「ビジネス雑談力」は本当に必要なスキルなのか?

黒坂 岳央

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

書店のビジネス書コーナーに行く度に「一流の人は雑談力が高い」「ビジネスマンは相手の心の距離を詰める雑談力を持て」といった書籍を見ることがある。パラパラ中身を見てみると、「確かに!」と納得のいく話もある。

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だが、昨今あまりにも広がる「雑談力スキル」についてはそもそもの話、「必要か?」という疑問を持つことがある。本稿はなんの統計データにも裏打ちされていない、完全に個人的な独断と偏見で構成されている。そのため、考えが合わないとリスクを内包していることをお断りしておく。

ビジネスでの雑談の必要性

個人的には雑談は嫌いではない。話題によっては「もっと詳しく話を聞きたいので、よければ今度飲みに行きませんか?」みたいな展開になるのは楽しいし、それで相手との心理的距離がぐっと縮まる経験もしたことがある。

だが、そもそもの話、相手のビジネスの提案を聞く「前」の段階や、会議の場で冒頭に振られる雑談はその必要性に疑問を感じることは少なくない。過去に実際にあった話で、自社に飛び込み営業が来て「Google検索結果上位表示したくないですか?」「より低コストの税理士にしませんか?」という提案が来たことがある。その際、本題に入る前に最近の天気の話や、趣味の話などを振られ、10分間ほど(で、本題はなにか?)とやきもきしながら相手の雑談に耐えることがあった。我慢して雑談に付き合い、本題に入った瞬間に「あ、間に合っております」で終わってしまったことがあった。

新規営業マンからの提案の9割以上は、必要性を感じないことがほとんどである。少し本題とズレるが、優れたビジネスは必死に飛び込み営業をしなくても、お客さんの方から自発的に探し求められるものだからだ。これが肌感覚で分かっているために、ビジネス営業の場で、雑談から話がスタートしてしまうと、どうしても(この話は最後まで聞く必要があるのか?)ということが気になってしまう。

「雑談の中身が優れている」「話し方が上手」という以前に、ビジネスの提案内容を磨いてほしいと思ってしまうことは少なくない。

雑談のベストタイミングは契約後

お断りしておくと筆者は「雑談は要らない」と言っているのではない。問題は振るタイミングであり、ビジネスの場における雑談のベストタイミングは、契約が済んだ後だと感じるのだ。

経営者やフリーランスといった立場は、ムダな時間を過ごすことをとにかく嫌う傾向がある。ムダなビジネス提案の話を聞いて時間を過ごす代わりに、別の生産的なビジネスに時間を使えるトレードオフを常に意識しているからだ。一方で、会社員の営業マンの場合は月収で稼いでいることが多いために、営業成績がノルマを達成しているなら多少の時間をムダに使っても、経営者の立場ほどは痛手には感じないのではないだろうか(全員がそうだとは言わないが)。

そのため、本題に入る前に雑談をされてしまうと、「この時間はムダになるのでは?」という懸念材料が払拭されないままに時間が過ぎてしまう。過去、振り返ってみるとビジネス雑談が盛り上がったのは、契約終了後や、役務提供が完了した後だったと記憶している。特に良い仕事をしてくれた後なら、楽しく雑談をして相手との信頼関係を深めたくなるものだ。

雑談を嫌うのは「冷たい」から?

こうした持論の展開をすると、一部の人からは「軽い雑談くらい応じないなんて、人間として冷たいのでは?」という反応もありそうだ。確かに世の中には優しい人はいて、生産性のない時間に終わる可能性があっても、真摯に雑談に応じる人がいるのも事実である、たしかにそうした人と比べると「冷たい」といえるかもしれない。

だが、相手の営業マンの立場を考えても、相手が求めていない雑談で時間をムダにしてはいけないと思ってしまうのだ。自分が成績をあげたい営業マンの立場なら、成約につながるかどうかわからない段階で雑談に時間をムダに使わず、とにかく訪問営業の数をこなしてニーズのありそうな相手にアタックできる数を稼ぎたいと思う。相手が優しく雑談に応じてくれても、成約しなければ営業成績にはならず、その時間は生産性があるとは言えない。その逆に「雑談は要らないので、結論から話してください」と冷たさを覚えるような相手でも、最終的に成約してくれるなら、営業マンとしてのメリットがあるはずだ。

営業の本質はお客さんの求める商品、サービスを求める相手にリーチさせることにある。雑談は潜在顧客ではなく、顧客として顕在化した相手と信頼関係を深めるために発揮するべきスキルではないだろうか。

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