COP26への「神」(大家)の視点

国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が来月1日から12日の日程でイギリスのグラスコーで開幕される。COP26では、「パリ協定」と「気候変動に関する国際連合枠組条約」の目標達成に向け、締結国が具体的な行動を推進させるために協議する。

COP26はネットゼロ(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を目指す(「気候変動に関する国際連合枠組条約」公式サイトから)

2015年のパリ協定では、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より低く保つとともに、1.5度に抑える努力を追求する」ことで関係国は合意、同時に気候変動対策に必要な対策と資金の確保で一致した。

COP26のアロック・シャルマ議長は、「地球の気温を制御する―気温上昇を1.5℃に抑える―には、科学的に見て、今世紀後半までに、私たちが生み出す炭素は大気中から除去される量よりも少なくなっていなくてはならない。これが『ネットゼロ(温室効果ガス排出量実質ゼロ)』を達成するということだ」(国連COP26関連文書)と、COP26の目標を明確に述べている。

COP26の課題については様々なメディアが報道しているが、忘れられている視点に気が付いた。美しい地球を創造した「神」の視点だ。こんなことを書けば、またか「?」と胡散臭い表情で冷笑されるかもしれないが、人間は地球を含む広大な宇宙を創造したわけではなく、地球という借家にひょっとしたら一時的に住まわしてもらっているだけの存在ではないか。地主のような大きな顔をして冷笑できる立場ではないはずだ。

考えてみてほしい。住まわしてもらっている人間がその家を汚したり、破壊すれば大家から「出て行ってくれないか」といわれるだろう。多分、人類は今、その大家ともいえる神から「家を整理してクリーンにするか、それが嫌ならば出て行ってほしい」と警告を受けているのではないか。

大家ともいえる神は、地球を含むあらゆる森羅万象を創造した後、自分の似姿で人間(男と女)を創造し、「生めよ、ふえよ地に満ちよ、全てのものを治めよ」(創世記)と3つの祝福を与えている。すなわち、神は人類に自身が創造した地球を含むすべての森羅万象に通じる鍵を手渡したのだ。人類はその鍵を保管し、森羅万象を管理する責任を受け持ったわけだ。神は人間に地球を含む森羅万象を愛を持って治めてほしいと願っていた。

その後の歴史を少し、振り返る。地球の温度が2度上昇したら海面の水位が上昇し、地球環境は大変になるといわれているが、4400年前(聖書のカレンダー)、神は人間を創造したことを後悔し、義人のノアの家庭8人と各動物のペアを箱舟に避難させてから、40日、40夜、大洪水を起こし、全てを滅ぼされたのだ。

「ノアの洪水」については、世界各地に「洪水神話」が残されているうえ、地層には大洪水が起きたことを証明する地層が発見されている。スウェーデンの環境保護活動家のグレタ・トゥーンベリさんが「このままでは大変だ」と叫び、世界の指導者に発破をかけているが、神は過去、一度、地球上のあらゆるものを滅ぼされたことがあるのだ。創世記によれば、「神が創造した人類は神の掟を破り、罪を地球上に拡散したから」だ。神は人類の最初の“グレート・リセット”を実行したわけだ。

「ノアの洪水」後、神は「私は2度と、人のゆえに・・・すべての生きたものを滅ぼさない」と約束し、その印として虹をみせたという。ただ、「ノアの洪水」以降、神の願いに反したならば、地球は滅ぼされてしまう、といった「終末思想」と「罪悪感」が人間のDNAに刻印されていったのだろう。

21世紀に戻る。地球温暖化の主因である従来の石炭や原油のエネルギー源からクリーン・エネルギーとして風力や太陽光の利用が進められ、自動車産業界は電気自動車とハイブリッド車の製造へと移行している。英国では2024年までに石炭火力発電から完全に脱却し、2030年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を終了する。人類はようやく環境保護の重要さに目覚め、緩やかだが動き出しているわけだ。

環境保護問題では、「経済成長」と「環境保護」との調和が大きなテーマとなる。経済成長を無視して環境保護を優先した場合、人類は石器時代の生活に戻らなければならなくなる。21世紀の人間にはそんな決意などできないから、どうしても「経済成長」と「環境保護」の調和が求められるわけだ。

脱炭素化、風力や太陽光エネルギーなど再生エネルギーの利用が叫びだされた。原子力エネルギーも二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンなエネルギーだ。再生可能エネルギーのさらなる展開を可能にし、持続可能な開発のためのパリ協定とアジェンダ2030の目標を達成しなければならない。

ここまでは地球という借家に住む人類の責任だろう。大家から「出ていけ」と言われる前に住んでいる借家をクリーンにしなければならない。問題は借家に住みながら「大家意識」の人間が少なくないことだ。あたかも、人類がこの地球を含む森羅万象を自ら創造したような振舞い方をする人間が少なくないのだ。COP26の目標である「ネットゼロ(温室効果ガス排出量実質ゼロ)」を達成するまえに、人類は「大家意識」からの脱皮が急務だ。表現を変えれば、地球という美しい星に住まわせてもらっている感謝の心に目覚めなければならないのだ。

グレタさんは政治家に対し厳しい言葉で批判するが、「怒り」ではなく「感謝の心」を呼びかけたらどうだろうか。借主として地球に住むことを許された感謝と、日々の糧を得られることへの感謝を訴えていったらどうか。怒りや罵倒はその動機がいかに良くても収穫は多くないものだ。

「ノアの洪水」後、神は「私は2度とこの地を滅ぼさない」と約束された。宇宙にはダーク・エネルギーが満ち溢れている。将来のエネルギー源は保証されているのだ。COP26は「ネット・ゼロ」に拘る前に、神と宇宙・人類の関係について再考する機会の場とし、人類の生き方の“第2のグレート・リセット”の会合としてほしい。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年10月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。