中国の暴走はどこまで続くのか?

中国の配車アプリ最大手、滴滴出行(ディディ)社が6月30日にアメリカで上場したその直後、7月2日に中国政府から国内でのアプリの使用を禁ずる命令が出ました。アメリカは週末で且つ、独立記念日、月曜日も振替休日。同社株を購入した人にとって独立記念日の祝いムードは吹っ飛んでいたことでしょう。

事実、市場が開けた火曜日は急落で始まり、20%程度下げていますが、もしも中国政府が本気で同社を締め上げるならこの程度の下げでは収まらないはずです。

私は北米市場を通じて中国株を時折、購入していたのですが、2年ぐらい前に全て売却した後は一切、資金を振り向けていません。理由は米中貿易戦争の最中にあったこともありますが、それ以上に中国政府がある日突然、驚くべき発表をするのが常套手段で投資家として長期的な視点に立つことができないからです。

アリババ社も同社の金融子会社のアント社の米国上場2日前に中国政府から横やりが入りました。表向きは創業者、ジャックマー氏の共産党への挑戦的発言ということになっていますが、私は当時のブログでアリババのような民間企業が中国政府を凌駕する規模になることを恐れたから、とコメントさせて頂きました。今でもそれが真実だと思っています。

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今回、ディディ社への規制は二つの側面があります。一つは同社が持つデータの扱いで中国国内の同社のデータが海外に流出することを恐れたことがあります。これについては何処かに落とし処があるでしょう。例えば中国政府の規制のベールの中にデータが内包されるような仕組みにさせるといったことは考えられます。

もう一つは資本の調達を海外に頼ることによる中国企業の外国資本による影響を恐れたものと思われます。国家情報の管理強化という表現になっていますが、中国のことですからどんなこじつけでも国家情報の管理と言えるような形にして先々、アメリカで上場する全ての中国企業に一定のフィルターをかけるのではないかとみています。

その場合、アメリカの証券当局はディスクロージャーの問題で投資家保護ができないという問題を抱えることも予見でき、中国企業のアメリカでの上場が維持できないという最悪の事態すら招かないとは言い切れません。

これは中国の民間企業が新たな資本の調達手段を厳しく制限される結果となり、中国資本市場には多大なる影響が出るでしょう。中国はいつ、アメリカのGDPを追い越すのか、という話は時折出てきますが、これでは本当に達成し得るのか、という疑問すら出てきてしまうのです。

火曜日の日経に小さく掲載されていたのが「フェイスブック・ツイッターなど、香港撤退を示唆 規制に反発、書簡を公表」で香港政府がデータ保護法制の見直しをすることに反発し、アメリカ資本のSNSが香港撤退を検討し始めているというのです。日本企業も多数進出する香港がいよいよ中国色に染まるとなれば香港撤退は現実的なものとなり、目先シンガポールといった代替都市への移転が促進されることとなるのでしょうか。

私は以前、このブログで中国共産党の最大の敵は内にあり、と記したことがあります。内とは民間企業で、データを掌握する中国IT企業群は最終的に共産党を凌駕するというものです。「データは剣よりも強し」なのです。ところがそれを記載したのちに中国は内なる敵を締め上げ始めたのです。

中国に外敵はおらず、習近平氏の完全統一時代を完成させるにはあとは人民を牛耳ることである、その方法は人民の個人情報と行動をつかみ、一切の反国家的動きを事前に潰すことにある、ということになります。さて、これは可能でしょうか?

内なる敵の一つ、大手民間IT企業の首根っこは押さえたので安泰だとみているかもしれません。私から見ればまだまだ隙間はある、と申し上げます。その一つは党中枢部だろうと思っています。中国の長い歴史においてトップに立つものは往々にして裸の王様であり、周りを固めるのは忠誠なる部下ではなく、虎視眈々と相手のミスに漬け込むチャンスを覗っている人達ばかりなのです。

そもそもこの体制は習近平氏が不死身で歳を取らないのであれば可能かもしれません。氏は現在68歳でまだ若いと言えば若いのですがこれから更に10年できるか、と言えば私には疑問なのです。それは国家の成長と習近平氏の野望の歩調はそこまで一致できないとみるからです。今は全てにおいて掌握の範囲であるのは中国を取り巻く環境の中で問題がうまく封印されているからだとも言えます。しかし、その封印のほつれはアメリカ、ウィグル、北朝鮮、台湾、あるいは日本を含め、どんなきっかけで起きるかはわかりません。その衝撃は想像以上の振幅となるものです。

私は中国滅亡説のような極論は振りかざしません。ただ、14億人もいる国家がそう簡単に長期にわたり支配できるような時代ではないということです。国家を動かすのは民であり、その力を決して侮ってはいけないのです。その点からすれば習近平氏を含む党執行部にとっては毎日が戦いであり、決して幸せで安泰な日々を送っているわけではありません。闘争をどこまで続けられるか、人間はそれほど強いのか、私には大いなる疑問なのであります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年7月7日の記事より転載させていただきました。