殺人事件が絶えることのない中米の国

エルサルバドルでは11月に入ってから殺人事件がふたたび急増している。

殺人事件が絶えることのない中米の国

中米のエルサルバドルは今年9月にビットコインを世界初の法定通貨にした国。その国で犯罪が多発している。昨年この時期までに殺害された人の数は1152人で、結局、昨年は1322人が殺害された。それは10万人当たり20人が殺害されたことになるという。それでも2019年の2398人と比較すれば減少している。(11月11日付「インフォバエ」から引用)。

ブケレ大統領より以前の政権では一日に15人余りが殺害されるのが普通だったそうだ。

今年に入って1月1日から11月10日までに既に986人が殺害されている。ところが、今月9日(12人)、10日(22人)、11日(11人)の3日間に45人が殺害されるということに及んでブケレ大統領は警察と軍隊を市街に配置した。

これと似たような事態は昨年4月24日から29日の間でも起きている。この期間に80人が殺害された。(11月11日付「エル・サルバドル」から引用)。

エルサルバドルの犯罪を支配する3つの犯罪グループ

殺害された人の多くは一般の市民で、エルサルバドルの犯罪グループとは関係のない人たちだそうだ。勿論、同グループ間の縄張り争いで殺害されたメンバーもいるという。

エルサルバドルで犯罪グループは大きく分けて3つの組織がある。マル・サルバトゥルチャ(MS13)、バリオ18(B18レボルシオナリオウス)、バリオ18(B18スレーニョス)の3つだ。

人口750万人の国でおよそ10万人がこの3つのグループに属し、彼らに協力している市民がおよそ100万人いるというのだ。そして刑務所にはこの3つのグループのメンバー1万7000人が服役中とされている。

国が貧困で職場も不足している。この犯罪グループが誕生したのは米国。中米から米国に移民した家族のこどもが米国の差別社会で彼らの存在感を示すべく犯罪に走ったことが主因。彼らは少年時に国は内戦で、そこで残虐行為を目撃していた。それを今度は彼らが実践し始めたのである。それに手を焼いた米国は彼らを本国に送還。それが中米3か国(エルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラ)でこの犯罪グループが誕生した要因だ。特に、エルサルバドルで彼らは最も組織を拡大して行った。それがルーツにあって、貧しい家庭の若者は職場もなく容易にこの組織に入る下地が育っていたのである。

ブケレ大統領は服役中の彼らの待遇を改善することと引き換えに市街での犯罪を減らすということで合意していた。その結果、犯罪も減少していた。

ところが、彼らの方で新たに待遇改善の要求を出しているようだ。それを政府が受け入れるべく市街で殺害事件を増やして政府をゆすっているのである。

それが顕著に見られるようになったのは11月に入って最初の10日間で62人が殺害されたということである。これは2020年の同期間の25人が殺害されたのと比較して37人の急増である。

貧困から抜け出せず、職場もない。その一方で彼ら犯罪グループからの脅迫が絶えない一般市民。そのような事態から抜け出す為に国を出て北米により良い生活を夢見て移民しようとする人が今も絶えない。社会がこのような窮状にあることから家庭は放棄され、青少年は学校に通うのを止めて一般の大人と同じく北米に向かう現象は今も続いている。