ラ・パルマの火山噴火は、ひと月が過ぎてもまだなお継続している。破壊された建造物は、2185軒にも上っている。
破壊された建物は現在まで2185軒
スペイン・カナリア諸島のラ・パルマ島の火山クンブレ・ビエハが噴火してひと月が経過した。今も溶岩が流出している。これまでにこの噴火によって866ヘクタールが溶岩流に襲われ、その内の234ヘクタールが栽培地域に該当する。その栽培地域の133ヘクタールはプラタノ(バナナ)、52ヘクタールはワイン用のぶどう、17ヘクタールがアボガドとなっている。そして道路は延長52キロが溶岩によって遮断され、破壊された建物は2185軒にまで及んでいる。その中の一般住宅は1000軒余りに及んでいる。避難している住民は今も7000人余りいるが、彼らの中には噴火が収まっても帰る家がない住民が多くいるということだ。
アリダネ渓谷に所在している複数の町の住民の生徒4500人は教室に戻ろうとしたが、それも1日だけの通学であった。何しろ、校舎が溶岩流の下敷きになって間に合せの教室だけということになったからだ。(10月21日付「リベルターディヒタル」から引用)。
住んでいた建物を証明するのに電気代の請求書だけしかない場合もある
破壊された建物の中にはそこで生活していたことを証明するのが非常に難しいとされているのが栽培していた土地に農機具などを納める収納庫を次第に拡張してそこに部屋やキッチンをつくり恰も一軒の家のようにして生活していた建物である。
というのはこのような収納庫は最大25平米までの建設が許可されていた。それを拡張するのは違法なのである。ところが、例えば、プラタノを栽培している農家は最初は農機具の収納庫にしていたが、それを拡張して部屋、キッチン、浴室などをつくり80平米にまで床面積を広げるといったようなことを多くの農家がやって来た。というのも、島自体が住宅を建設するのに十分な土地がなく、しかも栽培している傍で家をつくればそこで寝泊まりもすることもできて仕事の作業もよりやり易くなるということであった。
25平米以上を建物として拡張するのは違法であるから、自治体にその届け出をしていない。自治体では依然収納庫と登記されている。違法に拡張工事をして住宅にしたということが判明しても自治体としては今さらそれを取り壊すこともできない。
同じようなケースは筆者が在住している町でも見られる。当町の周囲はオレンジ畑に囲まれている。オレンジを栽培している農家は農機具の収納庫から拡張してそこで生活できるまでになっている建物が結構ある。そこで一年中生活している人もいるし、週末にそこを利用してパエーリャを料理したりして家族の憩いの場としている。しかし、ラ・パルマの場合と同様に収納庫の拡張は違法とされ、建物の撤去が義務づけられている。環境保護からの要請でそのような規定が生まれた。しかし、小規模の自治体ではだれもが知っている仲にあって首長令で建物を撤去させるのは容易ではない。ということで事態はそのままになっている。
ラ・パルマではこのような事情を抱えた住宅が多くあるということなのである。それが今回の噴火で破壊された。収納庫を住宅にしたという不動産登記簿謄本などそこで住んでいた家族は所持していない。何しろそれが違法であるが故である。
今回破壊された建造物の半分近くは正式に住宅として登記されている。しかし、残りは一般の店舗、社屋、倉庫、工房といった建物以外に上述した収納庫が住宅に変身したケースが結構あるということなのである。その賠償金はどこまで請求できるのかというのがそこで住んでいた住民にとって強い不安となっている。恐らく合法とされている25平米までの賠償金しか受け取れない可能性が十分にある。
また一般の住宅に住んでいた住民の場合には着の身着のままで避難したということもあって登記簿謄本など所持していない。例えば、唯一それを証明できるのは電気代の請求書だけであるというケースもあるという。(10月16日付「ディアリオ・エス」から引用)。
それにしても、今回の惨事の回復には数十年を要する、と指摘しているのはカタルーニャ国際大学建築学部のカルメン・メンドサ・アローヨ副部長である。(同上紙「リベルターディヒタル」から引用)。