10月31日は衆院選です!
みなさんは、どこの党に投票するか、もう決めましたか?
各党の公約を見ると、コロナ対策や経済政策をはじめ、色々なトピックが並んでいますね。まじまじと各党の公約を見る人は少ないと思いますが、よく眺めると各党の特徴が出ていて面白いです。
子育て家庭のみなさんにとっては、やはり「子育て支援政策」が一番気になるところではないでしょうか?
というわけで、僕なりに各党の子育て支援政策をまとめてみたので、「自分の願いに一番近いことを言っている政党はどこか?」という視点で、改めて考えて、投票場に向かっていただけると嬉しいです!
各党こども政策公約比較
1.自由民主党 令和3年政権公約
まずは与党自民党の公約を見てみましょう!
直接的な、子ども政策じゃないんですが、財政の単年度主義の弊害を是正し、長期的・計画的に国家課題に取り組むということはめちゃ良いこと。この単年度会計というのが親の仇みたいなルールでして、政策って、単年度で成果出たりするものばかりじゃないんですよね。3年かけて成果出す事業なんて腐るほどあるのに、年度ごとに成果求められて、あんまり成果出てないから財務省に文句言われて切られました、みたいな政策が死屍累々。ほんと、単年度会計見直した方が良いと思います。
「待機児童の減少を目指します」ってあんた、既に待機児童問題は、解決に向かってて、ポスト待機児童問題と言われ始めてるんですね。このままだと保育園は欠員しまくりでどんどん潰れていって、子どものセーフティネットはスカスカになっちゃうわけで、今待機児童減少の話掲げてどうするの!?と。
そうじゃなくって、これまで保育園から排除されていた専業主婦世帯とか週2定期的に預けたいとかっていうフリーランスや在宅ワーカー家庭に門戸を広げていこうよ、と。そう、つまり「共働きのための保育園」から「みんなの保育園」へと保育園の存在そのものを変えていくことこそ必要なんです。
あと、「病児保育の拡充」は良いけど、施設型にこだわり過ぎていませんか?居宅訪問型の病児保育の補助確保をしっかりと行ってほしいです。
そして、「ベビーシッターや家政士を利用しやすい経済支援」や、「学童保育の受け皿の拡充」は、是非やっていただきたい。しかし、いま、医療的ケア児の放課後の預け先確保が難しくて、医療的ケア児の保護者が就労継続困難になっているので、この点も解決してほしいです。
あと、「望まない孤独・孤立」の対策も良いし、「NPOへの支援」に言及している点はありがたいです。が、国が孤独・孤立対策事業に予算を付けただけでは、本当に困っている人に支援が届かない問題があるんです。なぜなら、事業の実施主体である自治体がキャパ不足で事業をなかなか導入できないから。フローレンスで行っている「こども宅食事業」も、せっかく国の予算が付いたのに、自治体で導入が進まなくてなかなか一気に全国に広まらないんです。
(記事参照⇒こども宅食予算事業継続と政府備蓄米提供が決定)
孤独・孤立で苦しんでいる人を本気で助けたいんだったら、国からNPO等の民間団体を直接補助するスキームが絶対に必要なので、これについても実現してほしいです。
DV等の問題を抱える女性の支援強化をしてくれるのはうれしい。DV被害に苦しむ女性が緊急一時的に避難する「民間シェルター」への経済支援をお願いしたいです。いまフローレンスで運営しているシェルターは、全て寄付によって運営されていて国からの補助はありません。
そして、性犯罪から子どもたちを守るために、フローレンスが提言しつづけてきた「日本版DBS制度」も入っていて嬉しい!
「いじめ、不登校なども問題に、真正面から取り組める教育現場を実現」って、具体的にどんなものをイメージしてるのかわからない。
不登校問題については、オルタナティブスクールが重要な役割を担っていますが、運営のための補助金がもらえないから、財政的に不安定なところが多いです。オルタナティブスクールに対して補助金が出るよう、教育機会確保法を改正していただきたいです。
「こどもまんなか」っていうフレーズは良い!!基本法の制定についても言及してくれている。でも、「こどもまんなか支援事業」って具体的に何?そして、なんと、「こども庁」っていう名称がどこにも入っていないじゃないかっ!!
総じて全体的に踏み込みが甘い印象。困っている子育て家庭を支援するために、そして未来を担う子どもたちのために、今政府としてやるべきことを民間団体とも連携しながら本気で考えていただきたい。そのためには、「こども庁」の議論はマスト!
