おくざわ高広です。
町田から政治と社会のかけ橋になるべく暮らしています。
あまり気が乗らないですが、やはり一言言わないと気が済まないので書くことにします。
DaiGoさんがホームレスの方々への差別的な発言をされたことが大炎上しています。
直接的に表現したくないので丸めて書くと、
- 生活が厳しい状況の方に行政が支援をするのは良くない
- 家を失って生活している方の暮らしや命は私にとっては関係ない
- 命に優劣はある
という趣旨の言葉であり、私としては許せるものではありません。
ただし、後日、謝罪の動画をアップし、生活支援団体の活動に参加する旨の表明をしているので、私としてはこれ以上言及するのはやめようと思います。
一方で、これを機に一人でも多くの方に知ってほしい、そして一緒に考えてほしいことがあるので、お伝えしていきます。
1.生活保護を利用している人が極端に少ない日本
生活保護を受けられる人たちの中で、実際に生活保護を受けている人の割合を「捕捉率」といいますが、日本では20~25%とされており、4人~5人に一人しか行政の支援を受けられていません。これは海外と比べても極端に低い数字となります。なぜ生活保護の利用に至らないのでしょうか。
NPO団体が実施したアンケート調査によると、「家族に知られたくない」が第一位となっています。これは、「扶養照会」といわれる制度がネックになっていることを表しており、家族の助けが受けられるかどうかを確認した上で、そういった支援が受けられないと証明されてから支援が開始されるというものです。
利用したくない第二位は「役所で過去に嫌な対応をされた」ということです。上述の「扶養照会」は拒否することもできますが、丁寧な聞き取りが行われることになります。役所の対応に冷たさを感じたことがある人もいると思いますが、生活保護の申請をサポートする方々に話を聞くと、役所側の丁寧な聞き取りは、利用者側からみると自分にとってつらい現状を根掘り葉掘り聞かれることで追い詰められていく内容になってしまうそうです。
第三位は「自分の力でがんばりたい」とあり、厚生労働省などが「生活保護は権利です」として、ためらわずに利用してほしいと呼びかけるのは、この考えを変えてほしいという趣旨かと思います。コロナ禍で若者の食糧支援を行っている方から聞いた話では、支援を受けるのをためらう理由の一つとして、「親に行くなと言われた」という回答があるそうです。支援を妨げている理由には、社会の側の価値観に問題があることを示唆しています。
ちなみに、政治活動をしている中では、生活保護の不正受給について質問されることがかなり多いです。不正受給は大きく報道されたこともあり、関心を寄せるテーマになったのだと思いますが、実は不正受給は金額ベースでは全体の0.45%とのことで多くはありません。また、不正内容の内訳をみると、働いて収入を得ていた、年金収入があったなどのケースが多いようですが、この中には、自立しようとして働いたけれど、申告を忘れていたというケースも少なくないと思われます。ほんの一部の悪意ある不正受給をとりあげて、生活保護制度全体に問題があるかのような議論はあってはならないと思う次第です。
2.ホームレスは減っているという行政の見解
家を失って路上で生活をしている、いわゆるホームレスの方々がどれくらいいるかご存じでしょうか?
おそらく私の体感と同じように、コロナ禍で増えていると感じている方はいると思いますし、特に繁華街のあるターミナル駅などでは数十人のホームレスを見かけることになると思います。
それを踏まえて、こちらのデータを見てください。
実は、東京都では、都内における路上生活者数を把握するために、道路・公園・河川敷・駅舎等の路上生活者の概数調査を夏期と冬期の年2回実施しており、今年1月の路上生活者は区部549人、市部15人、合計564人と発表しています。これは、10年前の1/3程度の数字であり、コロナ前と比べても50人程度減っているという結果です。
なぜ私たちの目にすることと東京都の調査がずれているのかというと、日中に調査が行われていることや路上生活者の定義が実際の生活状況と異なるという指摘もあります。いずれにせよ、行政というものは良くも悪くも問題を認識すれば対策を講じるし、問題を認識しなければ対策を講じません。その意味で、ホームレスは減っているという調査は、対策を弱めることにもつながりかねません。
昨年末、町田の支援団体に同行してお話を伺いましたので、それも参考にリンクを貼っておきます。
また、調査とは関係ありませんが、一昨年の台風19号において、行政が開設した避難所においてホームレスの受け入れを拒否したことが大きな問題になりました。住所不定の方を受け入れることや、安全面や衛生面での不安から、受け入れ拒否となり、賛否両論巻き起こりました。その後いくつかの自治体ではマニュアルが整備されたそうですが、「私たちはいないものと同じなのかな」といったお話を聞いたときには胸が締め付けられました。
3.私たちにできること
では、こうした現状を踏まえて、私たちにできることはなんでしょうか。
SNSをみると、支援団体への寄附をする方が増えており素晴らしいことです。厚生労働省の「生活保護は権利です」という発信も価値あるものだと思います。町田の支援団体「りぼん」にもお力添えをお願いします。
さらに、私は「知る」ことを始めてほしいと思います。
DaiGoさん自身も「無知」であったことを詫びていますが、私たちは社会で起きていることをあまりにも知らなすぎるのだと思います。生活困窮や路上生活をしている方のこと、支援する制度はあっても使いにくいこと、その一端は私たちの価値観や無知にもあること、こうしたことを私自身も政治家になるまでの間は全く知りませんでしたし、知ろうともしませんでした。今思えば恥ずかしい言動をとっていたこともあったと思います。
「知る」ことは何かを「変える」きっかけになることだと思っています。
これを機に、日本の生きづらさや政治や制度の不公正さが変わっていくことを心から願っています。