ベネズエラ地方選挙:支持率15%マドゥロ大統領の支持候補者が勝利した背景とは

日曜日、カラカスの投票所近くの壁画の前を通る2人の市民。DPA VÍA EUROPA PRESS (EUROPA PRESS)
エル・パイス紙より

世界で原油の埋蔵量が最も多い国ベネズエラは20年余り続くボリバル社会主義革命で国家経済は崩壊。GDPはラテンアメリカで最も貧しい国とされているハイチのレベルになってしまった。その上、物資は不足し、ガソリンでさえ輸入に頼らざるを得なくなっている。それも制裁と資金不足で十分に輸入できないことから、ガソリンスタンドで車の長蛇の列ができるのは日常茶飯事。家庭用のガスも不足し、薪が燃料として家庭で使用されるようになっている。また食料品や医薬品などは完全に欠乏している。

マドゥロの支持する州知事の大勝利

そのような中で、政権にしがみつくマドゥロ大統領は国際的圧力もあって政権の継続をかけて11月21日、地方選挙を断行した。その結果は23州での知事選では20州を制覇。野党は僅かに3州で勝利しただけであった。2017年の19州の知事選で勝利したのとほぼ同じ結果となった。(11月22日付「ABC」から引用)。

即ち、この4年間に野党は勝利するために何もしていないことになる。野党の2つの大きなグループの間で一丸となって団決することはなく、寧ろ分裂した状態で選挙に臨んだからよい結果は得られなかった。

70%の国民は政権の交代を望んでいる。マドゥロ大統領への支持率も15%しかない。ところが、これまで暫定大統領として世界50ヶ国以上から支持されたグアイドー氏はカリスマ性に欠け、この4年間で僅か16%の支持しか有権者から集めれないでいる。(11月22日付「エル・パイス」から引用)。

60%の有権者が投票を棄権した

今回の投票の有権者の数は2116万人。ところが、実際に投票したのは僅か815万人。即ち、およそ60%の有権者が棄権したことになる。10人いる有権者の中で投票したのは4人だけという割合になる。

なぜ投票者が少なかったのかと言えば野党に団結が欠け、投票しても意味がないと考えた有権者が多くいたからだとされている。(上述のABCから引用)。

一方のマドゥロ大統領を支持する親派が有権者に投票するように働き掛けて来た。しかも、投票しないのであれば今後の政府からの食糧支援は受け取れなくなるという圧力をかけ続けて来たということ。それが双方の票差となったのである。

このマドゥロ大統領の親派による事前の活動は今回投票の監視に派遣された300人の監視員にはわからないことである。

これまで既に600万人が生活苦から国を脱出し、90%の住民は貧困にある。その要因はチャベス前大統領とマドゥロ大統領による社会主義革命の実践によるものである。にも拘らず、今回マドゥロ大統領が支持した候補者が選挙で大勝利するというのは実に奇妙な現象である。