先日、首都圏で大きな地震がありましたね。この地震は首都直下型地震ではないと言われています。つまり、首都直下型地震につながるエネルギーはいまもどこかで蓄積中です。
日本は世界でも有数の”地震列島”です。首都圏では直下型地震が明日にでも来るかもしれません。私たちの命は常に危険にさらされているのです。
災害は忘れた頃が一番怖いもの…。そこで、防災心理学三カ条を再確認しておきましょう。
目標は正常性バイアスに陥らないこと
正常性バイアスとは「自分たちの日常が崩壊するなんて,ありえない!!」と言う心理です。
心が警戒態勢になるとストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが分泌されます。このホルモンの働きで体も警戒態勢に入ります。モータースキルにエネルギーを集中させて、いわゆる頭の回転や免疫力からエネルギーを奪います。
なので、日常では警戒態勢を解いてストレスホルモンの分泌を抑えて置くことが必要です。
それが行き過ぎると日常がいつまでも続くとついつい錯覚してしまう正常性バイアスに陥ります。その結果、「地震が起こるぞ!!」の怖さが麻痺して,「まあ,大丈夫だろう」になってしまうのです。この状態が災害においては最も怖い状態と言えます。
正常性バイアスにおちいらない三カ条
では、どうすればよいのでしょうか。いつ来るかわからない地震に怯えて、常に警戒態勢を取っている方が良いのでしょうか?
いいえ。そうではありません。ずっと警戒態勢だと、頭の回転も悪くなってミスや失敗が増えるだけでなく、免疫の低下で病気にもなりやすくなります。
日々の積み重ねが人生ですから、人生はきっちり楽しんでいただいて、それが「いつまでも続くように」ときっちり備えておくことで被害を最小限にできます。
ここでは簡単な割に効果のある、日頃からやってほしい心の習慣三カ条をご紹介します。
① 自分の住んでるところと訪れるところで想定されている最大級の被害をイメージすること
出来るだけ詳しく目の前の日常が崩壊するレベルでイメージして下さい。5秒でも10秒でもいいです。イメージすると怖いですが、この怖さが重要です。
脳は怖さを優先的に記憶するので、わずかでも「怖い」を感じれば、みなさんが意識しなくても無意識で自動的に心の備えをはじめてくれるのです。
備えは無意識に任せて、みなさんはやりたいことをどうぞ。
無意識はそもそもが「リスクの監視システム」なので、ちょっとでも予兆を感じたら心の警報でみなさんに知らせてくれます。
地震情報にも敏感になってくれるので自動的に情報をキャッチ出来て便利です。警報の僅かな時間差が生死を分けるので、早く作動する警報にしておきましょう。
②「その時」何ができるかをイメージしておく
私たちは行動の優先順位を決めて暮らしているのですが、思いがけない事態では行動の優先順位がわからずにパニックになったり、行動に時間がかかったりします。
この行動への僅かな時間差がまた生死を分けるのです。
具体的に知りたい方はこちらのサイトをどうぞ!!
「緊急地震速報」と「津波警報」 いざそのとき、身を守るために!:政府広報オンライン
③ 意外にも「嫌われる勇気」が必要なときも
防災心理学でよく問題にされることの一つは「多数派同調バイアス」です。
「周りが平気な顔しているから」
「誰も心配していないから」
と、大丈夫だろうと思ってしまう心理です。
実はこれは大変危険なことです。特に協調性の高い日本人は危険です。
”オオカミ少年”のように思われるのが嫌で黙っている人も多いようですが、大きな被害が出た時は、このバイアスで逃げ遅れた…という例が多いのです。
「危険」「怖い」と思ったら周りを気にせずに行動しましょう。
自分を信じて、「嫌われる勇気」を持ちましょう。もし嫌われても関係は後で修復できます。ですが、命は修復できません。
大事にするべき優先順位は命です。
ご紹介した①②③、イザ!というときに役立つことです。どうぞ実践してみてください。
※この記事は2016年2月22日アゴラ掲載「メキシコ地震発生!!防災心理学の3か条をリマインドしましょう」をリライトしたものです。
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杉山 崇(脳心理科学者・神奈川大学教授)
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