自民党総裁選挙で河野太郎氏が「最優先の政策」として提案している「最低保障年金」は、彼が2009年に提案した改革案と基本的には同じだ。
これは年金の1階部分を税でまかない、2階部分は所得比例の積立方式にするもので、1階部分(基礎年金)は100%消費税で、2階部分を社会保険料でまかなう。これはすべての人に同じ所得を保障するベーシックインカムとは違うが、いわば老人限定ベーシックインカムである。
これは負担と給付の関係が透明で合理的だ。年金未納の問題も解決できる。今の年金受給者は4000万人だから、消費税収20兆円で年額50万円の年金が払える。
これを今と同じ年額75万円(月額6万円)にするには、消費税率を15%にすればいい。「月額6万円では生活できない」という不満に対しては、年額100万円にするには消費税を20%にすればいい。その代わり未納が半分近い国民年金保険料はなくなるので、年金の安定性は高まる。
積立方式に移行できるか
むずかしいのは2階部分で、すべて積立方式の所得比例年金にする。これは過渡的には「二重の負担」が発生するので、それを現役世代が少しずつ事前積み立てして100年かけて解決する。これについては、2012年にニコニコ生放送で河野氏と議論した(まだ動画が残っている)。
こまかい話は解説記事を読んでいただきたいが、積立方式にしなくても1階部分の改革はできる。大事なことは今の税と社会保険料を組み合わせた年金制度をやめ、最低所得を税で保障するという原則を明確にすることだ。
今の年金は社会保険料でまかなうことになっているが、その財源が大幅に足りないのを税で穴埋めしているため、将来世代の負担(税・社会保険料)が莫大になる。それを防ぐために1階部分を消費税で老人にも負担してもらい、高福祉=高負担という対応関係を明確にするのだ。
この案は「月額7万円の最低保障年金」を公約にした民主党政権で検討されたが、これまで払い込まれた年金保険料(将来受給する年金)には巨大な既得権があるため、それを税に置き換えることは政治的に困難で葬られた。
「老人だけに最低所得を保障するのは不公平だ」という批判があるだろうが、この1階部分を全世代に拡大したものがベーシックインカムである。今の社会保障の「保険」というフィクションをやめ、世代間の負担を公平にする出発点として、この案をベースに国民的な議論をすればいい。