大阪の新型コロナ「4月の悲劇」はなぜ起こったのか

(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

新型コロナの感染が、爆発的に拡大している。8月5日に東京都の検査陽性者数は、5042人と過去最高を記録した。死者は1人と少ないが、重症患者が増えると、病床が逼迫して医療崩壊が起こりかねない。

こういう状況に対応するため、政府は新しい療養方針を発表した。その最大の柱は、これまで原則入院だったコロナ患者への対応を、重症化リスクの高い患者以外は原則自宅療養に転換することだが、これが論議を呼んでいる。

問題は中等症ではなく軽症だ

8月2日の関係閣僚会議で発表された政府の方針は、次の4つの原則からなる。

1.重症患者や重症化リスクの高い患者には病床を確保する
2.それ以外の患者は自宅での療養を基本とする
3.在宅の患者は往診やオンライン診療でサポートする
4.家庭内感染のおそれがある場合はホテルを活用する

このうち重要なのは、第2の原則である。コロナは「新型インフルエンザ等感染症」に指定されており、これは感染症法の2類に準じた扱いで、感染者は入院を原則とし、病院は患者全員を検査して保健所に報告する義務がある。

毎日新聞などがこれを「中等症以下は自宅療養」と誤って報道したため、野党だけでなく公明党や自民党の一部まで「中等症を入院させないのは患者の切り捨てだ」と撤回を求めたが、これは誤解である。首相談話には「中等症」という言葉も出てこない。毎日新聞は記事を削除した。

誤解の原因は、中等症という耳慣れない言葉だろう。厚生労働省の定義では、中等症は酸素飽和度(SpO2)が96以下で呼吸に障害のある患者で、重症患者のような人工呼吸器は必要としないが、酸素吸入は必要な場合がある。

問題は中等症ではなく、軽症の患者である。軽症は厚労省の基準でも自宅療養が原則だが、中等症が回復して軽症になっても、退院させるのがむずかしい。

その結果、日本のコロナ療養者のうち入院患者の比率は38%と、先進国では突出して多い。英米では自宅療養が原則で、入院率は0.3~0.5%である。このように入院患者を大量に抱え込む過剰医療が、医療逼迫の原因になっているのだ。

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