麻生太郎先生の長寿現役の働き方改革

80歳の麻生太郎先生は、本人の言によれば、病院の世話になったことは、ほとんどないそうである。ならば、おそらくは、健康保険料の負担において、圧倒的に支払い超過になっていて、年金保険料の負担においても、支払い超過になる可能性が高い。麻生先生は、政治家としてもさることながら、社会保障の財政面でも、国家に貢献しているわけだ。

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この麻生先生の立場は、健康で働けるにもかかわらず、働いていない大量の人の存在を考えるとき、必ずしも公平だとはいえない。そこで、この不公平性を是正するためには、今後、全ての国民は、80歳はともかくも、少なくとも70歳までは、麻生先生が垂れられた範に従い、現役で働き続けることになるほかなく、このことは既に政府の方針として明らかになりつつある。

では、このように就労期間を延長し、年金支給開始年齢を繰り延べることは、国民に不利益を強いることとして社会的公正に反するのかといえば、そもそも、寿命が延びて老人の定義が変動したことは自然的現象であって、その事実に対応して社会の仕組みを変えることは、当然至極のことにすぎず、むしろ、働けるのに働かないことこそ、社会に対する責務の面から、不公正といえる。

なお、健康等の事由により、働きたくても働くことのできない人については、社会の責務としての相互扶助原理によって、その生活保障がなされていることが前提である。あくまでも、公正性を確保したうえでの公平性を議論である。

最後に、就労期間の延長を不利益と考えることは、労働を苦役とする価値観の表明であって、働くことは社会への関与として社会的動物である人間の存在様式であることを考えれば、そこに喜びと生きがいを見出すべきことも当然で、政府のいう働き方改革というのは、この労働観の転換を前提にして、はじめて正しく理解されるものである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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