2.立憲民主党 政策集2021
こども政策については、自民党よりもより具体的に明記されている印象。
まず、「子どもの権利の保障を基本理念」として、「子ども総合基本法の成立」、「子育て支援予算の拡充」、そして「こども省の設置」にも言及がある点はGOOD!!
そして、自民党と同様に、「日本版DBS制度」もちゃんと言及してくれています!
とっても大事な「養育費立替払制度」の創設についても言及あり。日本のひとり親の貧困率は、OECD諸国の中で一番高いのですが、その原因の1つが養育費の未払い。
年間20万組超の夫婦が離婚する中、養育費を継続して受け取れている母子世帯は、わずか24.3%※1。
韓国をはじめ、諸外国では、養育費が支払われなかった場合、国が立替払いをした上で、支払いをしなかった親に対して取り立てを行っています。日本でもこの養育費立替払制度を導入すべし!
予期せぬ妊娠の問題について、緊急避妊薬の処方箋なしでの薬局購入に言及しているのは良いですね。虐待死の4割が0歳児なのですが、その理由の多くが「予期せぬ妊娠」。「予期せぬ妊娠」を防ぐことが、虐待死の予防になります。
いざというとき緊急避妊薬を飲みたくても、実際、病院に行くのはハードルが高い。地方だと、病院に行ったら知り合いに会ってしまうのも心配。。。そんなとき、薬局で緊急避妊薬を購入できたら、とても助かります。
厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」でも議論されていますが、是非実現に向けて動いてほしいです!
「障がい児や医療的ケア児の保育」や「インクルーシブ教育」にも言及してくれています。医療的ケア児の放課後の預け先が足りていないと上で書きましたが、保育所も然り。保育所での医療的ケア児の受入れは一部自治体で行われているものの、まだまだこれからという状況。保育所も学校も学童も、医療的ケア児の受入れ先が少なすぎて、保護者がフルタイムで働くことが困難です。
医療的ケア児の保護者がフルタイムで働くことができるよう、医療的ケア児の保育所受入れは積極的に進めてほしいです。
この、地域の「誰が発見しても子どもたちを見守りサポートする」っていう考え方、とても重要ですよね。
ここで課題なのは、地域で情報共有ができていなくて、子育て家庭に迅速に必要な支援ができていないこと。例えば、保育所で虐待リスクに気づいても、それが地域のNPOや児童館等に共有されていなくて、リスクを見逃してしまうといったことが起きています。個人情報の問題があるのはわかるけど、何より大事なのは子どもの命。地域の関係者間でクラウドを活用した情報共有を行うなど、地域で子どもたちを見守るための体制作りが望まれます。
保護者の就業形態にかかわらず、全ての子どもたちが保育園を利用できるようにし、どこにも通えていない「無園児」を解消する、というのは非常に大事なポイント。
無園児は、3歳以上でも約5万人※2。北里大学医学部可知先生の研究によれば、3歳以降の未就園世帯は、低所得、多子、外国籍など社会経済的に不利な家庭や、発達や健康の問題(早産、先天性疾患)を抱えた子どもが多い傾向が明らかです。無園児は、高い虐待リスクが指摘されているのに、誰もそのリスクに気づくことができないのが問題です。
一方で、待機児童問題が解決されつつある現在、特に小規模保育園などで、定員割れの状態が出てきていて、経営が困難になりつつあります。なので、まずは小規模保育園で専業主婦世帯の子ども達の受入れを開始するなど、「全ての子ども達を保育園というセーフティネットで見守れる社会」に向けて前進していただきたいです!
その他、僕が長年取り組んできた「男性の育児参加」や「男性の育休取得促進」、そして、フローレンスとして力を入れている「多胎児支援」にも言及してくれていて嬉しい!
総じて子育て家庭のために重要な政策を網羅している公約になっています。
3.公明党 2021衆院選マニフェスト
公明党も、「子ども家庭庁」の創設、性犯罪者から子どもたちを守る「日本版DBS」、そして、医療的ケア児の保育園等での受入れに言及している点は良いです。
「子育て版ケアマネジャー」はグッドアイデア。介護とか障害福祉の分野ではケアマネって馴染みがありますが、児童福祉分野では聞いたことないですよね?
