外交上のもめごとはギリシャ、ローマの時代から今日までずっと続いていることなので特段珍しいことではありません。敢えて特筆するなら二度の大戦を経てあのような惨劇はもうやりたくないという抑止力が効いている中で各国がどう覇権を握るか、水面下の必死のバトルが延々と行われている、そんな風に見えます。
第二次大戦後のもめごとの切り口の一つは経済/貿易でした。日本やドイツが急成長し、輸出で主導権を握り、それらを輸入する国からは重宝がられることもあれば、自国の経済に深刻な打撃を与えたと激しい反対運動が起きた国もあります。
70年代の石油ショックも結局は利害関係でした。あの頃、石油は有限、あと〇年すれば枯渇するという話をバックグラウンドに産油国の乱がおきたとも言えます。
一方、国際連合は戦後に国際連盟の教訓を生かして結成されたものの机上の議論と表層の合意を繰り返します。安保理の力関係で大きな行動力を示すことができない、そんな組織です。同様にG7という先進国の首脳が集まり世界経済などを主導する集まりを拡大したオバマ元大統領のG20という図体だけ大きな国際連合のような会合を作ったものの各国の意見を聞く調整の場以外の何物でもなくなってしまっています。
岸田総理は10月30日-31日にローマで開催されるG20には選挙の関係で出席しないのですが、国際社会の舞台に新任の首相が出ないのは大きなデメリットであると海外では評されています。選挙日程を決めた時点でG20の日程は当然分かっていたので内政と外交の選択肢で内政を選択したということはボトムラインでは岸田氏のG20の期待度が低かったともいえそうです。
11月にはCOP26が英国で開催されますが、理念と実務にギャップがありすぎて国家間の調整ができるのか、議長国のジョンソン首相には既に焦りが見られます。実務レベルで激しいやり取りがあるものとみています。それこそ電気自動車の普及の話と同じで理想と現実は全く別物、なのです。
数日前の産経に2つの気になる記事があります。「中国TPP加盟に支持相次ぐ…どうなる?」と「対中AUKUS大丈夫か、冷え込む米豪と仏」です。前者はTPP加盟に力を注ぐ中国と台湾についてTPP加盟国が支持支援にむけた水面下のバトルを報じるもの。もう一つのAUKUSについては原子力潜水艦建造をめぐっての米豪とフランスのしこり問題です。
国連の安全保障理事会にしろTPPにしろ全員の承諾という達成不可能に近いハードルがあります。普通で考えればTPPに中国も台湾も加盟できる可能性はまずない、とみるのが現実解のはずです。しかし、その間に中国が主導できるRCEPが機能し始めればTPPから外れるのは南北アメリカ大陸の参加国だけになり、日本主導のTPPの存在価値が大きく損なわれることは目に見えています。
結局これらのバトルに垣間見られるのは国家の主導権争い以外の何物でもなく、それを担保するために最新の兵器の増強や経済制裁を科せるパワー、発言力の強化を目指します。また昨今のエネルギー問題が出てくればOPECといった旧来の国々の発言力は当然増し、「オイルの増産、そう簡単にはしないさ、我々の主導権をもっと明白にするまではね」という立場をとるのは当然の判断になります。
かなり反日思想をもったある韓国人が「日本はいい国だ。自分も何度も行った。日本人もいい人だし、日本の食べ物も大好きだ。だけど政府は大嫌いだ」と。二枚舌そのものですが、二重基準が当たり前の社会が生まれています。中国人の日本へのイメージも低下していると報じられています。理由は中国人が日本に観光旅行で来られないのでポジティブなイメージが醸成されないというのが理由だそうです。
ということは軋む国家間の関係はコロナで国を閉ざしたことも大いにあるのかもしれません。一般の人が往来し、旅行をし、政府高官がリアル会議を通じて落としどころを探す、という従前の取り組みが案外世界平和と微妙なバランスを維持させるもっとも効果的なクスリという気もします。
ならば日本もそろそろコロナ規制を緩和し、外国人に門戸を開けないと敵が増える一方になってしまうかも、です。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年10月26日の記事より転載させていただきました。