今週のつぶやき:余る事務所ビル、タリバンの支配するアフガニスタンほか

日本では災害級の大雨となっているようですが、異常気象は世界で発生しています。ここバンクーバーの空はうっすら雲に覆われていますが、これは山火事の煙。そして気温はこの時期、当地としては経験したことがないような30度越えが続きます。ギリシャやトルコでも山火事を制御できず、温暖化は加速します。乾燥するところはより乾燥し、湿気のある所は大雨という極端な気象に我々は立ち向かう術があるのでしょうか?人類の戦いは感染症とともに次元を変えてきたかもしれません。

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では今週のつぶやきをお送りします。

もう一つの8月15日

今年の8月15日は別の意味で回顧されています。それは1971年の電撃的なアメリカ、ニクソン大統領(当時)によるドルと金の兌換停止であります。この発表は事前通告や予告が全くなく、8月15日、同大統領がテレビとラジオを通じて全国民、全世界にアナウンスしたものです。その意味では1945年8月15日と並ぶ衝撃的な天の声であったともいえます。

金の兌換停止などといっても9割の方は何のことだかわからないでしょう。要は昔は通貨は金とリンクしていたのです。いや、金こそが通貨(過去、金が足りなくなり銀も通貨の一翼を担っています。)でかつて欧州では日本のことを金がザクザク出るジパング(ジャパンの語源ともされる)とも言われていましたが日本の金山は当時採掘しすぎて枯渇。戦前にも通貨制度上、再び金が枯渇し兌換停止という経験を踏んでいます。

さてこの50年、金の縛りから離脱した米ドルは政治的主導力と対抗馬不在のままここまで走ってきました。ドルの信認を奪おうとしたのが中国元ですが、それは現実的ではありません。では仮想通貨かといえばこの私でもそれを想像するにはまだあまりにも遠い気がします。かといってドル独走はよくないと思っています。10年も前から言っているように通貨バスケット型の世界通貨が理想なのだとは思いますが、それはそれで極めて政治的だとしてはじかれるのでしょう。通貨の行方も次元を変えていくのでしょうか?

タリバンの支配するアフガニスタン

アメリカ軍のアフガン撤退に伴い、勢力が急拡大しているタリバンですが、首都カブール制圧まで時間の問題となってきています。アメリカ国内ではアフガン撤退方針を維持しているバイデン大統領に対して批判の声も出ていますが、大統領はその方針変更はしていません。タリバンのイメージはイスラム原理派で過激でテロ行為でありますが、現在のアフガンの勢力交代はよりナチュラルに進んでいるように見えます。

こんな比較をすると怒られるかもしれませんが、徳川慶喜が大政奉還をしたのとかぶってしまうほどアフガンの政府軍はほぼ戦意を喪失した状態であります。タリバンが支配するアフガンができるとどうなるか、でありますが、パキスタンとの連携がより鮮明になり、インドとの関係は不透明感が強まるかもしれませんが、アフガンが国家として自立できるかどうかは不明です。タリバンの収益源は麻薬や資源の裏取引とされています。国家の体をなしていません。

イスラム教は世界の3大宗教の中でも突出した成長力、つまり信者の数の増大が見られます。そしてイスラム教徒の人口増加率も高く、今後、世界地図の中でイスラム教がキリスト教主体の国家にも浸透していくことは確実視されています。その中で西アジアと称されるこの地域で原理主義を掲げる巨大な組織体の誕生の可能性は世界の人類の勢力地図の次元をも変えていくのかもしれません。

余る事務所ビル

東京のオフィスの空室率は7月で6.28%となり、7年ぶりの高さ。また賃料も12か月連続の下落となっています。過去20年ぐらいのスパンで見るとオフィスの需要はリーマンショック直前とコロナショック直前が最も需要旺盛でそれを境にぐっと悪化するという流れでした。リーマンショック後は空室率が一時9%近くまで上昇したことを考えれば東京の空室率はこれからさらに悪化の一途をたどると見たほうがよさそうです。

今回、私が懸念しているのはリーマンショックからの回復が経済力という枠組みの中で捉えられたのに対して今回は感染症の蔓延であり、コペルニクス的転回になりかねない点です。人々がオフィスで仕事をする、あるいは現場と本社という従来の関係が大変革したら高層オフィスビルはただのコンクリートの塊と化してしまいます。人流の減少は将来的な消費形態を根本的に変え、銀座も新宿も新橋の飲み屋もその立ち位置が崩れます。

日経には「中国不動産に淘汰の波、オフィス空室率コロナで高止まり」とあり、中国のオフィス空室率が深圳で24%、北京も20%に近付いているなど厳しい状態にあります。政府は「高さ500メートル以上の超高層ビルの新築を認めない」と。まぁ、500メートル(概ね100階建て相当)なんていうふざけたことを言っているならまだ中国政府は本気ではないと思いますが、オフィスで働かなくなる時代はひたひたとやってきているようでこちらも次元を変えていくのかもしれません。

後記
世の中の次元はどんどん変わるけれど変化対応が一番苦手なのは人間そのもの。人類ができたのは500万年前で直接的先祖とされるホモサピエンスは20万年前とされます。我々が今、変わると言っている話は人類の歴史からすればあまりにもわずかな間の出来事でありますが、それすら、我々の生活や生存に様々な影響を与えているということは人類がどんどん狭くなる枠組みの中でもがいているともいえないでしょうか?考えさせられます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年8月14日の記事より転載させていただきました。