「ヘビーユーザーのアマゾン離れ」が起こっているワケ

黒坂 岳央

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

近年、SNSを中心に「ネット通販はアマゾンではなく、ヨドバシや楽天に切り替えた」という声が見られるようになったと感じる。この主張の裏付けとして具体的な統計データではなく、あくまで筆者の肌感覚レベルの話だ。とはいえ、ネット通販をアマゾンで利用するヘビーユーザーほど、その傾向が事実として存在していると感じる。

Daria Nipot/iStock

誤解なきよう申し上げたいのだが、アマゾン日本法人の売上は相変わらず好調である。アマゾン日本事業の売上高推移(ドルベース)で確認すると、次のとおりだ。

2016年 10,797(万ドル)
2017年 11,907(万ドル)
2018年 13,829(万ドル)
2019年 16,002(万ドル)
2020年 20,461(万ドル)
(データ引用元:米Amazonによる年次報告書の日本事業)

そのため、本稿の現象はあくまで「日本ユーザー全員がアマゾン離れを起こしている」などといいたいわけではない。あくまで従来のアマゾンヘビーユーザー間で、静かに起こりつつある現象である点を踏まえて展開したい。

アマゾンで「普通の買い物」は難しくなった

現行のアマゾンでは、「普通の買い物」をすることが難しくなりつつある。普通の買い物というのは、家電製品などにおける「正規品」を見つけ、カートに入れて決済をする行為がやりづらいということだ。

その理由は中国系出品者の激安品による、検索汚染が起きているためだ。先日も「正規販売店」の出店舗名を付けて、プレイステーション4のコントローラーを販売していたことで話題になっていた。特定商取引法を見ると販売元は中国であった。明らかに消費者のミスリードを狙っている。

「アマゾンでイヤホンを買おう」と思っても、プライムマークのついた中国業者ばかりが並び、「商品内容、メーカー名、販売定価、取扱店、送料の有無、納期」を1つずつチェックしなければ、粗悪品を掴まされる不安で買うことができない。Twitterでは次のような「アマゾンで買い物をする上で検索汚染を回避するテクニック」がバズる状況となっている。

もはや、アマゾンで普通の買い物をするのは難しくなってしまった。一部のヘビーユーザーがヨドバシや楽天に流れるのは、自然な動きと言えるだろう。

購入後に不審な連絡が来る

またアマゾンで買い物をすると、出品者から不審な連絡を受けることがある。以下のようなツイートを見て頂きたい。

購入後、低評価レビューを付けた後に「レビューを削除すると、2倍の価格で返金する」という申し出があったというのだ。

筆者もアマゾンで商品購入をした後に、似たような経験がある。ある時、突発的にWebカメラの必要性が生まれた。「この時しか使わないし、安価のどれでもいいや」とロクに中身をチェックせず、適当に購入したものがたまたま中国系商品だった(後から気づいた)。

購入して使用を終えた後に、その販売業者から次々と怪しげなオファーを受け取ったのだ。「良い評価を付けてくれたらアマゾンギフト券をプレゼントします」に留まらない。「この度、新商品を使ってくれるモニター募集をしています。高評価付けてくれたら、一度購入したその商品代金を全額返金します。商品はそのまま無料でお使いいただき、ネットオークションなどで販売処分しても構いません」という。筆者は、そのようなオファーには一切乗ることはしなかった。だが、その販売業者からは新しい商品を出すたびに「高評価レビューを付けたら謝礼を出す」と連絡が来るようになった(一度もオファーは受けていない)。期間をおいてその商品を見に行くと、不自然なほど高評価レビューが並んでいるのを目の当たりにした。もはや、購入者レビューは信用できないシロモノになりつつある。

ネット通販で買い物をするメリットが失われている

ネット通販で買い物をする最大のメリットは、実店舗に赴く時間や手間を省けることだけではないはずだ。通販サイトや販売メーカー間を簡単に横断検索ができ、レビューを参考にするなど「買い物が容易」という点も確実にメリットとして存在する。だが、この「容易」というメリットが、今失われつつある。

筆者は家電製品のネット通販はヨドバシを利用するようにしている。だが、動画配信サービスのプライムビデオやKindleなどはアマゾンにお世話になっているので、本稿では文句ばかりつけているようで心苦しいところではある。本音としては「検索汚染を解決して、粗悪品リスクをなくして買いやすくしてほしい」という願望がある。

テクノロジーの素人の浅知恵だが、願わくば検索窓に「正規販売店のみを抽出する」というフィルタリングがあるだけでも、買いやすくなると感じる。だが、天下のアマゾンが実装できていないということは、言うは易く行うは難しなのだろう。今後、アマゾンが検索汚染にどのように対応していくのか引き続き注目したい。

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