今週のメルマガ前半部の紹介です。自民党総裁選で勝利し、見事第100代内閣総理大臣に就任した岸田総理(以下フーミン)ですが、総裁選での所信表明が波紋を呼んでいます。
「行き過ぎた新自由主義を修正し、新しい資本主義を立ち上げる」
筆者に限らず、たぶんほとんどのビジネスパーソンはこんな疑問を抱いたんじゃないでしょうか。
「新しい資本主義ってなに?っていうか新自由主義なんて日本にあったっけ?」
フーミンの言う“新しい資本主義”なるものは何なのでしょう?それは日本型雇用にどういう影響を与えるんでしょう?いい機会なのでまとめておきましょう。
日本は“弱肉強食”すら実現できないから地盤沈下中
まず、基本的な論点を整理しておきましょう。
・“新自由主義”なんてものは日本には無い
「新自由主義」というのはそもそも左翼の人たちが使う言葉で定義も曖昧なんですが、まあなんとなく規制緩和で競争激化みたいなイメージでしょう。
でもそんなの日本にありましたっけ(苦笑)
新橋あたりの居酒屋に夜行けば、定年が70歳まで伸びそうなことを愚痴りながら酒飲んでる働かないオジサンといっぱい遭遇できることでしょう。
派遣業の規制緩和ですか?
そもそも派遣労働者は雇用労働者の内のせいぜい2.5%程度で、製造業の派遣なんてその中の更にごく一部です。「派遣の規制緩和が日本衰退の原因だ」と言ってる人はただのバカなのでスルー推奨です。
というかそもそも派遣会社って終身雇用だから直接雇用しちゃうとクビ切れない企業が高いコスト払って利用するビジネスモデルなので、終身雇用制度とは切っても切れない関係にあるんですよ。
解雇規制緩和されたら企業は直接雇用に切り替えるから派遣会社は淘汰が進むはず。
「正社員制度=終身雇用制度を廃止しよう」と主張している竹中平蔵さんというのは、実は派遣業界からすればすごく迷惑な存在なんですね。
・アベノミクスは金融緩和以外何もやってない
そういう意味では、安倍政権というのは金融緩和以外にはほとんど何も改革をやってない地蔵政権なんですね。
最初期こそ「解雇規制緩和して労働市場流動化を」と明言してましたが、すぐに引っ込めて高度プロフェッショナル制度すら骨抜きになりました。
だいたい原発処理水の海洋放出すら決断できなかった政権が労働市場改革なんて出来るわけないですよ(苦笑)
むしろそんな改革のブラックホールみたいな政権が8年間も居座っていたことで、日本の衰退は決定的になったんじゃないかとさえ筆者は考えています。
・現状の格差の多くは終身雇用制度が生み出したもの
では現状存在する格差とは何か。日本の場合、それは世代間の格差であり、正社員と非正規雇用の格差です。
たとえば、貴重な新卒カードを使うタイミングが氷河期だったりリーマンショック直後だったりすると、その後の人生に挽回できないほどの負の影響が残ります。
また、女性は基本的に終身雇用のメインストリームからは排除されがちです。なので、“女性”と“氷河期世代”という属性が2つ重なるとメチャクチャしんどい状況に陥ってしまうわけです。
【参考リンク】ロスジェネ単身女性の老後 半数以上が生活保護レベル 自助手遅れ
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“弱肉強食”だったらまだいいんですよ。だって競争が行われているわけだから経済も成長するし、負けちゃった人はセーフティネットでなんとかすればいいわけで。
日本の場合は国内でマトモに競争してないから国際競争に負けてみんなで仲良く地盤沈下し続けているわけです。
そしてその中でも女性や氷河期世代という属性の人に不条理に負担が集中して悲惨なことになっちゃっているわけです。
こういう状況を踏まえれば、フーミンの発言がいかにトンチンカンなものか明らかでしょう。
たぶん立民の枝野代表もびっくりしたと思いますね。「え?アベノミクスって新自由主義だったの?」みたいな。
以降、
せっかくなので主要政党のマニフェストをチェック
新しい資本主義は日本型雇用になにをもたらすか
Q: 「地方にUターン転職するのは無謀ですか??」
→A:「インフラが無くなりそうなど田舎でないならいいんじゃないですか」
Q:「緊急事態宣言解除のたびに満員電車復活って意味ないですよね?」
→A:「ポスト・コロナに対応した企業と出来ない企業の2極化は始まっていますね」
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