11月1日に昨年度の東京都の給与の実態が明らかにされた。
東京都の広報「広報東京都11月」を見ると、公務員の給与の実態を垣間見ることができる。なんとなくなにを隠したいのかも見えてくるのだ。まず、紙とWeb版で情報量に差がある。Web版は残るので詳細を載せたくないのだろう。
ちなみに、給料と給与のちがいはご存じだろうか。
「給料」とは、企業から支払われる金額から、残業代や各種手当などを引いたもの。 つまり正規の勤務時間に対する報酬=「基本給」のことを指します。 残業代や、福利厚生による手当が付いている方の場合、給料日に支払われるお金は「給与」、そのうちの基本給のことだけを「給料」と言うのです。(転職サイトtypeの説明)
つまり、給料<<給与 となる。
広報東京都はこの定義をみごとに使い分けている。
まず、一般行政職の平均給料月額は315,489円と、41.9歳ならちょっと安いかなあと思える。けれども、これに残業代や20%程度の地域手当、特殊勤務手当などが加わってくる。特殊勤務がどれだけ特殊なのかは書いていないが、4割の職員がこれに該当するそうだ。
一方、同じく一般行政職の平均給与月額を見ると、463,399円となっている。
なんとかして給料でアピールしたいように見える
その次に、職員の経験年数と学歴別平均月給月額の図には、給料で記載されている。
大卒10年目で276,143円、20年目で369,216円となっている。あくまで給料だ。
初任給も給料で紹介されていて、大卒は187,000円だそうだ。これではちょっとかわいそうな気になってしまう。
ただし、これは給料であり、どうにかして額を小さく見せようと担当者が苦慮している姿が想像できる。
ボーナスは4.45ヶ月
昨年度の東京都のボーナスは4.45ヶ月と、人事院勧告や国家公務員より水準が高くなっている。(一昨年は4.65ヶ月で、コロナの影響で下がった。)
ボーナスは、もちろん手当も含んだ給与から算出されている。
463,399×16.45ヶ月=762万円がだいたいの平均年収と推測される。この計算はいい加減なのだが、実際の給与明細と源泉徴収票を突き合わせて確認したところ、近似値になった。ただし近年はボーナスの査定分も大きくなってきているので、同年齢でも人によって差があると思われる。
また、人事院のHPでも年齢別モデル給与は公開されている。それによると、35歳課長代理で624万円、45歳課長1023万円、50歳部長1303万円だそうだ。役人人生は後半からもなかなかの上げ幅である。
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762万円は民間企業でいうと、IHIに匹敵するという。
人事部人事課長だった澤章氏によると、東京都の職員の人とたちは自分たちはまごうことなきエリートだと思っていて、まだまだ給料は少ないと思っているそうだ。
口には出さないが、職員の多くは、自分たちが都庁という名の大企業に勤めていると内心は自負している。そして、その割に給与レベルが低い(大学の同級生仲間と比べて高くない)と思っている節がある。
特別区の職員からすると、羨ましい水準なのだが。また、「令和2年国勢調査」によると、東京都の会社員の平均年収は47都道府県でぶっちぎりの1位で、約595万円である。
人事給与制度改革をアピール
一方、給与決定の仕組みは
人事委員会は毎年、都内の民間企業(企業規模50人以上、かつ事業所規模50人以上の事業所)の給与の実態を調査して、都の職員の給与について勧告を行っています。(中略)このため、都職員の給与決定の仕組みは、民間企業の給与水準を適正に反映するものとなっています。
ちなみに、事業所規模50人以上の事業所は、10,910事業所から1,228事業所を無作為抽出したとのことだ。東京都内の事業所数は約620,000事業所ある。従業員数と給与は比例する傾向が強いので、62万事業所の頂点の1万事業所から抽出しておいて、「民間企業の給与水準を適正に反映」と言い切ってしまうのはなかなかの思い切りのよさだろう。
また、これまで行ってきた職責・能力・業績を重視する人事給与制度の見直しによって、平成11年度から令和2年度で2,834億円、15.4%の人件費削減を達成したと誇っているが、業務委託などの外注費は含めていないそうだ。
公務員になるなら都庁?
このように、東京都の公務員は給与だけ見るとなかなかの好待遇だが、内情を見ると小池都政でけっこうたいへんな様子だ。みなさんはどうお思いになるだろうか。
東京都はせっかく石原都知事以来、堅実に貯めてきた財政調整基金も、19年度の1兆円ちかくのピークから一気に21億円へと激減し底をついてしまったようだ。
広報からだけでも、いろいろなことがわかってくる。あなたが広報でご自身の自治体を知ることから、ほんとうの地方自治始まが始まるかもしれないのだ。
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竹田 実
元特別区(東京 23 区)職員