賃金が上がらないまま「茹でカエル」になっていく日本人

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日本人の賃金上昇が諸外国に比べ極めて低いのはナゼでしょうか?日本経済新聞の記事によれば、経済協力開発機構(OECD)の調査で、過去20年間の名目平均年収はアメリカで約8割、ドイツやフランスは約5割増えたのに対して、日本は5%減少と長期のトレンドが真逆な状況になっています(図表も同紙から)。

日本経済新聞より

先進国の中で日本だけが取り残されて、貧しくなっていく。更に、円安が進んだことを考慮すれば、為替を考慮した賃金は更に相対的に下がったことになります。

日本の賃金が上昇しない理由については、様々な理由が語られています。

例えば、労働組合の組織率が下がり弱体化したこと、構造改革によって非正規雇用が増えたこと、日本のデフレ環境が続き物価水準のマインドが醸成されにくい、といった要因分析です。

しかし、もっとシンプルに経済学の需要と供給の関係から考えると、賃金が上がるか下がるかは、その人の仕事に対する需給によって決定されることになります。スキルの高い人に対しては、需要が高くなり賃金は上昇していくはずです。逆に、需要よりも供給が多くなれば供給過剰になり賃金は下がっていくことになります。

日本人の賃金が上がらない根本的な理由は、需要の多い仕事をする人が少なく、需要に比べ供給過剰になっている労働市場に多くの人がいるからではないかと思います。

また、生産性が上がらなければ、企業は労働者に高い賃金を支払うことはできません。同じ仕事量を半分の時間でこなせる人であれば、企業は人件費が2倍までなら高い賃金で雇っても割に合うことになります。日本人の労働生産性が上がっていないことも賃金低迷の理由です。

日本国内でも、グローバルな競争力のある会社であればスキルによって高い賃金が実現できるのに、そのような労働マーケットに参入できる日本人はあまり多くありません。スキルだけではなく、英語によるコミュニケーションという壁も存在します。

つまり多くの日本人は、グローバルな労働市場から取り残され、生産性の低さから低賃金に甘んじていると考えることができます。

賃金が上がらないのに悲壮感があまり無いのは、物価が上がらず国内にいれば、生活水準が悪化していないからです。そんな居心地の良い日本で、気が付かないうちに海外との格差が拡大し「茹でカエル」になっていくのが本当に心配です。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年9月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。