菅首相は3日、自民党総裁選(9月17日告示、29日投開票)に出馬しない事を表明した。このため10月21日任期満了までに行われる衆院選は、選出された新総裁が臨時国会で首相指名され、その下で臨むことになる。
現下の最大の政治テーマは言わずもがなコロナ対策であるが、総裁選では候補者の顔ぶれがどのようになるにせよ、これまでの党内議論を見れば大きな争点にはならないだろうと見られてきた。だが、菅氏退陣を受け俄かに中心テーマの一つとなる可能性が浮上した。
もし意欲を示す高市早苗氏が推薦人20名を集めて候補者となった場合には、改憲と対中政策が比較的大きなテーマとなると思われるが、コロナ対策でも新機軸を打ち出す事を期待したい。
さて総選挙であるが、こちらの方は元よりコロナ対策が最大のテーマとなる。もし自民党が新総裁の下でも大きな転換は出来ないと仮定するなら、これまでの主張を見れば各陣営の打ち出すコロナ対策は概ね次のような所か。
- 自民・公明:ワクチン一本勝負とは言わぬまでも、ワクチン中心
- 立憲・共産等:ロックダウン等中心、またこれに対し休業補償を厚くすること等
ワクチンは特に長期的リスクが未知数の上、ブレークスルー感染等で3回目接種が必要と言われる等、効果の方も怪しくなりつつある。
一方、効果不明かつ甚大な経済的損失を伴うロックダウン等の営業規制・行動規制は、もしやるにしても緊急避難的なものであり、筆者はそれをコロナ対策の中心に据えるのは誤りだと考える。但しこれは左翼側にはすこぶる受けがよく、立憲・共産等としては捨てがたい看板政策になるだろう。
その他のコロナ対策としては、ぐだぐだの水際対策、のろのろの医療キャパ拡充については、各党とも具体的な政策を打ち出して欲しいものであるが、ここに来て前々からあった新型コロナをSARSや結核等と同じ感染症法上の2類相当の特別枠から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げる議論が、デルタ株による東京等の医療崩壊を受け一部医療関係者等から強く上がって来ている。
5類に変更する事は、保健所を通さず広く開業医がコロナ診療を行う事を意味し、下記式の分母だけでなく、結果として分子も増加させる事になるだろう。
感染者数(分子)/ 使える医療キャパ(分母)
そのため、筆者は単純に5類に落とすのではなく、現在の感染対策の何を残して何を削り何を加えるのかを具体化する必要があると考える。またその際、一部で有効性が主張されているイベルメクチン等の治療薬の緊急承認や大規模治験等に踏み込む選択も有り得る。
総選挙では、こうした点をどの党が取り上げるのか、そしてどの党が無視するのか、ワクチンとロックダウンのステレオタイプのポジショントークだけでは退屈であり、マスコミも大きく深く取り上げ、コロナ政策論争を実質的なものとし大いに盛り上げて頂きたいものである。