偏向する専門家に騙されない、データと事実に基づくワクチン接種の判断

ワクチンは若年層も接種すべきか、という問いに対する発信で公平な論述が殆ど存在しない。接種推進派と反ワクチン派は夫々に自分の考えを絶対正義として他意見を科学無視の印象論、レッテル貼りで攻撃を繰り返す。

勿論、厚生労働省や首相官邸ページには客観的な情報やオープンデータも提示されているので、その情報から個人が判断する事は充分に可能だ。しかし、その判断を惑わすマスメディアの一方的な発信が全てをかき消し、上書きしているのが実態であろう。

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テレビに出演する専門家も同様である。交差接種に関して、政府が検討に入ったが、8月30日のある番組では専門家が「安全性が充分に確認されておらず時期尚早」と批判して見せた。デジャビュ―に襲われる感覚だったが、ワクチン接種開始に関しても、日本の専門家や野党が慎重論を発し、ワクチンのリスクを煽り続けた結果、政府として慎重な治験実施を決断し開始時期が遅れたが、後日諸外国と比較して接種遅れを批判しているのは同一勢力である。

交差接種は既に各国で議論が進んでおり、これを否定するなら、ワクチン接種自体の否定にも繋がりかねない意味不明の慎重論に思える。特に筆者は予てからウイルスベクターのチンパンジーアデノウイルスを1回目と2回目で同じモノを使用(スプートニクⅤは変えている)している事にメカニズム上の疑問を持っていたので、1回目アストラゼネカ、2回目にmRNAのファイザーやモデルナという選択は合理的に感じている。(単なる素人の感想であり疑問だがこういう事を論じる専門家がテレビ番組にはいない?)

その様な状況で、専門家のいう事を素人が鵜呑みにするのは極めて危険に感じる。その専門家を信用できるか、思想的に偏ってないか、セカンドオピニオンではないが数多くの情報、多様論に触れなければ判断しようがない。

しかし、素人でも判断する方法はある。それは政府などの発信するデータを元に考える事だ。データは決して嘘をつかない。但し、解釈の誤謬性はあり得るが、バイアスのかかった解釈による誤謬性を見極める事さえ出来れば、データそのものは決して嘘をつかないのだ。

ワクチン接種の判断情報

以前もワクチン接種判断の情報として発信したが、その当時まだ接種自体が少なかったので、続報の形で論じたい。

まず、ワクチン接種の安全性に関して、逆に言うとデメリット、危険性に関して確認したい。

ワクチン接種後の死亡例に関して、8月末現在で厚労省のページに掲載されている事例は、900件以上存在する。その中でワクチン接種が原因と特定された事例は1件もなく、圧倒的に多いのが「情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できないもの」である。

この情報不足という表現が発生するのは、病理解剖もそうだが接種前の精密検査が無いので、ビフォーアフターの比較ができない事が大きい。考えてみれば分かるが、ワクチン接種前に精密検査を受けている事例なんてほんの僅かだろうからだ。

素人目に見ても、因果関係が無いと思われる事例も確かに含まれるが、逆にこれは何らか関係あるだろうと思われる事例も事実存在する。そして、数字には自然発生とは思えない不自然さが現れる事もある。接種後の死亡報告までの経過日数がそれにあたる。下グラフをご覧頂きたい。

接種後の経過日数が自然発生とはとても思えない分布を示しているのである。明らかに接種後1週間程度までに事例が集中しているのだ。64歳以下でも実数は少ないが傾向は同じである。

これをもって因果関係を立証は出来ないが、否定はできないという前提を持つべきなのだ。そして、高齢者接種実績との割合を考慮しても、明らかに64歳以下の報告事例は少ない事も特筆すべき事実である。

直感的に言うと、コロナ感染で死に至るのと同様、高齢者は副反応が強ければ体力的に耐えられないケーズも存在するという仮説も成立する。

従って、ワクチン接種によるリスクは確実にあると言っても良いだろうが、だからリスクが高いと言うのは短絡的過ぎる。100万人換算で言えば、全数直接起因だとしても、7.65人程度で、この時点で交通事故の死亡リスク23人程度と比較して3分の1でしかない。更に、全て直接起因ではない事は自明であろうから、更にリスクは低まる。最悪のリスクはその程度なのだ。

一方で接種のメリットは、感染によるリスクを低減させる事。

死亡率は、高齢者の60台で1.2%、70台で4.6%、80代以上で13.2%に至るが、これを95%防ぐ効果があるという事だろう。陽性率は実績で約0.1%だが、隠れ陽性含めて仮に5倍と想定し0.5%と設定すると、例えば80歳代以上なら100万人換算で約70人の死亡者が発生し、ワクチン接種でこの95%、66人程度の命が助かる計算だ。同様に70歳代では24人、60歳代で8人が助かるのだ。70歳代以上で、交通事故死以上のリスクからそれ以下に抑える効果があるのだ。

但し、50歳代、40歳代では交通事故死リスクのおよそ10分の1のリスクであり、30歳代以下では、ほぼ死亡リスクとしては算出範囲外なのだ。

数字で検討すると、高齢者はワクチン接種のメリットが上回り、交通事故死リスク以下のリスク低減が期待できる事は間違いない。体力的に無理がある、例えば看取りを決断せざるを得ない状況では接種は慎重に検討する必要があるかもしれないが、それ以外は基本接種推奨で疑い様がない。

しかし、30歳代以下の若年層ではどうだろう。接種の致命的なリスクは低い。感染による死亡リスクもほぼゼロ。数字上はそうなる。勿論、ワクチンの中長期的リスクは未知数だ。まさか5Gに繋がる等のガセ情報は別として、何らかのリスクは想定されるだろうが、交通事故リスクと比較して大きいと思うか否かが検討のポイントではないだろうか。

これらを表にまとめると以下の様になる。

上表の数字は、想定比率の設定以外は現時点の事実である。しかし解釈は様々出来るだろうし、個々の事情に応じて判断は異なって然るべきだろう。個人の事情には社会活動を実行する上での制限や、職業上の事由、思想信条による事由、個人の健康状態による事由なども加味すれば良いが、それでも数字度外視では判断を誤りかねないだろう。

専門家に騙されるのも自己責任といえばその通りだが、出来れば自分自身で数字を見て、調べ、自分の頭で考える、それこそ自己責任であり、自由の原点なのだ。

今回題材として取り上げたのはワクチン接種の是非。筆者自身は積極推進派でもなければ、決して反ワクチンでもない。事実を示すデータ、情報を正確に読み取り、本当に是々非々の判断を不確定要素の部分も含め個々人が行うべきであり尊重されるべきと考えている。