コロナ対策は貧困対策でもある。データで見たらわかる。

永江 一石

データから見るコロナ被害の大きな都道府県の特徴

イギリスも「コロナは風邪になったので元の生活に戻す」宣言をしましたし、日本も感染者は増加しているのにもかかわらず重症者、死者も減り続けるフェーズにはいりました。あいもかわらず煽っているのはテレビと一部の医療関係者だけです。

Mercedes Rancaño Otero/Istock

1点、危惧があるとすると・・・中高年のワクチン接種率の止まり方です。特に被害の大きかった大阪と北海道が全くだめで、北海道はトップの岐阜の6割です。大阪は集計が遅れているという話もありますが・・・沖縄も下位グループ。ここにきて東京も下位に落ちてきました。

日本全体ではこの程度ですので、高齢者の接種率はいっても70%代ではないでしょうか。ただし↑のように県によって大きな差が出ました。自治体の対応ということもありますが、そもそも「自治体の意識=県民の意識」でもありますよね。

コロナの被害を県別に見てみます。

右に行くほど感染率が高く上に行くほど死亡率が高くなります。
死亡率=人口100万あたりの死者数
感染率=人口100万あたりの感染者数

●沖縄は感染率が突出しているが人口あたりの死者は全国平均
●東京の感染率は全国平均より少し高いが人口あたりの死者は全国平均
●大阪は感染率は全国3位だが致死率が全国平均の2.6倍
●北海道は感染率は全国平均だが致死率は全国平均の2.3倍
●兵庫は感染率は全国平均だが致死率は全国平均の2倍

つまり、コロナ対策は全国が均等ではなく
大阪はもっとも厳しく、感染者数を減らし重症化を防ぐ
北海道と兵庫はとにかく重症化を防ぐ
沖縄は感染拡大を止める

という、本来は地域にあった対策をとらないといけないのです。しかしなぜこんなに地域ごとの差が出るのか。日本の医療のレベルはそんなに違うわけもないし・・・ということで、こうした差にはなにか他の要因があるのかということが本日の課題です。こうした多方面からの解析はマーケティングでは普通にやる手法です。

貧困とコロナには関係があるか

シンガポールでは海外労働者の劣悪な居住区でコロナが蔓延して大変なことになりました。イギリスでも

こういうデータがあります。
貧困の場合は狭い家にたくさんの人数で住むということもありますが、日本の場合の貧困層の半分は高齢者ですので1人暮らしの人が多いというちょっと違った側面があります。
で、厚労省の調査では、貧困層は富裕層と比較して

喫煙率が高い
肥満率が高い(特に女性)

という特徴があり、これらはコロナの明確な重症化リスクとなっています。

で、日本の都道府県の生活保護受給率を見てみます。

大阪、北海道、沖縄がワンツースリー。上記の「感染率最高の沖縄」「死亡率1位と2位の大阪と北海道」と見事に一致しました。東京も実は多いほうです。兵庫だけが謎です。

大阪市は差別につながるとして区ごとの発生人数を公開していません。

しかし、大阪市のサイトでは一部地域に寿命が恐ろしく短く、健康診断もほとんど受けた事がない人たちが多く住む場所があることが分かります。生活保護の受給率は23%と突出して高い。


もちろん大阪市は患者の発生地域を公開していないのでここで感染が広がったかどうかはわかりません。しかしマスクをしている人も少ない(防疫意識が低い)この地域で感染拡大が広がったとすると、大阪が全国で突出して死亡率が高く、感染率も全国3位という事に納得ができます。

誤解して欲しくないのは、「だからここはー!」ではなくて、この地区の対策を避けていては大阪の医療崩壊は永遠に続くということです。貧困対策とコロナ対策はセットなのです。

ワクチン接種を嫌う人々

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)が6月に発表したデータはやはり!という感じでした。

新型コロナウイルスワクチン忌避者は1割。忌避者の年齢・性別差、理由と関連する要因を明らかに:日本初全国大規模インターネット調査より

この「忌避者は1割」というのを見て「なあんだ、1割しかいないのか」と思う人は統計を分かっていません。その1割の人たちは広く散らばっているのではなく、集中しているわけです。そして

一人暮らし、年間100万円未満の低所得、中学卒業あるいは短大/専門学校卒業といった教育歴、政府ないしコロナ政策への不信感がある方、重度の気分の落ち込みがある方では、ワクチン忌避者の割合が高いという結果であり、その関連は65歳以上の高齢者でより顕著でした。


という結果から見ると、インターネット調査という手法では2万6000人という大規模調査でも↑の人たちは多くが抜け落ちていると考えられます。つまりこの層は実際にはもっと多く存在するが、インターネット調査という手法ではごくわずかしか出てこない。それでもこれだけ明確に出ているのだから、現実にはもっとずっと多いわけですね。

それを考えて一番上のグラフをもう一度見ましょう。ワクチン接種率です。

大阪、北海道、沖縄という日本で被害が大きかった地域のワクチン接種率がこんな順位で特に北海道・・・・・・。
ではインフルエンザワクチンの接種率はどうだったのか。探したら資料がありました。

全国平均66.6%
北海道62.3%
東京53.6%
大阪50.7%
沖縄24.8%
北海道は高かったが沖縄と大阪は明らかに低い。沖縄はインフルエンザはないとか思ってる人。実は

沖縄はインフルエンザの死亡率が日本一です。なぜか大阪は低い。

とりあえず沖縄と大阪については従来からワクチン接種率が低いことはわかりました。特に沖縄は低いはずだ。先日、15人もの看護師が未接種でクラスターが起きた病院の話題とか、高山先生が入居者6名、職員5名のクラスターが出た高齢者施設にいったら入居者5名と職員5名がワクチン未接種で1人が1回だったとFacebookで書かれていたが、医療従事者でこうなのなら、やはり地域的にワクチンについての認識が低いのではないかと思う。

大事なのは貧困対策と教育

コロナ脳の究極がワクチンカルトであり、両方とも極端に振れすぎる。メリットとデメリットを冷静に判断してメリットのあるほうを選択するのが正しいのだが、その能力が全くない人もたくさんいる。そもそも比率や確率どころか割り算もできない人たちが日本にはたくさんいるのだ。

いま、生活保護を受けている半数は高齢者で、男性の単身が多い。この人たちにはネットも届かないし、もしかしたら予約方法どころかワクチンの意義も理解していない可能性もある。しかしこの人たちを放置していたら前述のようにワクチン接種率も低くなると思われるし、ここを放置すれば感染拡大から医療崩壊は変わらない。政治家は臭いものに蓋をするのではなく、全体の公共の福祉の一環として感染症対策の一環として貧困問題にあたるべきだし、ワクチン接種率の異様に低い自治体についてはなにがボトルネックなのか、きちんと精査すべきだと思う。


編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2021年7月6日の記事より転載させていただきました。