円安になってから外貨投資しても「手遅れ」

円安が加速しています。今朝時点のドル円の為替レートは1ドル=113円半ばまで円が下落。これは約3年ぶりの水準です。

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為替が円高になるか円安になるかを予想するのは簡単ではありません。今回の円安は、インフレ懸念からのアメリカの金利上昇による日米金利差拡大が主因と考えられますが、為替レートは複数の要因が重なり合って決定される交換比率であり、予想は困難と考えるべきです。

円安か円高かまったくわからないのであれば、円資産と外貨資産を50%ずつ保有するのが合理的です。

ところが、1900兆円と言われる日本人の個人金融資産の9割以上は円資産に偏っています。外貨資産は1割にも満たないレベルです。

日本人の資産運用で一番足りないもの。それは外貨資産です。

円に偏った資産配分は、円高になればメリットですが、円安になると円資産の他の通貨に対する相対的な価値は下落します。

日本人にとって資産運用の観点からすれば、困るのは円高ではなく円安です。円高になれば保有している円資産の価値が上がりますし、日本円で収入を得ている人にとっては実質的な収入アップになるからです。

とすれば、有事として備えるべきなのは円高ではなく円安と言えるのです。

セミナーなどで参加者に聞いてみると、多くの日本人は、長期的には円高よりも円安になる可能性が高いと考えている人が多いのです。円安を想定するのであれば、円資産よりも外貨資産を増やすべきです。資産のほとんどが円資産と言うのは、考えていることとやっていることが真逆になっている危険な状態です。

今回、円安が進んでいるといっても、まだ1ドル=112円台です。本格的な円安になれば日本人の保有している資産価値は更に下落していくことになります。

円安になってから外貨投資しても手遅れです。個人投資家は自分の資産の現状認識をしっかり行い、アセットアロケーションの観点から、戦略的な外貨資産の保有を行うべきだと思います。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年10月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。