不思議なコロナ感染状況下で出現したオミクロン

岡本 裕明

日本のニュースからコロナの話題がしばし主題から消えていました。耳にタコができるほどコロナのニュースが飛び交い、これほど専門家が多いのか、と思わせるほどいろいろな方が様々な意見を述べてきました。ところが日本のコロナ感染に関しては予想をことごとく覆し、夏のオリンピックの頃を境に急減しました。確かに選手や関係者をバブル方式にして完全に隔離していたこともありますが、盛り上がる日本人が密になる可能性から感染急拡大への懸念が広がっていたのはご記憶に新しいところかと思います。

Ca-ssis/iStock

ではなぜ、日本がこれほどコロナを克服できたのか、理由は全くもって不明です。誰一人、明快な回答を示していません。肥満が少ない、酵素に効果があるなど日本独自の理由探しもありますが、理由はともあれ日本国内においては現段階でこの感染症が落ち着いているのは朗報です。

地球儀ベースでみると国や地域によりまちまちな状況で余計に判断に苦しむところです。例えばドイツは感染爆発期にありますし、韓国も連日最高の感染者数を更新しています。当初感染対策で優秀だとされていた国が悪化し、ダメ出しされた日本は他国がうらやむほどの状況にあります。

ドイツのワクチン接種率は世界レベルでは68%とさほど悪くありません。それに対して感染者累計は552万人。人口8300万人に対して6.6%で日々0.1%ポイントずつ増えている計算です。ちなみに日本は総人口に対する感染率は1.4%程度です。韓国の感染者累計は43万人で人口比では0.8%と実は優秀でワクチン接種率も日本とほぼ同等です。では何が問題なのか、と探せば韓国は初期にアストラゼネガのワクチンを多用し、現在高齢者のブレイクスルーになっているという点が唯一の違いかもしれません。寒いから部屋を閉め切るという理由も上がっていますが、日本の東北、北海道はそんな状況にありません。

世界レベルで見てもワクチン接種率が進まないアフリカでも今回のオミクロンの発生まではワクチン接種率を勘案すれば感染爆発が起きているようには見えない一方でベトナムやタイでは引き続き高いレベルにあります。

私は専門家でもないし、誰の話が正しいか判断する能力もありません。ただ、大所高所からみると私は2つの点に分けて考えるべきかと思っています。一つは感染拡大予防という観点でワクチンやブースター接種、マスク着用や節度を持った人との接触を心がけるといったことです。コロナ対策の飲み薬もさほど遠くないうちに出てくるようですが、これも対処療法に過ぎないという点をしっかり理解しておく必要があります。世の中の報道の9割はこの分野の話であります。

もう1つはウィルスの増殖や変異そのもので、今回南アフリカで発見されたオミクロンを含め、根から絶やすことが最大の処置になります。その中、一部で着目されているのが、1971年に発表された「エラーカタストロフ」という理論でウィルスは変異しすぎると自壊するというものです。

私はいつも思うことがあるのですが、生物は常に変態し続けている点です。しかしそれは非常に長い時間をかけて変わり続け、環境に適応するようになっています。ダーウィンの進化論です。ところがウィルスはスペイン風邪やSARSの時そうでしたが急激に感染拡大する過程において変異するスピードが速すぎ、結果としてウィルスそのものが消滅しました。

実は私はずいぶん前にDNA検査をしたことがあります。結論的には私はあるところに変異があります。別に珍しいわけではなく、病気になるわけでもありませんが、不都合もあります。残念ながらコピーエラーはどんな場合でも起きるのだということは私自身がそうなので一定の理解があります。仮にこのコピーエラーが短期間に何度も続けば多分、人間が存在できないでしょう。種の保存の法則から外れるからです。

ウィルスの変異も環境適応だと考えますが、同時に外敵がいなければ爆発的拡大を許すものの変異したウィルスそのものの安定性は別の話です。南アフリカのワクチン接種率は24%(2度終了)となれば間隙をぬったものであり、拡大の余地は確かにあるのですが、どれだけ感染力が強くても安定性がなければウィルスも生きていけないはずだと理解しています。

仮にこのストーリーにわずかな可能性でもあるならばコロナもいずれ克服できるのだと思っています。但し、その間に感染予防のプロセスを通じて我々自身も弱くなることも着目すべきかと思います。それは菌やウィルスに対する自己防御機能が落ちる点です。動物はなぜ外で暮らせるのかと考えれば環境適応があるからです。ホームレスはなぜ不衛生なものを食べても腹を壊さないのか、というのも同じです。つまり新たな環境にうまく適応するチカラが生まれるのです。

ところが今、あらゆるところで菌をふき取り、タッチしない時代になればカラダはそれに同化しやすくなるため、菌が極めて少ないことが当たり前だとカラダが覚え込むことになります。とすれば次に何か起きたとき、適応力が鈍っている可能性は否定できないでしょう。

日本人は極度の潔癖症ですのでこれが将来、あだにならないか、それが心配なところです。

我々はコロナ克服に喜ぶ前に自分自身の力を取り戻す、免疫力を上げること、これに重点を置く生活に戻るようにした方が良いと思います。コロナを恐れて閉鎖的な生活になるのがもっとも恐ろしいことです。その点ではワクチン打ってのびのびと生活できることは精神衛生的にも正しいのではないかと思っております。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年11月28日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。