キャッシュレス決済、有料化で瀬戸際というけれど…

第三のキャッシュレス決済であるスマホのQRコードによる決済事業者はその導入の際、ポイントサービスを展開し、市場拡大のための大キャンペーンを行いました。その成果もあってか、この1年での利用率は昨年3月の43%から今年4月に54%と11%ポイントも上昇、利用者の年齢層は30代から50代が平均値の54%を越える一方、20代以下と60代以上が平均値以下でした。

Kayoko Hayashi/iStock

これはスマホ経由でのお金の使い方に考え方が違う可能性があり、若者の利用率が高いプリペイドカードや電子マネーなど事前払いが多い特徴がみられるのです。一方、王者、クレジットカードは利用率77%でこの数年、ほぼ横ばいです。また年齢別利用者数でみると年齢層が上がると見事にクレジットカード決済が主流になり、20代の70%に対して60代では88%となっています。高齢者にとってQRコード決済はスマホを出してQRコードのところを開けるという行為が面倒なのでしょう。(老眼などでよく見えないので大変なのです。)

さて、表題の「キャッシュレス決済、有料化で瀬戸際…」です。新参者であるQRコード決済業者は導入時にキャンペーンとして加盟店舗への決済手数料を無料としていました。それを今年の秋から通常の有料措置に切り替えるため、加盟店から「そんなら止める」という声があるというものです。

どんなキャッシュレス決済においてもそのサービスに対してなにがしかの費用は発生します。加盟店にとっては「現金なら手数料はかからないのにキャッシュレスで3-4%のお金を取られたら商売あがったり」というわけです。

私もカナダの事業ではカード決済をしていますので当然、その巨額の手数料に泣かされるわけです。私どもの場合、決済金額が一件100万円を超えるケースも多いのですが、払う側からすればカード決済ではなくて他に何がある、という状況もあります。

北米では高額の決済手段はいくつか方法があります。小切手はその有力な手段でしたがこの数年、一気に減少しました。そもそもBounceと言って残高不足で銀行からはじかれるケースがしばしば起きるため、企業の小切手ならいざ知らず、個人の小切手、特に大口決済は嫌がるのです。Bounceした場合の銀行の費用も一件あたり、500-1000円程度かかりますし、最悪取りっぱぐれも起きます。

その為、高額決済の場合、銀行でその小切手をCertifyしてもらい、支払いの銀行保証をつけるか、Bank Draft(銀行為替)を用意してもらいます。例えば不動産を購入して数千万円の支払いがあるという場合には未だにBank Draftがもっとも有効な手段です。(日本でも不動産取引は預金手形を使うことはよくあります。)

日本で当たり前の電信送金は実はまだ普及が十分ではありません。e-transferというemailないしスマホのテキストベース での送金方法ならば小口決済が無料なのでかなり使われますが、EFT(Electronic Fund Transfer)は一部の銀行の一部のサービスでしか稼働せず、まだまだなのであります。

話を元に戻しましょう。どんな決済でも費用は掛かるのですが、いまの時代、これを避けるのはビジネスを止めろというようなものです。むしろ、電子決済でメリットを考えた方がいいのでしょう。他方、日本は決済後の実入金まで10-15日もかかるというバカな話をしていますが、こちらはバッチ処理(一日のカード決済の締め)を行った次の営業日に入金になります。なので売り上げ立替を強いている決済会社は大幅な業務改善の余地があると思います。

私どものようにキャッシュをほぼ扱わないと3%の費用は払っても構わないと思っています。集金、レジ締め、銀行で入金の手間もありません。今では法人の現金入金は銀行で費用がかかるケースも増えています。また経理処理が楽で銀行の口座に売り上げ入金が全て記録されるので追跡も比較的容易です。つまり、現金決済を止めるとそれなりにメリットがあるのです。

但し、私が懸念するのは決済手段が多い場合、どれがどの入金だかわからなくなることは覚悟しなくてはいけないかもしれません。クレカの入金でもビザ、マスターカード、アメックスといったように会社ごとにそれぞれバッチ入金になります。更に電子マネー系、スマホQR系など多彩な取り揃えをしていると全部入金ソースが違うでしょう。またバッチ入金せず、個別入金のケースもあります。

では有料化でサービス継続を止めたくなるもう一つの理由である3%以上(実際には3.5-5%の範囲が主流)もの費用がなぜかかるのか、です。確かにクレジットカードの場合、与信行為なので顧客から回収できないケースもありコストがかかるのはわかります。ただ、それよりも最近のクレカを含めたキャッシュレスはポイント制度などおまけが多彩になっており、消費者側にメリットがあるものばかりなのです。これに費用が掛かるのです。特にクレカでもポイント付加率が高いUltimate系だと商店側に追加の決済費用が掛かります。商店側にはメリットどころか余計費用が掛かるのはなぜ、というのも無理はありません。つまりとてもワンサイドなシステムなのです。それに誰も風穴を開けないのですね。

売り手側からみた最も魅力的な決済はデビットカードです。それは費用が安く、カナダの場合、金額ではなく決済当たりのチャージになっています。その代わり、使う側には何のメリットもありません。それが普及しない理由です。日本では電子マネー系でCoGCa(コジカ)というものがあります。まだ小さい会社ですが、決済費用はSuicaなどの電子マネー系に比べて10分の1程度とされます。売り手側に立ったカードで、スーパーなどが加盟しているようですが、主流にはなり切れていません。

小売店には厳しい選択ですが、あと5年もすれば現金なんて持っていないという人が主流になると思います。飲食店で現金しか扱わないとどうするんでしょうか?牛丼食べるのも駅の蕎麦屋もキャッシュレス決済になると思います。あとは業者間でどれだけこの費用を下げられるかが今後の課題になると思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年7月23日の記事より転載させていただきました。