バージニア州知事選、共和党のヤンキン候補が接戦制す

中間選挙の前哨戦として注目されたバージニア州知事選で、共和党のヤンキン候補が接戦を制しました。得票率は50.7%、わずか2.1ポイントと薄氷の勝利です。

当選したヤンキン氏 Wikipediaより spawns/iStock

チャート:結果は以下の通り

(作成:My Big Apple NY)

画像:選挙区の結果は、共和党カラーの赤に染まる

(出所:Wikipedia

ヤンキン氏の勝因は、①トランプ前大統領の支持を受けつつ距離を置く戦略②経済・雇用、教育、治安維持・改善を選挙戦の目玉とする戦略―などが考えられます。②については、こちらこちらでご説明した通りですが、①につきましてはヤンキン氏がトランプ氏からのお墨付きを得ながら、選挙集会に招待しないなど徹底した無党派層への配慮が奏功したかたちです。バージニア州でのトランプ支持者40%程度ですから、無党派層へ訴求する上で悪手と判断したのでしょう。実際、CNNによる出口調査結果では無党派層の支持が54%と過半数にのぼり、ヤンキン陣営の戦略の正しさが証明されました。

筆者から見て、バージニア州知事選で共和党が勝利を受け今後を占うポイントは、以下の5つと考えます。

1)中間選挙でバイデン氏率いる民主党が下院を失うリスク浮上
・オバマ政権1年目の2009年に共和党候補者が勝利した翌年の中間選挙で民主党が大敗したように、2022年の中間選挙で共和党が多数派を奪回する可能性が高まる。

チャート:2010年の上下院、中間選挙結果

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チャート:直近の上下院議席数

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2)米国民におけるコロナ離れのサイン点灯
・接種率の高さと世論調査が示すように、バージニア州民の最大の関心事は新型コロナウイルスから経済や教育などへシフト。民主党のマコーリフ氏の敗因は、バイデン政権に合わせたコロナ対策への注力とみられる。これが全米のトレンドとなるか注意。

3)共和党、支持回復のカギは「経済・雇用、教育、治安回復」
・世論調査結果によれば、バージニア州民の最大の関心事は経済・雇用教育治安回復などが挙がり、共和党のヤンキン候補はここを捉え討論会でも支持者を拡大。

4)民主党内のプログレッシブVS中道派の対立は激化へ
・バージニア州知事選では3.5兆ドルの歳出案に反対した中道派のマコーリフ氏が敗北するなか、両プログレッシブが1.75兆ドルの歳出案をめぐり妥協を許さない立場に反転するか注意
・プログレッシブは市長選で歴史的な勝利を獲得。マサチューセッツ州のボストン市長選では、プログレッシブの代表格、エリザベス・ウォーレン上院議員一派で台湾系アメリカ人のミシェル・ウー氏が36歳の若さで、同市長として女性かつ非白人で初の当選を果たす。ペンシルベニア州も、デビッド・ゲイニー氏が黒人として初めてペンシルベニア州ピッツバーグ市長に選出
・ただし、民主党にとってプログレッシブへの軸足シフトに黄信号が点灯。ニュージャージー州知事選では、現職でプログレッシブ寄りな選挙公約を打ち出した民主党フィル・マーフィー知事と、共和党のジャック・チャッタレリ候補が予想外の大接戦に。NY市長選では治安回復を目指した中道派のエリック・アダムス氏が勝利。2019年に警官による黒人男性殺害事件が発生したミネアポリス州では、警察解体の住民投票も否決された。

5)バイデン政権、中間選挙前にリベラル寄りの政策推進か
・バイデン大統領は、ブルーウェーブを維持する中間選挙前にリベラル寄りの選挙公約成立に軸足を移す可能性あり。バイデン氏の選挙公約や民主党の政策綱領、USTRの通商報告書に上がった国境炭素税と、米中追加関税措置に注目。国境炭素税が米中追加関税と一部入れ替えられる場合も。イエレン財務長官は11月2日付けのロイターとのインタビューで、「互恵的な」米中追加関税引き下げがインフレ圧力緩和に寄与と言及済み。10月末のG20でも、国境炭素税を推進するEUに対し、航空機紛争停戦に続き鉄鋼・アルミ追加関税措置の一部免除など、譲歩した点にも留意したい。

――選挙明けの11月3日、バイデン大統領が外遊から帰国します。1.75兆ドルの歳出案をめぐる民主党内の対立を始め、党内での結束力をいかに回復するのか。バイデン氏は大統領選後の勝利演説で「米国を癒す」と語りかけましたが、今は民主党を癒し、導く必要に迫られています。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年11月4日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。