何をやっても批判される「老夫婦とロバ状態」の日本

トヨタ自動車の広報サイト、トヨタイムズに株主総会での豊田社長の発言が掲載され、ロバを連れた老夫婦の話が紹介されていました(写真もトヨタイムズから)。

トヨタイムズより

こんな、寓話です。

ロバを連れながら、夫婦二人が一緒に歩いていると、こう言われます。

「ロバがいるのに乗らないのか?」と。

また、ご主人がロバに乗って、奥様が歩いていると、こう言われるそうです。

「威張った旦那だ」

奥様がロバに乗って、ご主人が歩いていると、こう言われるそうです。

「あの旦那さんは奥さんに頭が上がらない」

夫婦揃ってロバに乗っていると、こう言われるそうです。

「ロバがかわいそうだ」

「事実は一つ、解釈は無限」という言葉の通り、物事の捉え方によって、何をやっても揚げ足取りの批判をする事ができてしまいます。

逆に、物事の良い面に注文すれば、どんな現実であってもポジティブに受け入れることも可能です。

最近、オリンピック選手のSNS上のコメントが炎上したり、誹謗中傷されたりして、大きなストレスになっているという報道を聞きました。

「オリンピックを楽しみたい」と書けば、不真面目と批判される。「力を出し切りました」と書けば、結果が出なければ意味が無いと突っ込まれる。メダル候補が予選落ちすると手抜きとバッシング・・・。

そんなピリピリとした風潮の中、批判を恐れて、萎縮したオリンピック選手がインタビューで優等生のようなコメントを慎重に言葉を選びながらしているのを聞いていると、日本社会が不寛容で息苦しい状態になっているように感じます。

豊田社長の発言は、日本のメディアの報道の姿勢に対しての疑問ですが、これはメディアだけの問題では無いように思います。日本社会にこのような「ああ言えば、こう言う」と、何をやっても批判ばかりで、対案の無い非生産的な空気が漂っているのは、とても不幸で勿体ないことです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年8月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。