タブレットを配って終わりでは絶対ダメ。著者のメッセージが力強い。
2018年より経済産業省サービス政策課長・教育産業室長として「未来の教室」プロジェクトを推進し、GIGAスクール構想で配備する1人1台端末とEdTechの活用による教育DX(デジタルトランスフォーメーション)政策をデジタル庁・文部科学省・総務省などとの協業で推進してきた浅野大介さんの新刊『教育DXで「未来の教室」をつくろう』(2021年11月 学陽書房)を早速読んでみた。
思い出したのは、長らく文部科学省大臣補佐官を務められた鈴木寛さんの『教育を変えていかなければ、失業者を量産することになるかもしれない』というメッセージや、埼玉県戸田市の戸ヶ崎教育長の、『目の前にいる子どもたちがこれからどんな社会に出ていくのかを教師が知ろうとしないのは、きわめて不誠実』という信念。
デジタルが当たり前になる時代に、どう対応していくのか。本書は、当事者がその最前線をまとめている。
SDGsでは「誰一人取り残さない」、学習指導要領では「個別最適化」ということが繰り返されるが、それを学校現場に当てはめると、特に積み重ねの要素が強く、習熟度に大きな差がある数学では、教師による一斉授業は限界ということを認めた上で、人工知能を活用したアプリなどで、生徒一人一人が習熟度に応じた学びと振り返りが求められる。
それは生徒一人一人が孤立して学ぶということでは決してない。麹町中学校などでは、先生がサポートし、生徒同士が教え合う環境が構築されていることが本書でも丁寧に伝えられている。
反復学習などはデジタルをうまく活用し、先生は、協働など人間にしかできないことにより注力できるようになる。変化する社会の動きを教室の中にどんどん入れ、どのような力を育てるかを学年や教科を横断して議論することがますます大切になる。
来週8日は、朝会・地域力おっはークラブで浅野課長にお話しいただきます。皆様お誘いあわせの上ぜひご参加ください。
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編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2021年11月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。