迫る政権選択の総選挙
10月31日投開票の政権選択の総選挙が迫ってきた。4年ぶりに行われる今回の総選挙は、9年間に及ぶ安倍・菅政権の評価や、岸田新政権の政治姿勢や政策に対する審判である。
それと同時に、政権選択選挙である以上は、市民連合を介し、安保法廃止・立憲主義回復などの「共通政策」の実現を目指す限定的な「閣外協力」に合意し、200を超える小選挙区で候補者の一本化を成し遂げ、選挙共闘により政権交代を求める立憲民主党と共産党に対する国民の審判でもある(10月22日拙稿「立憲・共産の「容共政権」の是非も総選挙の重要争点だ」参照)。
共産党の自衛隊違憲・安保廃棄の安保政策
日本共産党の安全保障政策は、同党の綱領四の(13)に明記されている通り、自衛隊違憲・解消、安保条約廃棄である。しかし、共産党と「閣外協力」の合意をした立憲民主党の安全保障政策は、自衛隊合憲、日米同盟基軸であり正反対である。
このように、国の存立と日本国民の生命・安全にかかわる安保政策が正反対である両党が、限定的とはいえ「閣外協力」する政権が果たして持続可能なのかどうか、極めて疑問である。
共産党は、自衛隊違憲・解消や安保条約廃棄などの立場を政権に持ち込まないと主張するが、仮に、そうだとしても、共産党は、立憲民主党も認めるミサイル防衛や自衛隊の充実強化のための防衛予算、日米同盟強化のための在日米軍基地の「思いやり予算」などにも賛成するのかどうか、極めて疑問である。
なぜなら、共産党は長年、これらの予算には断固反対してきたからである。もし、反対すれば、政権の持続可能性にも疑問符が付く。
「平和外交」一辺倒の共産党
日本共産党は、中国の覇権主義的軍拡や北朝鮮の核ミサイル開発による脅威に対しても、「軍事対軍事」の悪循環に陥ると称して、日本の防衛力や抑止力の整備強化に一貫して反対し、すべて、憲法9条に基づく「平和外交」による解決を主張してきた。
しかし、国家間の紛争解決に「平和外交」が必ずしも万能でないことは、第一次世界大戦や第二次世界大戦の勃発など、世界の歴史が示している。とりわけ、国の防衛力や抑止力の裏付けのない「平和外交」が無力なのは国際社会の現実である。特に、毛沢東主席による建国以来、軍事力重視の中国や、軍事力優先の北朝鮮に対して明らかであろう。
国家間の紛争解決に「平和外交」が必ずしも万能ではないからこそ、古今東西、世界各国は、不測の事態に備え、国民の生命と安全を守るため、軍備を廃止せず、防衛力や抑止力の整備強化を怠らないのである。にもかかわらず、日本共産党は防衛力や抑止力の役割を無視し、ひたすら、憲法9条に基づく「平和外交」のみによって国と国民を守れというのである。
日本共産党は「ミサイル防衛」など抑止力に反対か?
今回、日本共産党が立憲民主党と「閣外協力」の合意をして、選挙共闘を行い、政権交代を求めて政権選択選挙に臨む以上は、共産党の具体的な安保政策を改めて明らかにし、有権者に判断材料を提供すべきである。
具体的には、とりわけ、中国や北朝鮮からの弾道ミサイル攻撃に対し、日本の国土、国民を守るために、これを迎撃するイージス艦を含むミサイル防衛に賛成なのか、反対なのか。日本の領海や排他的水域を守る潜水艦や護衛艦の保有に賛成なのか、反対なのか。日本の領空を守るF-14・F-35戦闘機の保有に賛成なのか、反対なのか。サイバー攻撃、電磁波、電子兵器、電波妨害、衛星破壊など、宇宙空間からの攻撃に対する防衛力の整備に賛成なのか、反対なのか。これらはいずれも日本の「抑止力」にかかわる問題である。
自衛隊違憲・廃止、安保廃棄を主張する日本共産党には、「閣外協力」の形態で政権に協力する以上は、上記の諸点について、日本国民のために早急に賛否を明らかにすべき政治責任がある。