政府は「オミクロン騒動の渦」を自作自演です。また、オミクロンを巡り再び始まった「にわか専門家」の百家争鳴も誰も答えがわからない中での逞しい「想像力の話」になっています。私は日本の専門家の話は今までポジショントークでさんざん振り回されたので聞かないことにして海外の専門家の意見を傾注することにしています。今のところ、流れは「重篤化しない」で、弱毒化の可能性と「もしかしたらこれで本当に最後かも」というニュアンスの見解に着目しています。年末ですから明るいニュースに託したいところです。
では今週のつぶやきをお送りします。
アメリカ11月雇用統計が意味するもの
本日発表されたアメリカ11月度雇用統計は事前予想の55万人増に対して21万人増に留まりました。一方、失業率は0.4%ポイント改善し4.2%、労働参加率は61.8%と小幅改善となりました。11月は感謝祭、クリスマスに向けたリテールと宅配の雇用が増えるのが通年の流れですのでこの雇用統計は明らかに「雇用の壁」にぶつかったと断言できます。つまり、アメリカの労働市場からあぶれた潜在労働者が相当数発生しており、その為に労働参加率が上昇するも、失業率も大きく改善したのです。理由はコロナワクチンの不接種者と用心深い人の労働市場からの離脱だとみています。企業が不接種者に厳しい対応をしていることもあり、就労を諦めた潜在労働者が統計に出てきたとみています。
今週、パウエルFRB議長が12月のFOMCで量的緩和の加速度的終了を検討する趣旨を述べ、株式市場にオミクロンとのダブルパンチを食らわせました。市場では「パウエル議長は『インフレは一時的』という間違った判断をした」と評しており、再任されたばかりなのに信任性がやや揺らいでいます。今起きているのは「異次元の雇用のミスマッチ」であり、ピザの配達員に時給2000円払っても人が集まらない問題なのです。企業は人集めのためにやむを得ず賃金を上げますが、アメリカにおける失業率4.2%は労働の質が低下し始める入口です。仮に利上げ機運が出ると企業側は賃金は上がるわ、金利は上がるわ、材料費は上がるわの3重苦となり大変な混乱をきたします。
私は本質的には金利を上げられる状態にはないとみています。つまりこれはサプライサイドの問題であってバイデン氏による政策的対策が求められるのです。利上げの効能は需要を低減させ、企業の過熱した投資熱を冷やすという点を考えれば違う手段なのは自明です。次のFOMCは12月14-15日ですが、そこでは量的緩和の終了計画にとどめるべきで利上げのフォワードガイダンスは無意味だと思います。パウエル議長は下手な発表をして市場を混乱させるべきではありません。
孫正義氏は運に見放されたのか?
私はソフトバンクグループの株価は真の実力からすると安いと思っています。しかし、孫氏を取り巻く環境はここに来てあまりにも不幸だらけでソフトバンクGは運気に見放されたのではないかとすら思い始めました。2日にはソフトバンクが主導してNYで上場したシンガポールの配車サービス「グラブ」社が初値13.06㌦を付けた後、ぐんぐん下げ初日は概ね20%安。金曜日も株価はブレており、期待外れになりました。同じころ、市場では中国の配車アプリDIDI(滴滴出行)が中国政府の意向によりNYの上場を取り消すことにしました。金曜日、同社の株は売られ続け22%安で引けています。
ソフトバンクの苦悩はこんなものではありません。投資先の半導体のアーム社をエヌビディア社に売却する予定でしたがアメリカ連邦取引委員会からクレームが付き、同委員会の承諾を取るのは困難、アメリカの経済ニュースには「ディールは終わった」と報じられています。つまり、アームの売却がとん挫しているのです。アーム社はしっかりした企業で資産価値もありますが、孫氏の目指す投資利益という観点では厳しい状況です。ただ、ソフトバンクにとって私が最大の危機だと思うのは同社の資産の根源であるアリババ社の株価が新安値を更新し、今日はついに一時10%以上下げ2017年3月以来の安値を付けたことにあります。
ソフトバンクは投資先を多様化させており、確かに以前ほど中国三昧という感じではないのですが、アリババ株の資産的裏付けが同社の「元気の源」であったことを考えれば孫氏に明らかに不運が付きまとっているとしか思えないのです。中国政府が中国企業を利用して金儲けしようとした輩というレッテルを張り、間接的な嫌がらせをしているとも取れなくはありません。一時は時価総額で日本を代表する会社となり、好む好まざるにかかわらず孫氏にスポットライトが当たっていたのですが、どう見ても今は暗い影しか見えません。
電動キックボードが乱す秩序
日本の警察が重い腰を上げ、ようやく電動キックボードの取り締まり強化を始めました。これに乗るには原則、免許とナンバープレートが必要ですが、このルールを知らない人も多く、暴走する自転車はなぜ取り締まらないと食って掛かる人など様々のようです。ここ、バンクーバーでも電動キックボードの運転マナーの悪さにはあきれ返ることがしばしば。当地の場合、社会実験として24年4月までその状況を見守るという取り決めの中、歩道と主要道路の走行禁止となっていますが、そんなのはお構いなしの様相です。特に交差点で車をすり抜けるようにして対角線方向への走行したり、歩行者とギリギリでかわすなど目に余ります。
その多くのケースは背中に宅配ケースを背負ったデリバリー系の方で早く注文品を届けようとする様子が見て取れます。日本の場合、混乱は電動モーターの規格次第でルールが違うという日本お得意の「ルール設定側の自己都合」が見て取れます。時速で見ると6キロまでは歩道通行車、15キロまでは小型低速車扱いで免許不要で自転車道の通行も可能、15キロ以上なら原付となり車道のみで免許もいります。同じキックボードも3段階分かれていること、スピードで管理するのか、出力で管理するのかも不明瞭です。
数日前、高校生が音楽を聴きながら午前5時半ごろ無灯火で自転車に乗ってお年寄りとぶつかりその方が車道側に転んだところ、走ってきたトラックにひかれて亡くなりました。交通マナーが悪いのか、都市設計がそもそも自動車と歩行者しか考えていないのか、歩道にはみ出して商品を並べる商店が悪いのか、自転車道をふさぐ駐車違反の車が悪いのか、音楽を聴き、スマホをしながら自転車や電動キックボードにのる人が悪いのか…と考えるとそもそもここまで放置をした行政も悪いし、マナーを学ばない人も悪く、弱者が犠牲になるのです。警察もタレントを一日署長にしているような場合ではないと思いますけどねぇ。
後記
バンクーバー版豪雨は短期間に3度の波がありましたがようやく終わりました、しかし、一部で再び山が崩れ唯一残されていたバンクーバー地区から東部に脱出できるルートが閉鎖されました。復旧を急いでいますが、最大の幹線道路の回復は早くても2月とされます。メートル単位で雪が降る豪雪地帯での高速道路の橋の上下線崩落はインフラの致命的弱点ともいえます。気象変動がもたらした仕業の一つなのでしょう。こんな混乱は今後世界で頻繁に起きるようになるのかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年12月4日の記事より転載させていただきました。