このツイートが反発を呼んでいるが、これは当たり前のことをいっているだけだ。
「準公営病院」が行政の命令に従うのは当然
私も昨年12月の記事で書いたように、日本では民間病院が全病院の8割を占めるが、医療法では都道府県知事が、民間病院に指示や命令を行うことができない。国公立病院には「コロナ患者を受け入れろ」と命令できるが、民間病院には「要請」しかできないのだ。
医療スタッフや患者の配置にも介入できないので、ガラガラの病院から逼迫している病院に医師を再配置することもできない。大病院をコロナ専門にして、他の患者を個人病院に転院させようとしても、個人病院が拒否したらできない。要請に従わなくても、罰則がないからだ。
日本の健康保険は3割負担だから、病院の収入の7割は公費負担(その半分は税金)の準公営病院なのに、行政が命令できないのはおかしい。これは医師会が都合のいいときは「医療は公共機関だ」といい、都合の悪いときは「行政は民業に介入するな」と主張するためだ。
命令に従わないときの制裁としては、罰金などの刑事罰は必要なく、保険医療機関の指定を取り消せばいい。民間病院の経営は、自由診療で続けることができる。
特措法を改正して行政に「命令」権限を
しかしこれには健康保険法の改正も必要なので、医師会が大反対するだろう。妥協案として、緊急事態宣言を出したときは、保健所に指揮権をもたせてはどうだろうか。これも今年初めの特措法改正のとき議論されたことで、第31条の
都道府県知事は、医師、看護師その他の政令で定める医療関係者に対し、その場所及び期間その他の必要な事項を示して、当該患者等に対する医療を行うよう要請することができる。
という規定の「要請」を「命令」に変えて罰則を設けるべきだという意見があったが、無視された。他方で飲食店などに対しては命令権限(第45条)が明示され、罰則(過料)ができた。
実はここにコロナを5類に落とせない理由がある。感染症法では、感染症指定病院も行政の「指導に従わなければならない」と定めているだけで、罰則は指定取り消ししかない。5類に落とすと、指定病院にも指導できなくなり、保健所のコントロールがきかなくなってしまうのだ。
今の法律では2類相当の調整業務は保健所に集中しているが、その権限が弱いため、保健所が病院をコントロールできない。これが「幽霊患者」が病床を占拠する原因である。
根本的な改革は、医療法と健康保険法を改正して、行政に保険医療機関に対する指揮権をもたせ、従わない場合には保険医の取り消しを行うことだが、これには医師会の大反対があるだろう。
だから少なくとも特措法31条を改正し、緊急事態宣言のときぐらい行政が命令できるようにしてはどうだろうか。この場合の罰則は、指示に従わない病院の名前を公表する程度でもいい。全国民の行動制限を法制化するより、医療逼迫にはずっと効果的だろう。