シンガポール政府のコロナ対策タスクフォースの首脳(財務相・通商産業相・保健相)が、感染症対策を転換すると発表した。
シンガポールはこれまで厳格な「ゼロコロナ」路線をとり、入国者や濃厚接触者の隔離を徹底してきたが、それをやめ、コロナと共存するニューノーマルの道を選ぶのだ。彼らはこう書く。
悪いニュースは、コロナは消えないかもしれないということだ。よいニュースは、それと共存できるということだ。これはコロナが風土病になる確率が非常に高いことを意味する。
それは根絶できないが、パンデミックをインフルエンザ、手足口病、水痘などの脅威の少ないものに変え、日常生活を続けることができる。
政府の次のマイルストーンは、人口の少なくとも3分の2が、建国記念日[8月9日]前後に2回の接種で完全に予防接種を受けることである。
8月を目途に、シンガポール政府は次の5項目の方針を実施する予定だ。
- ワクチン接種で症状はほとんど軽症になるため、感染者は自宅で療養する。
- 接触者の追跡や感染者の隔離はやめる。人々は定期的に自分で簡単なテストをし、陽性の場合はPCR検査で確認して自身を隔離する。
- 感染者数を毎日モニターするのをやめる。インフルと同じく定点観測とし、重症者や人工呼吸の必要な患者だけを監視する。
- 行動規制を段階的に緩和し、大きなイベントや集会も再開できる。
- 旅行は再開できる。ワクチン接種を受けた人は(風土病レベルになった国には)自己テストで出国でき、帰国したときも検疫が免除される。
特に毎日の全数モニタリングをやめることは重要である。新規感染者数などという無意味な統計は、インフルでは出していない。大事なのは患者の重症化を防ぐことで、それには週1回の定点観測で十分である。毎日感染者数を発表するのは、マスコミにネタを提供して不安をあおる以外の効果はない。
シンガポールは人口570万人の小国なので、日本と一緒にはできないが、図のように超過死亡率(過去5年平均との比較)でみると、日本とほとんど変わらない。彼らの表現でいえば、日本は昨年から「風土病レベル」だったので、本来は日本政府が最初に方針転換をすべきだった。オリンピックをきっかけに、方針転換してはどうだろうか。