今週のつぶやき:サントリー新浪氏の45歳定年発言ほか

ちょうど20年前の今日、世界を揺るがすテロ事件がアメリカで発生しました。テロとは政治思想目的を達成するために手段を選ばず暴力に訴えることです。日本でもかつて過激派によるテロ破壊活動があったように世界はイデオロギーとの戦いを終えることができません。その中で10年前の2011年、オバマ大統領(当時)が世界の警官を辞めると言い放ちます。いつ次の原理主義が暴発するとも限らない日々だといえるでしょう。一見平和そうに見える世の中ですが、水面下ではあらゆることがうごめいていることは決して忘れてはなりません。

新浪 剛史氏 サントリーグループHPより

では今週のつぶやきをお送りします。

一斉に並び始めた株式市場不安説

日本の株価はノー天気な上昇を続けていますが、アメリカの株式市場先行きにはかなり厳しい見通しを出す金融機関、専門家が増えてきています。わかりやすい表現でいえば「秋雨前線」がやってきた状態で地盤が緩み、何かきっかけがあれば崩れやすい状態にあるといってよいでしょう。秋というのは毎年、大体大雨が降るものなのです。

もう一つ気になるのは韓国とロシアが利上げに踏み切ったことがあります。それぞれの理由があるのでそれがすわ、世界的な利上げシナリオになるとは言いませんが、カナダも来年は利上げをもくろんでいます。昨日、銀行と与信の件で久しぶりに対面ミーティングした際、話題に上がったのが「カナダのオフィスが余りそうだ」。企業は現在のリース期間が終わり次第事務所スペースを大幅に減少させる傾向が急速に出そうだと。東京でもすでにその兆候は明白でオフィスビル受難の時代は確実視されます。

ただ、マネーが地球儀ベースで余っていることは事実。運用会社は現金で持っているわけにはいかないので何かを買わねばなりません。何を買うのか、ですが、欧州株、日本株、GSはシクリカル銘柄(景気敏感株)、カナダではオイル&ガス銘柄への回帰が叫ばれています。まるで真逆の戦略ですが、少なくともアメリカ株以外で逃避マネーの行方を探せ、という感じに見えます。だけど、日本の株価は秋祭りの状態ですね。踊りすぎませんように。

SBIの野望、新生銀行も食う!

SBI、案外ご存じない方もいらっしゃるかもしれません。ソフトバンクインベストメントがもともとの社名でした。孫正義氏のあのソフトバンクが源流ですが、徐々に孫氏の呪縛から離れ、2006年に資本上は完全に切れます。その主導者が北尾吉孝CEO。まぁ、辣腕、力技ありなのですが、なぜかあまりマスコミに取り上げられず、目立たない存在です。

しかし、北尾氏の地銀再編プロジェクトはすでに全国9行と進み、その骨格の一つとして新生銀行の買収を発表しました。そもそも金融庁にとって地銀再編は都市銀行再編に続く第二弾だったのに踏み込めない状態が続きました。その間、地銀は国債取引で延命していると指摘され、迷走するスルガ銀行の茶番劇も見ました。金融庁と北尾氏は「できている関係」だとみています。よって新生銀行の政府保有分の簿価は7500円、現在の株価が1700円、TOBが2000円となれば一旦、非上場にして価値の洗い直しのマジックが生まれるのでしょう。政府と北尾氏のwin-win関係です。

さて、北尾氏の第4のメガバンク構想、これに対抗するように静かに動き出したのがりそな銀行で京葉銀行、香川県の百十四銀行と手を結び始めています。よい競争だと思います。民間主導で地銀再編を進めている間に金融庁はみずほ銀行をどうにかしなくてはいけないでしょう。都市銀行再編で政府が暗躍した強硬策の功罪は改めて検証する必要がありそうです。

サントリー 新浪氏の45歳定年発言

新浪剛史氏は私が考える現役実力経営者の5本指に入ると思っています。そもそも地頭がよく、キャリアもこれ以上の履歴書はないだろうという完璧なものです。サントリーが初めて迎え入れた創業家以外のこのプロ経営者はアメリカのビーム社の買収そして、その難しかった企業文化の統合を新浪氏が直接踏み込み、問題解決をし、その相乗効果が本格的に出てきたところです。新浪氏は次へバトンを渡すための準備を着々と進めている、これが氏のおかれている立場です。

その新浪氏が経済同友会のオンラインセミナーで45歳定年説を述べ、炎上、釈明会見をする形となりました。「定年」という言葉が独り歩きしたわけですが、私は新浪氏の言いたいことは大変よくわかります。同じ趣旨でいうなら私は40歳と申し上げます。理由は社会人人生が高卒も考え20歳から60歳をコアとすれば40歳はちょうど真ん中なのです。平均寿命というか健康寿命が80歳だとすればこれまたちょうど真ん中なのです。

雇用されるというのは言い方が悪いと思いますが、ある程度は寄りかかっている部分があるのです。そうなるとどうしても甘えてきます。給与が安い、社風が悪い、職場環境が劣悪…。これらは野党が「反対、反対、絶対ハンターイ!」というのと同じ構図です。新浪氏も私も「人生、半分までは支えがあったのだからこれからは自立できる能力を磨きなさいよ」ということです。もちろん、企業は従業員によって成り立っています。しかし、それらの人たちが受け身の仕事ではなく、能動的に動くようになってほしい、自分の得意分野をしっかり作るんだよ、という「教え」だと思ってくださればよいと思います。表現って本当に難しいですね。

後記
今週はビジネス関係の話題が3本になってしまいました。選挙の話は明日、振ります。ちょうどカナダも20日に投開票の総選挙中で党首討論会が行われたのですが、アメリカ大統領選の討論会とそっくり同じ状態で荒れています。トルドー首相は完全に守勢で形成は極めて悪い状態です。トルドー首相が弱いというより保守巻き戻しの機運が明らかに強まっています。これが「時の風」なのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年9月11日の記事より転載させていただきました。