強権政治に挑み報道の自由を何とか守ろうとしてきたロシアとフィリピンの二人のジャーナリストがノーベル平和賞を受賞した。彼らを心から尊敬する。
朝日新聞は社説で祝意を表した。社説は次のように結ばれている。
権力におもねらず、公正で正確な報道を積み重ねる。朝日新聞を含むメディアは、その使命と責任を肝に銘じておきたい。
その通り、ぜひ、公正で正確な報道を積み重ねていただきたい。
しかし、社説の次の一文には疑問を持った。
国際組織「国境なき記者団」による報道の自由度調査によると、日本は今年、世界180カ国・地域のなかで67位とされた。政権批判を「反日」と攻撃・中傷する危険な風潮は変わっていない。
「国境なき記者団」は質問紙調査やジャーナリストへの迫害記録などを基にランキングを付けている。
しかし、配布先次第で質問紙調査は歪む恐れがある。「国境なき記者団」は政権が特定秘密保護法に関する議論を拒否し続けていると指摘しているが、国会では繰り返し議論されている。
2021年6月4日の参議院本会議では大塚耕平議員(国民民主党)が質問し、小此木八郎国務大臣が答弁している。この質疑で言及された情報監視審査会では、4月28日に民間の三氏を招いて公聴会が実施されている。「議論を拒否し続けている」というのは、質問紙への回答者の誤解である。
一方で、「国境なき記者団」は記者クラブについて、“kisha clubs”というローマ字表記もわざわざ添えて、次のように指摘している。
記者クラブ制度は、フリーランサーや外国人記者を差別し続けている。
どうしたら、ランキングを上げることができるだろう。質問紙の配布先に口を出すのはむずかしいが、大手メディアが作る任意組織に過ぎない記者クラブならすぐに廃止できる。「国境なき記者団」は権力と大手メディアが癒着しているのではないかと懸念しているわけだが、廃止すれば懸念は解消する。
公正で正確な報道を積み重ねるために、朝日新聞は記者クラブの廃止を、この機会に他の大手メディアに訴えるべきだ。