トップに踊り出るためには、自ら「ゲームチェンジャー」になれば良い

先週出かけた北九州の照寿司の渡邉さんが書いた「自己流は武器だ。」という本を、お店で買い求め、早速読みました。

全国的には無名の北九州にある地元の寿司店が、どのようにして世界一有名なお寿司屋さんに飛躍できたのか。

もちろん、フェイスブックやインスタグラムをいち早く取り入れ、知名度を高めた事が大きな成功要因です。

しかし、一番のポイントは、渡邉さんが「ゲームチェンジャー」になったことだと思いました。ゲームチェンジャーとは、既存の世の中のルールや仕組みを一変させてしまう存在のことです。

照寿司が握りの技術や、ネタのクオリティーだけで勝負をしていたら、東京の有名寿司店には勝つのは極めて難しかったと思います。そこには、既に老舗の寿司店の強力なブランド力があるからです。

そこで、寿司店が競争するゲームのルールを自ら変えてしまったのです。

お寿司のクオリティーだけではなく、エンターテイメントを盛り込んだ劇場型のカウンター寿司を提供することで、東京の一流店を一気に凌駕してしまいました。

例えて言えば、みんなが柔道の勝負をしているところに、異業種格闘技で勝負しにいったようなものです。

柔道という伝統的な競技では優勝できなくても、格闘技世界一になれば良いのです。

これは、飲食に限らずビジネスを考える上で大きなヒントを与えてくれます。既存のカテゴリーの中で上位を目指すのではなく、自ら新しいジャンルを作って、その先駆者になれば良いのです。

ゲームのルールが変われば、先人とのレッドオーシャンの戦いをすることなく、極めて短期間にその分野のナンバーワンになることができます。

ゲームチェンジャーになるためには、既存のビジネスの顧客が本質的に何を求めているかを見極める能力が必須です。

高級飲食店でいえば、来ている人の多くは、味だけではなく、その空間の雰囲気を楽しみ、気分よく過ごすために来ているのです。

カウンターで寿司職人に気を遣いながら、ビクビクしながらお寿司を食べるのは何かおかしい。そんな顧客の疑問の中に、ゲームチェンジのヒントが隠されています。

これと同じように、当たり前のように提供されているビジネスも真の顧客ニーズからゼロベースで考え直すと、そこに新たなビジネスチャンスが生まれるのではないか。照寿司のお寿司をいただきながら、そんなことを考えました。

どのような分野であっても、突出した実績を出した対象からは、多くの気づきと学びが得られます。楽しく美味しいだけでなく、極めて貴重な時間を過ごすことができました。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年8月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。