少子化対策と女性活用はカードの表裏だ --- 大原 誠一

少子化の原因

少子化の原因は様々言われているが、「女性が安心して子供を産むことができない」状況があることには誰も異存がないと思われる。では何故、女性が安心して子供を産むことができないか?最大の問題は「出産と引き換えに仕事で成功することを諦める必要がある」という点ではないだろうか?

今はどの企業でも産休が取れる。結婚や出産で退職を迫られるような企業も少なくなってきただろう。しかし、結婚、出産を選択した女性の多くは産休とそれに続く育児休暇、そして時短勤務で出世への道を断たれるのが現状なのだ。

理由としては、出産した女性は当人のリソースの多くを子育てに費やす必要があり、たとえ日常的な業務に支障がないとしても、「いさという時に仕事に特化できない」、あるいは「残業ができないために十分な業務量をこなすことが難しい」とみなされているからではないだろうか?いずれにせよ、子育て中の女性が業務を担当する上でハンディキャップを背負うことは事実であろう。

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では、女性が出産したら二度と出世の道は開けないのだろうか?これには企業の意識を変える必要があるが、「子育てを終えた女性」は通常の労働基準法の範囲であれば十分に働ける。そこを評価し、活用に繋げることは十分可能だ。(ここで言う「子育てを終えた」は子供の成人、または就職と考えている)

企業は利益で動く

これが私の論理のポイントになる。企業が「子育てを終えた女性」を活用すれば何らかのインセンティブを得る仕組みを作れば良いのだ。

女性の人生設計を変える

これまでの女性の人生は「就職➡結婚➡出産&育児➡専業主婦またはパート」だった。これを「就職➡結婚➡出産&育児➡正規職への再就職(または復職)」とすることが「少子化対策&貧困対策&女性活用策」となる。このうち貧困対策は本稿の主目的ではないけれど、シングルマザーの貧困問題の解決策の後半部分の対策となる。(前半は、まだ子育てを終えていない段階。これについては別稿を予定している)

「子育てを終えた女性」は、その後の妊娠、出産をコントロールすることでこれまで負っていたハンディキャップから解放される。女性が子育てを終えた後で活躍できることがわかれば「仕事を失いたくない」と考える女性が現在の職場にしがみつく理由がなくなる。女性にとっては早く結婚し、早く出産すればそれだけ早く仕事に復帰でき、仕事で成功する可能性が高まるようになる。これが本提案の骨子だ。

そうすることで、女性の出産年齢が早まる。これは少子化対策にもなるし、女性にとっても「高年齢出産を避ける」という健康面でのメリットがある。また、女性の出産意欲が高くなれば男性にとっては「結婚がしやすい」状況が生まれる。また、日本が「ジェンダーギャップが大きい」と評価される最大の要因は「女性管理職が少ないこと」なので、これを改善し、「女性活躍型社会」を目指す政府にとってもメリットが出てくる。女性管理職が増えることは企業イメージの改善にも利用できる。この政策は国、企業、男性、女性に対してWin- Win-Win-Winの関係をもたらすことができる。

政府の役割

では、企業に対して「子育て終了後の女性を雇用する」インセンティブをどのようにして用意すれば良いのか?

企業が「子供を持つ女性を正規職として雇用していること」をポイント化し、政府がそのポイントに応じて法人税を減免するか、あるいは補助金を出せば良い。また、逆に一定のポイントに達していない企業については増税になるようにパラメータを工夫すれば、増減税ニュートラルで政策を実施できる。日本の官僚は優秀なので、パラメータの設定については任せたいと思う。

当然ながら、この方式は公平ではない。「男性ばかりの職種」に対しては、増税のデメリットしかない。しかし、筆者はそれで良いと考えている。この政策が実現すれば、そうした職種でも女性にできる仕事を工夫するようになるだろうし、女性が正規職に就き、管理職として登用されるようになれば、全ての企業に間接的にせよ、恩恵がもたらされることになる。

最後に

性別に関わらず、「意義のある仕事をしたい、仕事で認められたい」という気持ちは社会人にとって大切なアイデンティティになる。女性が結婚や出産に踏み切れない最大の理由は「出産したら、二度と仕事で活躍できない」という恐れがあるからだ。それを「早く出産すれば、それだけ早く仕事に復帰でき、ハンディキャップ無しに活躍できる」ようにすれば女性の志向は逆転する。その意味で「少子化対策と女性活用はカードの表裏である」のだ。この政策にメリットがあることを、声を大にして言いたい。

日本社会には国民皆保険制度など、国際的に見ても高く評価できる点がいくつもある。しかし、現代日本は制度疲労により少子化問題、貧困問題、男女間の給与格差問題など多数の問題を引き起こしている。こうした問題を解決するのは本来、政治家の役割ではあるけれど、政治家は「政府に関わった時点で官僚の常識を吹き込まれ、新しい発想が出しにくい」ことが問題だ。したがって、私達市井の「官僚から見れば非常識」な一般人が自由な発想で提言を挙げることには価値があると思われる。本稿が編集部に採用され、掲載された場合、第二弾、第三弾の提案を出したいと思う。それらの私案が、読者が日本の現状について考えるきっかけになれば、筆者としてこれ以上の喜びはない。

大原 誠一
1984年よりA社にてゲーム開発担当ディレクター。某シリーズを担当し、当時の同ジャンルのベストセラーを生み出す。 1999年より移籍、情報システム部門に所属し、2003年より管理職を拝命。社内システムの管理、情報セキュリティ、ISO20000監査員などを担当。