バー司法長官は19年5月、16年の大統領選へのロシア関与に係る捜査の起源を検証し、トランプ陣営に関わる情報収集が「合法的かつ適切」であったかどうかを調べるため、コネチカット州のダーラム連邦検事を起用した。ダーラムは20年10月、政権を去る直前のバーに司法省特別顧問に任命され、今も調査を継続している。
ダーラムの連邦検事指名はトランプ政権下の18年だが、その承認は上院の全会一致だった。コネチカット選出の民主党ブルメンタール上院議員らからも、彼は「獰猛で公正な検察官」と評価された。そのダーラム特別顧問がこの11月4日、問題の核心に迫ると思われる人物を起訴した。
その人物の名はイゴール・ダンチェンコ。ダンチェンコは、ヒラリー・クリントンとも繋がりが深いリベラル左派で知られるシンクタンク「ブルッキングス研究所」に勤務していたロシア人アナリストで、ダーラムが起訴した3人目の人物だ(7日のFoxnews)。
1人目の起訴はFBIの弁護士ケビン・クリンスミスだった。彼は20年8月、トランプ陣営の元外交政策顧問カーター・ペイジに対する監視令状を求める取り組みの一環で、改竄したメールを同僚に送ったとして起訴され、虚偽記載の罪を認めた。
2人目は民主党全国委員会とヒラリー・クリントン陣営の代理人だった、これも弁護士のマイケル・サスマンだ。ダーラムはサスマンを、トランプとロシアの関係に関連する疑惑について、FBIのトップ弁護士との会合で虚偽の陳述をしたとして起訴した。サスマンは無罪を主張している。
この3人の素性からは、ロシアゲート事件と呼ばれた16年の大統領選挙へのロシアの干渉、すなわちロシアがトランプを勝利させるべく、サイバー攻撃やSNSでのプロパガンダ工作や選挙干渉を行ったとされた事件が、実は民主党とヒラリー陣営とFBIが組んだ捏造ではなかったか、との疑念が湧く。
起訴されたこの3人の関係者には、民主党とクリントン家の両方と縁浅からぬ2人の重要人物もいる。1人は元英国諜報員のクリストファー・スティールであり、もう1人は長年のクリントン家の信奉者チャールズ・ドーランJrだ。
スティールは、トランプが16年の大統領戦でロシアと共謀していたかどうかを調査する際にFBIが使用した所謂スティール文書を、ヒラリー陣営から資金を得て作成した人物。ダーラムのダンチェンコ起訴は、同文書の内容がダンチェンコの虚偽情報に基づくとの容疑によるものだ。
つまりダンチェンコは、トランプ陣営の補佐官カーター・ペイジに対する外国情報監視法違反の根拠となったスティール文書のサブソースという訳だ。民主党全国委員会とヒラリー陣営は同文書の作成に、サスマンが所属するパーキンス・コーイ法律事務所を通じて資金を提供した(4日のFoxnews)。
ドーランはクリントン家と数十年来の付き合いがあり、92年と96年にビルの大統領選陣営でバージニア州を仕切った見返りに、国務省の暇なポジションを得た人物で、ダンチェンコにスティール文書用の伝聞ゴシップを提供し、ロシア関与のデマ生成に貢献したとされる(前掲7日のFoxnews)。
ダンチェンコ起訴状によると、ドーランは06年から14年までロシア政府の上級コンサルタントや国有ガス大手ガスプロムの代理人として働き、ロシア高官とも幅広い接触を持っていた(5日のワシントンフリービーコン:WFB)。
ドーランがダンチェンコに伝えたデマの一つは、モスクワのリッツ・カールトンでのトランプと売春婦が関係したとされる例のセックステープに関するもの。17年1月にBuzzFeedがその全文を公開したことで注目を集め、論争の的となったが事実無根だった(11月4日のAXIOS)。
一方のダンチェンコは、ドーランから情報を受け取ったことはないと主張するも、FBIに繰り返し嘘をついた罪で起訴された。起訴状によると、ダーラムは反証する証拠を持っており、ダンチェンコがドーランの情報を隠蔽したことで、FBIの捜査に大きな損害を与えたと明らかにしている。
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そこでヒラリー・クリントン、彼女は15年4月に翌年の大統領選出馬を表明したものの、16年3月にウィキリークスがヒラリーの個人サーバーのメール3万余通を公開し、スキャンダルとなる。7月26日の民主党予備選挙では辛うじて大統領候補にはなったものの、この私用メール事件は打撃になった。
機密解除されたCIAの文書によると同じ16年7月26日、ヒラリーはトランプがロシアと共謀して大統領選を奪ったという虚偽の告発でトランプを中傷するという計画を承認している。動機はメールスキャンダルから目をそらすためで、ヒラリー自身が考えたものだったという(前掲7日のFoxnews)。
17日のFoxnewsは、17年にロシアの捜査が始まる数日前、オバマ大統領にヒラリーがロシアの共謀スキャンダルを捏造しようとしているとする情報が伝えられた、と報じている。つまり、民主党は党ぐるみでロシアゲートをでっち上げたということか。
ヒラリー陣営は、法律事務所を経由してスティール文書に資金を提供し、彼女の一派がその嘘をFBIと左派メディアに広め、両者がトランプを猛烈に追いかけるという、米国の政治史上最大の集団妄想を創出した。が、ダーラムはダンチェンコの起訴で真相の一端を明らかにした。
ダンチェンコ起訴状には、先にヒラリーに近いとした「ブルッキングス研究所」のシニアフェローのフィオナ・ヒルが、ダンチェンコをドーランとスティールに紹介したとある。ヒルはトランプ政権で国家安全保障会議のロシア専門家を務めていた人物だ(前掲WFB)。
起訴状は「PRエグゼクティブ1 」との仮名でドーランに言及し、ヒルの名は特定していない。が、この2人にもこの先ダーラムの追及が及び、メディアを賑わすかも知れぬ。
ダーラムの捜査結果を受けて、ワシントン・ポスト紙でさえ、ロシアとの共謀のストーリーが間違っていたことを認めたが、それにも拘らず下院情報委員会の民主党アダム・シフ委員長は、「スティール文書を宣伝したことは絶対に正しい」と未だに主張している(前掲17日のFoxnews)。
ここ最近のバイデンとハリスの支持率が急落している。アフガン撤退の強行やルーズな国境政策、警察弱体化策に伴う治安悪化や気候皇帝ケリーに引き摺られた化石燃料虐めによるガソリン高騰などの失政もあろう。
だが筆者は、左傾化に歯止めをかけたバージニア正副知事選での共和党勝利やこのダーラム捜査での陰謀露見を目の当たりにし、普通の米国民の多くが民主党の過度のリベラル化やその裏に見え隠れする悪意に嫌気が差したのではなかろうかと思いを持つ。