都議選、予想外だったのはなぜ?

秋の衆議院選の前哨戦とも言われた都議会議員選挙。下馬評では都民ファが大きく議席を落とし、自公で過半数を取れるのではないか、と予想されていました。私も選挙戦序盤に日経の世論調査をベースに都民ファは最大20議席程度と予想していました。大外れです。

東京都議会議員選挙結果 NHKより

結果を見れば自民は都民ファをわずか2議席上回る33、自民と公民を足しても56議席で過半数の64議席には足りません。では自公に連携できる第三党で差の8議席を埋められるか、というとありません。共産が19議席、立民が15議席と続きますが、自公はまさか彼らとは連立はできません。ところがそれ以外の政党で当選者を見ると維新1、東京生活者ネットワーク1、その他4で物理的に自公がリードする形になりません。

一方、都民ファとしても共産、立民と連立を組めば数字上は過半数になりますが、まさかそれはないでしょう。とすれば決められない都政がここに誕生することになります。唯一の可能性は自公が都民ファと協力し合う関係になるか、ですが、二階氏という接着剤が仮に噂される今年の秋の自民党内人事刷新で変わるとすれば全く読めなくなります。

なぜ、こんな結果になったのでしょうか?

あくまでも自己分析ですが、社会の二分化が深く進んだことかと感じています。大阪の維新が地域政党として成功を収めたのはなぜか、といえば橋下氏が大阪の特殊な問題に深くメスを入れ、府民を地域問題に目覚めさせ、コミュニティイシューとして政治の主題化に成功した点は否めないでしょう。

その点、東京は天下のおひざ元、大言壮語で世界を語ることで差別化を図ってきたのはご承知のとおりです。ところが、小池都知事に代わってから国際都市という目標もあったのですが、それ以上に地域密着型に変わり、世界の東京という観点は二の次、三の次になったのかもしれません。

国際都市東京、アジア経済の中心になるといった大きな話題ではなく、高齢者の医療問題を中心に安全安心が主題になります。豊洲問題を含め、小池都知事は目線をローカル化させたことで都民ファの勢力が思った以上に衰えなかった、としか私には考え付きません。特に今回は都民ファが五輪無観客を主張しました。他党はその点は不明瞭でした。つまり、何処に焦点を合わせるか、という点において大阪の維新と戦略的には似たものを取ってきたと言えないでしょうか?

東京がそこまで内向き志向だったとすればコロナの1年半の影響はそれにさらに拍車をかけたことになります。給付金の支給の遅れやコロナ対策で都政へ様々な不満の声がマスコミでうざいほど流れたのですが、それ以上に声なき声とは安心安全だったということでしょうか?

自民党にとっては大いに悩まねばなならない事態になったと言えます。一部メディアは秋の選挙は大丈夫か、という見方も出ています。一点、今回の選挙で着目しているのは立民が7議席から15議席まで伸ばした点です。これは無党派の方々の一部がアンチ自民として明白な姿勢を見せた可能性は否定できません。

こうなると秋の選挙は割れることも視野に入れる必要があります。それはコロナ対策や五輪の結果に関わらず、世の中が二分化する前兆なのでしょうか?世界を見れば拮抗する二大勢力はあります。それが景気情勢などにより時代の流れを反映してきました。日本の場合は海外と違い、労働者と使用側の明白な区別、賃金差は海外ほどではなく二大政党は根付かないとされてきました。

ところがこのところ、明らかに生活に困窮する人たちが増えていることも事実です。また女性は将来の安定を一義とする傾向が強いため、日本がかつての成長とバラ色の未来を期待できなくなった以上、イケイケどんどん的な右派思想からより左派にシフトしやすい下地はあります。世界でも都市部はリベラルが強いのが当たり前になりつつあり、日本の自民体制はある意味、欧米の流れからすれば異質感はあるのです。

今回の都議選でもう一つ注目しなくてはいけないのは小池氏の出方です。彼女にとってはオプションが一気に増え、有利な展開となりそうです。知事投げだし説は後退し、タイミングを見計らいながらじっくり戦略を考えることが可能になりました。

既に五輪中止論は消えたわけで都民ファの主張する無観客に誘導し、小池氏の切望する五輪を安全安心な大会として世界の歴史に残る形で成功裏に納めれば彼女のポイントはどう転んでもプラスにしかなりません。そこで初めて出てくるのです。「東京五輪を成功に導いた小池百合子」と。何と言っても女帝ですので物語はまだまだ続くのでしょう。恐れ入りました。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年7月5日の記事より転載させていただきました。