東京五輪後に東京不動産は暴落すると言っていた人たち

東京オリンピックの後、東京の不動産価格が暴落すると言っていた「専門家」がいました。オリンピックと不動産需要には直接的には何の関係もありませんから、冷静に考えればおかしな予想なのですが、ナゼか信じている人も多かったのです。

また、コロナ禍でのリモートワークの普及によって、東京都心部の不動産へのニーズが低下して、価格が下落するという予想もありました。

しかし、最新データではこれらの予想とは真逆になっています。

不動産経済研究所が先月発表した2021年8月の「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2021年8月」によれば、新築マンションの分譲価格は前年同月比で24.0%上昇して7452万円となり、平米単価も26.3%アップの117万8000円になっているそうです。

平米単価がアップしているのは、都心部の地価の高い物件の販売が好調であることを示唆しており、分譲価格の上昇は高額物件を購入する人たちが増えていることを示していると思います。

供給過剰で値崩れすると言われた晴海フラッグ(写真)も、オリンピック選手村になったことで注目度がアップして、これからの販売物件に購入希望者が殺到しているそうです。

マイホーム用の不動産の価格を決定するのは、住宅ローンの金利や税制優遇、購入世帯の年収、そして需給関係です。

住宅ローン金利が下がれば返済負担が低下し、高額の物件を購入できるよういなります。また世帯の年収がアップすればローンの借入枠が拡大し、購買力がアップします。そして、物件の供給が減れば、購入者が殺到しますから価格に上昇圧力がかかるのです。

逆に言えば、金利上昇や世帯収入の減少、さらに供給過剰といった状態になれば価格が下落に転じる可能性も否定はできません。

この中で価格下落の最大のリスクファクターは金利です。

インフレによって金融緩和の流れが変われば、金利上昇懸念が日本でも広がり、不動産購入をためらう人が出てくるかもしれません。

しかし、固定金利の借入であれば、金利が上昇すると思えば、その前に借入しようと考える人が増えることが予想されます。そうなれば、駆け込み需要で不動産価格は更に一段と高くなる可能性もあります。

いずれにしても大切なことは、SNSなどでインフルエンサーなどが言っていることを鵜呑みにしないで、本当にそうなのかと自分の頭で考えることです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年10月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

アバター画像
資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。