岸田文雄宰相の時代

素直におめでとうございます、と申し上げたいと思います。非常に印象深い選挙戦を勝ち残った岸田文雄氏は「一番ではない」タイプなのかもしれません。個性が強いわけでもなく、思想に偏りもないし、完全主義者でもないし、ヒーローでもないと思います。ただ、確実に言えるのは手堅く、まじめで努力家。これは日本人の中では支持を得られやすい人間像ですので私は数年単位で首相をやる気がしています。ちょくちょく変わる日本の首相に逆戻りか、と言われないためにもそうであってほしいと願っています。

選挙戦について今更とやかく言う必要はないと思います。結果のとおりであり、予想通りだった人、外した人、様々です。ただ、これは賭け事ではないので「四者四様」の考え、特に岸田、河野、高市の三者の立ち位置の違い、スポットライトの浴び方を含め、政治を考えるよい機会だったと思います。

河野氏の失敗はどこにあったか、私見を一言だけ。人望がないのでしょう。その人望とは「(議員同士で)飯を食ったことが少ない」点に集約されます。前回の立候補の際その後、支援者にお礼もなかったとも指摘されています。事実は知りませんが、氏のドライな性格がウェットティッシュに更に水を含ませたような政治の世界の人々にとって西洋かぶれ的扱いだったのかもしれません。小池百合子氏が議員受けしないのも同様です。仮に河野氏が知事選に出たら勝てるでしょう。しかし、魔の住む「政治業界」では沼の底で妖怪が足を引っ張り、組織への抵抗はさせないという絶対の掟があるということを改めて見せつけました。

高市さんは一種のブームだったと考えています。その背景は女性候補者、保守として非常に明確でわかりやすい切り口、トークも滑らかで氏の考えに同調する人、そして反河野氏サイドにとってスィートスポットだったとみています。ただ日本では社会一般に流行とトレンドが大好きで、期待先行、過大評価される傾向は大いにあるし、高市氏が利用された点もあったと思います。そうは言っても将来への布石はできたので今後、経験を積んで主流を歩んでもらいたいと思います。彼女の弱点は河野氏と同じで、そんなに媚を売らない点でしょうか?それが新しい時代の流れだとすれば飯を食わなくても評価される政治業界の時代が来るのでしょう。

さて、岸田氏です。バランスが取れた日本的な政治家です。案外野党は苦手意識を持つかもしれません。野党は与党とのギャップや小さな綻び、ミスやエラーを穿り出すのを得手としています。意地悪ばあさんのような枝野氏がねちねちと悪口を言い、蓮舫議員が白いスーツで怖い顔して早口でまくし立て、安住国対委員長に至っては中国の外交部副局長の趙立堅氏そっくりな嫌味男です。

岸田氏はオールマイティでわかりやすく言えば一流企業のエリートサラリーマン型です。安倍氏のようなちょっとグレーゾーンも攻め込むタイプや菅氏のようなぶきっちょなトークで隙間を作りすぎるタイプとは違いますので野党はやりにくいでしょう。河野氏のような中国問題も出てこないし、高市氏のようなガチガチの保守とも違います。つまり何も出てこないので攻めようがないと思います。

経済対策は、岸田氏は富の再分配を考えています。枝野氏も同じことを考えており、その分配先が岸田氏は中間層、枝野氏はより下の層をターゲットにしている点でも攻めにくいでしょう。

経済対策をどう打ち出すか、ここに私は期待をしたいと思います。経済、産業界を見ると日本はあまりにもガラパゴス化し失うものが大きすぎました。その対策として次々と新たな新技術に手を出しています。6Gなんていうのはその典型ですが、各種世界ランキングで日本製品のダウンするスピードの方が早くなっています。なぜか、それは変化対応が遅い、それに尽きます。岸田氏が速く回せるようなきっかけを作ることが大事だと思います。

最後に人事。閣僚と党四役の人事は楽しみです。二階氏が今後、どのようになるのかを含め、注目しています。選挙の前日でしたか、二階氏のインタビューを見ていて急速に老化が進み「おぼつかない」状態に見えました。権力が無くなり、活力のエキスが抜けたからでしょうか?

日本には100日ルールがあるのかどうかわかりませんが、岸田政権を今年いっぱいはじっくり見守ってみたいと思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年9月30日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。