。

メディアの方々も、各候補に選択的夫婦別姓への賛否を訊ねていただきたい。

各候補の考えが出そろえば、有権者にとって大きな判断材料になり投票率もグンとアップするだろう。

このようなプロセスが、ポピュリズムならぬ本来の民主主義を取り戻すための第一歩になると確信している。


編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2021年6月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。