防災と消防団⑤:消防団への寄付を存続するための試案

高橋 富人

私は、消防団に対する寄付については、整理すべき論点、課題の解消などはあるものの、存続すべきと考える立場です。

しかし、「消防団への寄付の存続を前提とした議論」は、私が知る限り公の場では誰も提起していません。寄付を続けるべき、と考える方々はひたすら「現状維持」にこだわり、議論そのものを拒否しています。

その一方で、「寄付を廃止すべき」という意見は、社会状況の変化、消防団制度に批判的な報道、法律や司法判断を背景に、確実に我が国のスタンダードへの道をひた走っています。

ここで再度指摘させていただきますが、議論なくして今後の寄付の存続はあり得ないところにまできています。

Koshiro Kiyota/iStock

そこで今回の論考では、仮に「寄付の存続」をする場合に、最低限どのような条件を整理し、結果どのような法の整備をするべきか、について、私の見解を元に論じたいと思います。

前回:防災と消防団④

年間あたりの団員に対する妥当な寄付金の上限の設定

消防団への寄付の目的は、①団員の結束力の強化、②地元の情報交換の場、③献身的な活動に対する慰労、の3点を前提に、慰労会や宴会を堂々と前提にすべき、と考えています。この意見を開帳すると「それならば、常備消防や警察、自衛隊にも宴会予算を組むべきだ」というご意見をいただきますが、彼らは「専門職」であるため、その理屈は立たない、という理由をもってお答えしています。

ご案内のとおり、消防署員等は仕事の対価で生活されており、余暇や仲間同士の宴会もその報酬から支出できる立場です。

一方消防団員の「非常勤の労働」に対する年間報酬は、地方交付税の参入額を前提すれば36,500円であり、その位置づけは「有償ボランティア」というべき金額です。彼らに対して、地域住民が「ありがとう」の気持ちを伝える方法のひとつとして、「寄付を前提としたささやかな会合」のための道を残すことは、私としては極めて自然な方策だろうと思います。

この点に関しては国民的議論が必要となりますが、私が知る限り管轄省庁である消防庁も「寄付」に関しては検討すらすすめていないようです。その理由は、司法判断とのからみもあるため、あまりに危険だからでしょう。

こういった議論は、「マイナス査定」を前提とする人事評価制度でなりたっている官僚が積極的に関与することはありません。その意味で、一義的には立法権を持つ国政政治家や、地域の実情に詳しいはずの地方政治家がしっかり議論を提起すべきなのですが、このように賛否が割れる議題に対しては選挙が怖くて政治家もやはり手を出さない。まったくお粗末な話です。

さて、仮に宴会等を目的とする寄付であると仮定した場合、私は一人当たり1回の宴会で4~5千円とし、年間2回程度を目安に議論を開始したらどうだろう、と考えます。

過去の記事でも明らかにしたとおり、消防団の宴会については、例えば海外旅行に行ったり、コンパニオンをあげてのどんちゃん騒ぎがあったりという「野放図さ」が問題となりました。もちろん、地域差や考え方の違いはありますが、そういう感覚は時代に応じて正していく必要があると、私は考えます。

寄付に関する任意性確保

地域によっては、未だに「消防団への寄付の強要」があるようです。このような因習が残ってしまっているがために、ハイパー高齢化社会たる我が国では、可処分所得が少なくなってしまった高齢者を中心に、「寄付廃止」の方向に議論が進んでしまっているのです。任意性の確保は、寄付という形態をとる以上議論の余地のないところだと考えます。

集めた寄付金の分配方法の整理

地域により差があるようですが、通常は自治会等が寄付を集め、それを地元の消防団の分団に直接渡す、という方法が一般的なようです。

他方、もし今後も寄付を続けていく場合は、寄付を受け取る分団間の公平性の確保が前提となるように思います。

例えば、佐倉市のある場所で災害が発生した場合、「自分の地区は被災していないから出動しない」とする消防団の分団や部は存在しません。その意味で、現在の消防団は「基礎自治体内の広域な防災・消防の担い手」であるわけで、同じ市内にある分団で寄付の多寡があるのは時代になじまないと考えます。

その場合、消防団員が特別職の地方公務員であることも踏まえ、いったん当該消防団を管轄している基礎自治体が集め、各分団に対して均等に配分する方法が現実的でしょう。

次回原稿では、「寄付金の用途の透明性確保」と「消防団の公務外の貢献に対する対価の整理」を概観した後、法律整備の方向性について考えます。

次回:「防災と消防団⑥」へ続く

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