ロックダウンは感染拡大を先送りするだけなのか

森田 洋之

日本では新型コロナの感染収束傾向が続いている。なんでこうなったか感染症専門の先生たちでも意見が分かれているようだが…とにかくおめでたいことに変わりはない。

ただ、世界各国はまた事情が違うようだ。

y-studio/iStock

オランダは新型コロナの急激な感染拡大をうけて、とうとう再度のロックダウンに踏み切った。

オランダ、ロックダウンを一部再導入 コロナ感染者急増:時事ドットコム

時事ドットコム

この記事にはこうある。

オランダのルッテ首相は12日、新型コロナウイルス感染封じ込めのため、部分的なロックダウン(都市封鎖)を13日から少なくとも3週間実施すると発表した。1日当たりの新規感染者数が1万6000人を超え、過去最高水準に達していることを受け、規制復活に踏み切る。

一国の首相として苦渋の決断だったようだ。

オランダだけでなく、欧州では一部の国々で感染が拡大している。

たとえばドイツやデンマーク。ドイツは新規感染者数が過去最高に。デンマークでも10月はじめ辺りから感染者が急増している。

デンマークと言えば、気になるのがお隣のスウェーデンだ。

スウェーデンは「ロックダウンしなかった国」として有名になった。一部報道では、

「ノーガード戦法が失敗し感染拡大したスウェーデン」

とそれと対象的な隣国

「ロックダウンで感染を抑え込んだデンマーク」

という論調で語られがちだったが、さて、現在はどうなのか?

それがこちら。

感染拡大のデンマークを横目に、現在スウェーデンは感染拡大が見られていないようだ。

「厳格な行動規制・感染対策で感染を抑え込んでも、それは問題を先送りにするだけで結局ウイルス感染は拡大してしまう」

この2国の状況を見るとそんなふうにも思えてくる。

ちなみに「お隣」と言えば、日本のお隣。韓国。

韓国はこれまで「午後6時以降の私的な会合は2人に制限」「スポーツイベントはすべて無観客」など、日本以上に厳しい行動規制を国民に課してきた。

その結果、日本が第4波・第5波と大きな感染拡大を経験しているときも韓国は比較的感染者数を少なく抑え込んできた。

しかし、いま日本が急速に感染収束を迎えている中、それでも韓国では緩やかな感染拡大が続いているのだ。

こう見ると、日本と韓国という隣国同士でも上記の

「厳格な行動規制・感染対策で感染を抑え込んでも、それは問題を先送りにするだけで結局ウイルス感染は拡大してしまう」

という傾向は当てはまりそうだ。

そんなことが背景にあるのか、韓国では感染拡大の傾向にも関わらず規制緩和の方向に動いている。

韓国でウィズコロナ施策が始動、3段階で日常回復へ。入国規制緩和で海外旅行も需要増 | やまとごころ.jp

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韓国では、夏から9月にかけて新型コロナウイルスの新規感染者が増加し、9月末にピークを迎えた。その後減少傾向に転じたが、再び感染が拡大。10月末には2000人を超える日が続き、10月31日には2061人の新規感染者が確認さ…

まあ、韓国でこのまま感染拡大が続けば、また行動規制強化の流れに変わる可能性は高いとは思うが。

もちろん行動規制・感染対策は、経済の停滞・教育現場の混乱・自殺の増加など大きな副作用をもつものだから、安易に推進されるべきものではない。

その意味では、日本の感染対策はそこそこいい感じでゆるく、まあ医療崩壊など一時的に騒がれたがそれは医療システムの問題、結局はなんとなくいい感じに集団免疫を達成してしまったのかもしれない。

集団免疫という意味では、沖縄の先生がこんな論文を書かれている。

沖縄で集団免疫の可能性「無症状、感染者の16倍」 友知沖国大教授ら分析

沖縄で集団免疫の可能性「無症状、感染者の16倍」 友知沖国大教授ら分析
沖縄で集団免疫の可能性「無症状、感染者の16倍」 友知沖国大教授ら分析 - 琉球新報デジタル

「第5波を経て沖縄では計算上は免疫化率が8割を超え、感染が広がりにくくなる「集団免疫」が達成されている可能性がある」

とのこと。

もし沖縄がそうなら、日本全体で感染が急速に収束しているのも、「集団免疫達成」が原因かもしれない。

ちなみに、ワクチンの効果も言われているが、上記ドイツ・デンマーク・韓国もワクチン接種率はとても高い状況なので、ワクチンだけでは説明がつかないところだろう。

もちろん、冬の季節を迎えるこれからの季節がどうなるかはわからない。行動規制のゆるさがもたらした集団免疫?なのか、そのへんもまだよくわからない。

とはいえ、集団免疫を証明するのは現代の科学・医学では難しいようで、抗体を測定すればいいと言うものでもないようだ。抗体産生せずともウイルスを排除出来る自然免疫などもあるからだ。

理由はとにかく、現状の日本が世界でも珍しいくらい「いい感じ」なのは疑いないところであり、このまま冬を越せることを切に願うばかりである。