習近平氏は何を目指すか、6中全会開幕

中国と習近平氏が新たなる未来を創るために過去の見直しをする「歴史決議」を採択するのではないか、と冒頭から述べると「お前は何を書いているのかさっぱりわからん」と言われそうです。では言い換えて、「中国は次の時代の中国のあり方の根拠を設定する重要な会議を8日から開始している」としたらどうでしょうか?その会議の名前が6中全会、正式には第19期中央委員会第6回全体会議であります。

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まず、習近平氏が何をしようとしているのか、私の理解している範囲でわかりやすく説明をします。

習氏は最高指導者として既に2期務めており、本来であれば年齢的に党規約からは来年の党大会で満了なのですが、その約束事を覆し、独裁的で終身的な地位の確保をしたいと考えています。(プーチン大統領と似ています。)習氏はまだ68歳ですからやる気があればあと15年から20年ぐらいはトップに君臨することは物理的に可能です。

その為に習氏は党内の敵を排除し、自分のライバルを徹底的に潰してきました。その周到な準備のもとに来年開催される5年に一度の党大会にて自身の3期目を決めるのです。ただ、それには単にライバル潰しだけではなく、習氏に継続してもらう為の「箔」をつける必要があります。その「箔」が「歴史決議」というものです。これにより党大会で「なるほど、習氏はご立派だ。誰が見ても習氏以外になるべき人はいない」というそれこそ挙国一致体制を作り上げるための工作が必要なのです。

今般開催されている6中全会は5年に一度の党大会の間に7回開催される中央委員会全体会議の6回目であります。最終の7回目は党大会の準備会議になるので実質的方針を決めるのは今回が最後で重要なのです。

では「歴史決議」です。この場合の歴史とはあくまでも中国共産党の歴史であります。その100年の歴史は決してスムーズではなく、激変期を経ています。その荒波をくぐった歴史的人物とは過去、毛沢東と鄧小平の二人しかいません。そして両者ともその当時、共産党の歩んできた道を振り返り、過去を総括するのです。その総括は1945年の毛沢東による「若干の歴史問題に関する決議」及び1981年の鄧小平による「建国以来の党の若干の歴史問題に関する決議」です。両方に共通する「若干の歴史問題」とは極端な話、過去の歴史の一部をなかったこと、見なかったことにして共産党は極めてまっすぐに誰からも後ろ指をさされることなく前に向かっているということを示すのです。

安っぽく言えば教祖様の歴史修正発言による過去の書き換えといってもよいでしょう。

これを今回、習近平氏が6中全会で行うのか、行うとすればどういう「若干の歴史問題」を取り上げ、どう歴史修正するのかが注目されるのです。この内容は残念ながら閉会後にならないと一切明かされないことになっています。漏れ伝わることもないでしょう。それぐらい厳重警戒の中での会議になります。

さて、中国共産党および習近平氏を正当化するための若干の歴史修正をどこまで遡るかですが、個人的には鄧小平時代まで戻ることはないとみています。むしろ、今世紀に入り、中国が経済成長をする中で世界に影響力を与える一方、国内の貧富の差、海外における無謀な借款によるインフラ整備、民族問題、中華圏の拡大志向、外交上の摩擦を抱える中、自己の正当化と「共同富裕」思想に基づくフラットな社会の建国を目指すものと思っています。

それは「中国のマネーによる、中国の技術に基づいた、中国繁栄のための若干の歴史修正」であり、共産党的原理思想に一歩近づけるのではないかと想像しています。一言でいえばとても厳格な共産国家成立を目指すのだろうと思います。イメージとしてはイランのような厳格さでしょうか。

習近平氏は自己を崇高なところまで高めようとしているため、妥協を許さない可能性があり、西側諸国との摩擦が増える公算もあります。また中国のやり方は自分たちのやりたい放題を突き進み、諸外国がクレームすると国内問題に干渉するな、とし、経済制裁などを行うと全く同じレベルの復讐を行うというパタンを繰り返しています。彼らのポジションは「自分からは手を出していない。外国が先に行動を起こしたからそのお返しをするだけだ」という一貫した姿勢を持っています。

私は今後、ますますこの国とのやり取りは困難になるとみています。とはいえ、中国国内も外交も一筋縄にはならないとみており、私は「若干の歴史上の問題」が生じることはあり得ると思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年11月9日の記事より転載させていただきました。