日本人を他の国民と比較する感覚は海外にある程度住んでみないと実感としてはわかりにくいものです。その中で日本人は弱気という点は海外の人が直接的に指摘することはありませんが、私から見るとかなり前から気がついていました。その理由はセロトニンという遺伝子物質にあるというのは数年前に何か読み物をしていて「なるほど」と思っていました。それがたまたま日経ビジネスの記事に改めて掲載されていたので今日、取り上げてみたいと思います。
セロトニンはノルアドレナリン、ドーパミンと並ぶ三大神経伝達物質で別名「幸せホルモン」と言います。日々の生活で増えたり減ったりします。特にストレスや疲れがたまると減る一方、お風呂に浸かる、日光浴をする、体操するなどすると増えるとされます。
もう少し科学的に見るとセロトニンは三つの型に分かれます。SS、SL、LLです。sはショート、Lはロングの略です。SSは不安に対して強く反応、LLは不安をうまく乗り越えられるタイプでSLがその中間となります。つまりLL型の人ほど楽観的で幸せホルモンがいっぱいだということになります。
この遺伝子は概ね人種によりある程度の特性があり、アフリカ人が最も多く幸せ、次いでアメリカ人、少ないのがアジア人です。そのアジア人でも日本人のSS型は格段に多く、世界で最も不安を抱える人種とされます。調査により若干の差異はありますが、日本人のSS型は人口の2/3、つまり66%前後となっています。ちなみにアメリカ人は13%程度とされます。一方、幸せホルモンいっぱいのLL型は日本人はわずか3%程度でアメリカ人は32%程度とされます。つまり、日本人は100人に3人、アメリカ人はその10倍の32人も幸せを満喫し前向き思考なのです。
私は科学で日本人の分類をすることは恐ろしいことだと思っています。なぜなら「そうなんだ」という決め事になるからです。私があまりこの話題をふらなかったのも倫理的な面も含め、気になっていたのです。
北米に来た時「ポジティブ シンキング」を体得しました。明るい未来志向です。この山に登ればきっと素晴らしい世界が見渡せる、と信じる社会に長くいて結局、本当に山登りまでするようになりました。ある程度自分は変えられると思ったのです。ただ、当然、それにはセロトニンがいっぱいの友人や仕事仲間に知らぬ間に励まされていたという気がします。「勇気をもらった」とよく言いますが、私は何度それを頂いたか数知れず。
一方の日本。不安ネタは無限にあります。「老後2000万円問題」はその典型。1973年原作の小松左京氏の「日本沈没」がいまだにドラマでリメークされるのです。震災の際の原発の不安も長くキャリーし続けたし、株価が下がって大損したと仕事が手につかない方も多いでしょう。
多くの専門家は日本人のセロトニンが少ないのは天災が多い国家に生まれたからではないか、と理由づけています。私は違うと思います。経典のある宗教がなく、社会不安になった時、拝む以外、すがる方法がなかったことではないか、と考えています。また社会制度が「ムラ社会」で共同体の生活が抑圧されたものであり、かつ、戦国時代までは百姓も戦(いくさ)に駆り出され、先の大戦でも赤紙が来るなど安堵できる時代が少なかったことはあると思います。
またセロトニンの男女比をみると男性の方がセロトニンを分泌する能力が5割以上も高いという研究結果もあります。女性の方が不安を抱えやすいのです。セロトニンが不足するとうつ病になりやすいのですが、日本の場合、男性のうつ病が約50万人に対して女性が78万人(厚労省、平成29年)となっています。
女性の方がセロトニンが少ない理由は女性ホルモンとの関係が指摘されますが、海外の女性と比べると必ずしもそれが決定的要因でもない気がします。私の分析は家父長制度と家庭における妻の役割です。多くの場合、収入面や判断面において夫に依存する構造になりがちだという点ではないかと思います。要は一般家庭に於いて女性がドライビングフォースになれないのです。よって決定権や論理的で対等な話し合いも出来ず、それをストレスとしてため込まざるを得ないという社会一般問題ではないかという気がします。
それでもバブルのころまでは奥様方はデパートの上層階でうまいものを食べながらほかの奥様と放談大会をしてストレス発散をしていましたが、近年は経済的理由でそれも出来ず、この2年はコロナで余計、自由が利かなくなっています。
セロトニンを増やすには健康的な食事をすることが勧められています。私はそれ以上にメリハリある生活を送るべきだと思っています。ジョギングや散歩、日光浴はとても良いとされますが、交友範囲を増やすとか、今までにない刺激や楽しみを見つけ出し、自分だけの幸せ時間を持つことを意識したらよいのではないかと思います。
このブログでずいぶん前、日本の音楽は短調の曲が多い、と申し上げたことがあります。暗い、哀愁があるそんな曲を日本人はあえて好むのです。普段聞く音楽から変えてみるのも一手かもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年12月23日の記事より転載させていただきました。