介護保険のケアマネの主な仕事は、要介護者1人1人に合った介護サービスの計画(ケアプラン)を作ること。
僕は、介護や障害福祉のように、困っている子育て家庭を支援するためのサービス制度を作るべきだと思っています。で、子育てケアマネが、家庭それぞれに合ったサービスアレンジ(食料支援・学習支援等を通じた見守り、相談支援等)をすれば良いと。
子育て家庭に必要な支援を届けるために、ここに書かれているようなデータベースの構築が重要です。全国の子育て家庭の状況(住民記録、生活保護、幼児保育・教育、行政等が行った支援内容等)をデータベースに記録し、国・自治体・関係機関が閲覧できるようにすることで、支援の必要な家庭に対し、積極的に支援を届けられるようになります。
僕らがずっと取り組んできた「こども宅食」による見守り体制強化についても入っていて嬉しい!
子どもの貧困の主犯格の1人である、「養育費の不払い」について、ちゃんと制度の「抜本的見直し」を入れているのが偉い。上(立憲)にも書いたとおり、韓国のような養育費立替払制度の導入がマストです。
総じて非常に完成度が高いが、あえて指摘するならば、子どもの権利を最優先にさせる子ども基本法に言及するなら、親権の在り方にも突っ込んでもらいたかった。日本で親権というと、親の権利性が前面に出てしまっているが、諸外国では、「保護者責任」等、名称を変更し、親の義務性を前面に出すようになっている。子どもの権利が最優先で、親の権利はそれよりは低く位置付けているんですよね。こうした動きは日本でも必要です!!
4.日本維新の会 維新八策2021
児童相談所の機能強化や特別養子縁組の促進、ベビーシッターの拡充、養育費の国の立替払い制度の創設など、非常に「分かってる感」のある、センスが光る公約ですね。
医療的ケア児対応型の保育園の増設とか、うちの障害児保育園ヘレンを意識してくれているんじゃないかと思わせる書き振りで、音喜多さん書いてるんじゃないかな、と思ったり。
ただ、本当にめちゃくちゃ勿体無いのが、維新が唯一掲げている「離婚後共同親権の推進」です。この一行で、「ああ、維新はやっぱり福祉現場のことを1ミリも分かってないマッチョな男子校政党だな」と感じざるを得ません。
なんで離婚後共同親権がそんなにダメなのかというのは、僕のこの記事をお読みください。
(記事参照⇒離婚後共同親権は、なぜダメなのか)
維新、これさえなければ良い線いってるんですが、ほんと台無しです。定食屋さん入って、そこそこ美味しそうな定食が出てきたと思ったら、店主のこだわりのくさやが真ん中にドンと置かれていて、その定食買うとくさやも食わないといけない、みたいな。
5.日本共産党 2021総選挙政策
障害児の保育で「保護者の就労を要件とせず、希望するすべての子が利用できるする」というのは、とてもいい。そして、児童虐待に対する施策に言及しているのも評価できる。「離婚後共同親権ではなく親権そのものの見直し」とちゃんと分かってるのが良い!
ただ、保育政策については相変わらずダメだめで、面積基準や人員配置基準を引き上げたら保育園の経営は成り立たなくなるので、その分補助金を大幅に上げないといけなくなります。それはセットじゃないと。
あと、「認可保育所より基準の低い小規模保育」などと、小規模保育をディスってますが、小規模保育は認可保育所の人員配置基準よりも、プラス1人保育士が多い人員配置ですから、本当に無知なんだな、と言わざるを得ません。
6.国民民主党 政策パンフレット
国民民主党の公約で他の党と一番違うのは、子供や教育政策の財源をしっかり明示化したことです。「教育国債」という形で。で、これ、僕良いと思うんですよ。だって教育や子育て支援って一番投資対効果の高い投資なので、国民から借金しても十分ペイできると思うんです。これ、ぜひ与党はパクってもらいたいな、と。
他の施策に関しては書き振りが乏しかったり具体的じゃなかったりしますが、まあ少数政党なので網羅的に長い政策集作らなくても、そこは良いかな、と。
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※1厚生労働省『全国ひとり親世帯等調査』(平成28年度)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11920000-Kodomokateikyoku/0000188168.pdf
※2:厚生労働省「地域における保育所・保育士等の在り方に関する検討会(第1回)」資料3 p.29https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000784219.pdf
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のnote 2021年10月30日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹noteをご覧ください。