転売屋って何?(アーカイブ記事)

転売屋をめぐる騒動は定期的に起こりますが、オタクのみなさんは財産権という言葉を知らないようです。よくある誤解なので、簡単に説明しておきましょう。

Q. 転売屋って何ですか?

プラモの場合は早くから店に並んで商品を買い、チケットの場合はネットで買い、それを高く売る業者です。需要が供給を上回るときは、価格が上がるのが市場経済の基本原則ですが、売り手が価格を安く設定すると、行列や抽選になります。これを代行して高く転売するのが転売屋です。

Q. 定価で売らないといけないんですか?

日本では「定価」という表示は認められていません。普通は「希望小売価格」と表示され、小売価格の目安で、メーカーはそれを強制できません。先進国ではどこでも、価格はお店が自由につけるのが原則です。

定価で売ることは違法ではありませんが、それを強制する再販売価格維持行為(再販)は違法です。公正取引委員会のQ&Aにも「再販売価格維持行為は、競争手段の重要な要素である価格を拘束するため、原則として禁止されています」と書いてあります。

Q. 「原則として」ということは、例外もあるんですか?

著作物(書籍、雑誌、新聞、音楽)については、例外として再販(価格カルテル)が認められています。これは新聞協会が抵抗するため最後まで残っていますが、海外では著作物の価格も自由なのが普通です。

Q. なぜ再販は禁止なんですか?

近代社会の原則として、買った商品の財産権は買った人にあります。それをどんな価格で転売するのも自由であり、売り手が禁止できません。

メーカーが安売りを禁止して、安く売る転売業者を締め出したり、高値で転売するのを禁止したりすると、競争が阻害され、消費者が損害をこうむるのです。

Q. メーカーはなぜ定価を強制するんでしょうか?

小売店が安く売っても高く売っても、メーカーの利益は変わりません。それなのにメーカーが定価販売に固執するのは、ブランドを守るためです。安売りされると「あのメーカーは安物だ」というイメージができるからです。

Q. それでは高く転売するのは問題ないですね?

転売屋が高く売ってもメーカーの利益は変わらないのですが、ユーザーが文句をいうので、先着順や抽選などで定価を守っています。これではいそがしい人は買えないので、転売屋が行列に並んで高値で転売するわけです。それを買う人は、行列に並ぶコストを上乗せして買っているわけですから、他人が文句をいってもしょうがない。

Q. それでは本当にほしい人が買えなんじゃありませんか?

「本当にほしい人」とはどういう人でしょうか。それを自己申告させると、全員が「本当にほしい」と答え、だれに売っていいかわかりません。そういうときはいちばん高い値段で買う人が本当にほしい人と考えるのが市場経済のルールです。小売店がオークションで売ればいいのです。

Q. お金持ちが買い占めたらどうするんですか?

買い占めは転売とは別です。マスクやトイレットペーパーのような生活必需品を大量に買い占めると規制対象になりますが、一時的な現象です。高値で売れるのは増産するともうかるというシグナルなので、生産が増えます。

Q. チケットのように増産できない商品もありますね?

いわゆるダフ屋についてはチケット不正転売禁止法という法律がありますが、これは憲法違反(財産権の侵害)の疑いが強い。海外にはチケットの転売サイトが山ほどありますが、これを規制している国はありません。財産権は絶対だというルールが徹底しているからです。

転売サイト

Q. 転売には古物営業の免許が必要ではありませんか?

すべての転売に免許が必要だったら、ヤフオクやメルカリは成り立ちません。古物営業免許は盗品故買を防ぐための制度で、実際にはほとんどの中古品はネットで自由に転売されています。財産権は近代社会の根本原則ですが、日本ではそれを知らない人がまだ多いようです。初等教育の敗北ですね。